おにゆりの苑

俳句と俳画とエッセー

同窓会(その1)

2007-07-27 06:18:16 | Weblog

 層雲が山の中腹にたなびき、川面には霧が立ちこめて飛騨に来た感慨を新たにする。

 名駅で列車に乗る時から誰彼に出会って、下呂につくまでを、退屈せずに行けると思っていたのに、缶ビールを、一人ちびちび舐めているだけだった。

 それもその筈、 シャトルバスの中の三十年来の再会の顔は、記憶のそれとはほど遠く、男性の殆どが道で出会っても気付かぬ程の変わりようであった。

 自己紹介で始った宴会は、話に花が咲いて「僕はあんたがすぐ判ったよ」となじられたyさんはアイドルのミッキーマウスの顔が、下駄のように四角になっていらっしゃる。「軽井沢に二千坪の別荘持ってるから、来年はそこで開きましょう」と提案されたSさんの頭はぴかぴかの無毛地帯である。女性でも中学の教頭で頑張っているMさん、この出身高校の今の校長の奥さんだと言うTちゃん、時がたつ程に、風化していた昔の面影をそれぞれ彷彿とさせタイムカプセルが三十三年前にもどってしまった。

 お湯からあがってラウンジでショーが始まった頃にはもう皆十代の心であった。肩の張らない心地良さに来て良かったと思った。日頃の気負いが不思議に思えてきた。

 二人目にダンスを踊ったDさんが「お前、しっかり貫録だなあ。上手に踊るねー。下呂に遊びにこいよ。上から下まで面倒みるから」とのたもうた。気の若い私は、病院長の彼が老後の躰を検診してあげるよ。と言っているのだと気付くのに、笑ったままでちょっと間が合いた。

 翌朝早く一行は高山見物に出発したが、Dさんは皆も知っている一学年上の兄さんの葬式で不参加だった。幹事だったのであろう。そんなところにも、男性は、無事進行を見届けてなどと日頃のちょっとしたプロフェッショナルを、のぞかせるのであった。 1984年

 俳句 * 冷房もなきキャンパスに源氏聴く 

    * 水楼より遠き篝火夕涼み

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日覆い

2007-07-23 07:51:34 | Weblog

 毎年,日覆いがてら、家の南側の大きな一枚ガラス部分に朝顔をネット仕立てにしていたが、花もしぼむと、けっこう汚らしくて手入れが大変なので、今年は始めてゴーヤにしてみた。

 五月の初め頃掛け軸を、掛けたりはずしたりに使う細い竹の棒を手にして、緑色のネットを軒の釘に引っ掛けて張った。プランターに植えた三株だけの苗なのに、骨粉入りの土が良かったのかちょっとの間に、縦も横もネットいっぱいに広がりながら、蔓が伸びた。黄色い花が咲きゴーヤが幾つも生っている。

 それを眺めると去年、天白の農業試験場へ一人で瓢箪を見に地下鉄の赤池から炎天下を、歩いて行ったことを思い出す

 今年の梅雨は九州で猛烈に降り、先日は又新潟の柏崎方面で被害甚大な震度6もの地震があった。我が家では近親者の葬儀もあり、それやこれや晴天の霹靂ずくめであった。

 私はグリーンの植物の日除けの中から、そうした世間をじっと見ている。そうしたら、観てはいけないものを観てしまった。

 何と今までは庭に来て可愛いとばかり思っていた雀が、今年まだ一度も鳴き声を聴いてはいない蝉を痛ぶっているではないか。死んでいるのかとガラス越しに見ていると50センチくらいつうーと逃げると雀が追いかけて啄む。それの繰り返しである。すわ一大事と雀を追い払って、蝉を見に庭に下りると、もう蟻がたかりはじめていて自然界の摂理に茫然とする。

 正体みたり小雀よである。蝉は何匹羽化したのか、まともな一匹が網戸につかまっている。その側にゴーヤが、ぶらりぶらりとぶらさがっている。 

 俳句  * 苦瓜のネットの升目機の果つる 

     * 生垣に逃げ込む蜥蜴閃光す 

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最近最も腹立たしかったこと

2007-07-17 07:34:13 | Weblog

 最近異常な事件事故があまりに多いので、大抵なことには驚かないようになってしまった。

 それなのに、「ブルータス、お前もか」と怒り心頭に発したのは、コムスンの介護報酬不正請求事件である。 

 そもそもこのコムスンという会社は、その一生を介護の確立に努力された、榎本憲一氏が設立された会社で、コミュニテイ・メデカル・システム・ネットワークの略である。

 榎本氏が亡くなったあと、高齢者、要介護状態の老人が増えつづける時勢に、あとを継いだのがいけない。金権主義の亡者が年中無休の巡回型老人介護サービスを実現しようと、他社に先駆けて日本初の二十四時間フル稼働、三百六十五日体制のベンチャー系の福祉介護会社にした。

 品格が地に落ちた今の世の中、創立者の企業理念に賛同して業務を遂行する信念が、欠如して事は起きる。

 全国展開企業は、よほど緻密な管理をしないと、A地区では訪問介護が人気だけど、B地区は共同生活介護が好まれるというように一律には事が運ばない。

 架空時間や回数の水増し申請、無資格者が有資格者に名義借り、勤務実績のないヘルパーを申請書に記載して虚偽の指定申請をしたりして百八十七の内四十六箇所が、指定取り消しになった

 介護を受けている人や家族の困惑は並大抵ではない。

 七月十四日の中日新聞によると、政府は来年の通常国会に、介護サービス事業者の規制強化を盛り込んだ改正案を提出する方針を固め、十九日に具体策を検討する有識者会議を開催して法改正に反映させるとあった。

 豪華な家に住みぜいたくな専用ジェット機を飛ばしている不届きな、折口とかいう責任者の釈明が聴きたい。

 グループ内企業への譲渡や、廃止届けを出して処分を免れたりと、罪の意識が全く無い。

 やがては世話になるかもとシルバー世代の者達が、少ない年金の中から前人未踏というか前代未聞の介護保険料を幾度かのアップにも耐えて、支払っているのだから、自分達の存命をはかるだけの折り合いをつけるような後始末だけは絶対にして欲しくない。

俳句 * 黙々と鎌研ぎ母は草刈に 

   * 短夜やこむら返りに立ちて踏む

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落石ですって

2007-07-11 19:05:00 | Weblog

 

 「どこかへ行きたいわあ」と言ったら、すぐ娘から「湯の山予約しといたから」と電話がかかってきた。

 夕方着いて温泉につかると、貸切状態だったので恐縮したが、夕食になると他に3組の人がいた。御馳走を戴いてサウナで流した汗の何倍ものビールを、二人で飲んで安気に休んだ。

 娘の携帯には、婿から「今、仙台についた」とか「今、小樽」とか一人旅の様子がメールで入っていた。

 翌朝チェックアウトして御在所ロープウエイの駐車場に車を入れると、降りてきた観光バスの運転手が「上は霧で何にも見えないから、いかない方がいいよ」と教えてくれた。前年の箱根の駒ケ岳の苦い経験があるので、乗るのをやめて,奇岩の大石公園などを散策した。今夜は七夕でライブでもあるのか業者が朱の橋の掃除をしていた。

「初めて来た時はねー貴女がお腹にいて、つわりで気持ち悪くてうそ寒かったわ」とか「三重県は良い所がいっぱい有って、なばなの里とか、アウトレットばかり宣伝していて、こんなに良い温泉郷を置いてきぼりにしてたらいけないわねー」などと会話しながらカフェに入った。娘も「長島温泉、長島温泉、と温泉ブームも、からおけブームも、何でも流行り廃りがあるね。今はパソコンブームかな」と言い、ゆっくりした後、鈴鹿スカイラインを走ってくれた。

 道の辺のあじさいもこれ以上は無いよと美しく咲き、青紅葉も透けるように柔らかく他の緑と相まって山を覆っている。絶景ポイントで車を降りてみたが霧の海であった。

「こんなに高い所まで、大掛かりな落石防止の工事がしてあるけど、たいへんねー」「もう滋賀県になっちゃうから引き返そう」とお土産を買って帰ったが、今朝新聞に、鈴鹿スカイライン落石で通行止めと載っているのを見て「危なかったわねー」とメールをかわした。

 俳句 * 湯の山の寂れ薫風素通りす

    * みはるかす英虞の入り江や風薫る

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睡眠薬

2007-07-04 21:06:12 | Weblog

 

 最近、気付いた事であるが、高齢者は本当に大勢が睡眠薬を服用している。

 一度お医者にかかると必ずと言っていいほど処方してくれるようである。歳を重ねる次第に寝つきが悪かったり眠りが浅かったりするので、これは有難い時宜にかなっていると思うのだが、何年も飲んでいると果てこのだるさは何、睡眠薬が残っているのでは無かろうかと考える。

 改めてパソコンで睡眠薬とはと、検索してみると、あるわ、あるわ此処に記載されているだけで25種類もある。私の薬はと見ていくと23番目に一般名エチゾラム、代表的商品名デパス、備考クロチアゼバムより強い睡眠効果や筋弛緩効果も期待出来る、とある。

 クロチアゼバムは眠くなりにくくエチゾラムよりマイルドと書いてある。道理でリポビタン等のドリンクを飲む迄だるいのか。医者にこれと交換してもらおうとしたが、水曜日で夜は休診。次回行くまで飲まずに置くことにしよう。

 眠れなければ、本でも読めばいい。「ひとつの昭和精神史」伊藤益臣、ちょっとした縁故の人と紐といたら、大変なのに取り掛かったものである。衿を正して一冊は読んだ。

 俳句 * 合歓の花子供育てし頃の事

    * 検診車日照雨の向こう虹立てり

 

 

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