おにゆりの苑

俳句と俳画とエッセー

からおけ

2023-06-09 17:27:53 | Weblog
デイケアも二年半ともなると少々飽きてきた。
そんなある日、責任者のTさんが、午後のリクレーションの時間に私に「からおけ」を、指名して来た。「えっ、歌のうまい夫が、糠味噌が腐るからやめとけ」と言って歌わせてくれなかったから、歌えないんですよ」と言っても内心では二十年ぶりに歌ってみたかった。とっさに
高校生時代混声合唱ではメゾソプラノだったからと、思い「氷雨」を一緒に歌ってくれるならと言うと「その歌ならいつも親に歌わされていたから」と快く承知してくれた。孫のような彼と歌ってみると、心が高揚した。週一のデイケアも悪くはない。
 地区の介護士さんから、「更新の書類に署名を貰いに老健へ行くから」と電話があり「担当の方などに、約束が出来て四、五人で二、三十分会合になるよ」との事、ならばと私も考えた。泊まり込みの人の、二階を見たいから、介護士さんに頼んでくれるように言って見ようと。独り住居の私、重い人の居る二階を見て置いても悪くはないと思ったのである。現にエッセー教室で一緒のТ氏の母様もここにいて、亡くなられたと聞いた事がある。
 今私は毎週一回月曜日に朝刊を鞄に入れて杖をついて子供が学校に行くように通っている、自転車漕ぎから始まって、関節可動域運動、全身調整運動、歩行練習など器械体操、その他をして一人一槽のきれいなお風呂に入れてもらって昼食になる。
 午後は頭の体操のパンフレットが配られたり生け花をしたりその日のスケジュールで「からおけ」も二、三十分入ることがある。
 連れ合いを亡くすと近所にも遠慮をして歌を唄うような大きい声を出すようなことをシャットアウトしていた。音域が低くなりバスかアルトのような九十歳、携帯電話で練習出来ることを知った。亡くなった母の「長良川艶歌」の調子外れを笑っていた私が「奥飛騨慕情」とか「旅の終わり」がカラオケできるようになるであろうか。ちょっと楽しみになって来た。

      俳句  梅雨入りして午後のデイケア歌唄う


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