おにゆりの苑

俳句と俳画とエッセー

 車 窓 の 風 景 

2009-03-18 09:26:00 | Weblog

 右に連なる山の峰はアペニン山脈だと思う。後方に、そびえるのはアルプスであろう。

 カレンツァーノからローマへ295キロを移動するのに日曜日で高速道路が混んでなくて130キロのスピードで走れると添乗員が言う。

 道路脇の貧しげな小さい石の家の屋根はさまざまな色をしていて、どの家にも必ず煙突がある。ストーブ用かと思ったら、物知りな方が、空気清浄機だといわれる。ジプシーの集落らしい。

 其処を過ぎるとトスカーナの田園風景が広がる。若草色の広大な畑には農耕をしている人の姿は見えずビニールハウスもない。絵に描いたように糸杉が僅かばかり、行儀良く並んでいて丘陵らしいのに牧畜もされていないようである。

 トスカーナならば、葡萄やオレンジ畑があってもよさそうなものなのに。そうこうしている内に頂上に寺院がみえた。あるいはサンピエトロ寺院の傘下の寺かも知れない。

 そこに射す太陽の光を眺めていると遠い異郷に居る旅愁が胸をかすめ、それを振り払うように、俳句を「春浅し」などとひねっている内に5日目と言う旅疲れからか眠ってしまった。

 とかくツアー旅行と言うとコンダクターに任せきりで、現在地の認識がないままである。日本では観られない、ちまちましていないあの風景を自分の目に焼き付けただけで、トイレ休憩の土産物売り場へと、皆に従って一斉に入った。

 俳句 道野辺の草は見慣れし犬ふぐり

 

 

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