僕のほそ道   ~ のん日記 ~

  
これと言ったテーマはなく、話はバラバラです。 つい昔の思い出話が多くなるのは年のせい? 

「テロリストのパラソル」

2009年11月27日 | 読書

藤原伊織の「テロリストのパラソル」を読み終えた。

文庫本で380ページほどある長編だが、ほぼノンストップで読んだというのは、僕にとって最近では珍しい出来事である。耳鳴りが発症して以来、めっきり読書量が減ったが、それでも退職して時間ができたら思いっきり本が読めるだろう…というお楽しみな期待があった。

しかしそれも、何やかやと用に追われてこれまで果たせていなかった。その意味でも、こんなぐあいに、久しぶりに小説に没頭できたことは、とてもうれしい。大げさかもしれないが、退職後の人生の喜びを、改めて発見した思いですらある。

僕が20歳だった1969年のことを、先日のブログで書いたとき、yukari さんが、この小説を再読した、とコメントで書いてこられた。登場人物が団塊の世代で、もう、ずいぶん前に話題になった小説だったけれど、僕はまだ、それを読んでいなかった。「これを機にぜひ読みたい」と思った。

「テロリストのパラソル」は、1995年に江戸川乱歩賞を受賞し、翌年に直木賞も受賞した作品である。

史上初の乱歩賞・直木賞のダブル受賞作、という極めて高い話題性に富んだ小説にもかかわらず、自分が読んでいなかったのは、なんでだろう…? 

思い返してみると、この頃は、仕事が広報担当で、比較的充実していた職場生活を送っていた。私生活でも、マラソンや海外旅行に熱を上げていた。さらに映画(といってもテレビのWOWOWですけど)にもハマっていた。そんなことで、読書のほうは、おろそかになっていたようである。当時話題になった本も、ほとんど読んでいない。

そこで一昨日、遅まきながら「テロリストのパラソル」の文庫本を買った。

夜、眠る前に読み始めたが、うっかりいつもの癖で睡眠薬を飲んでしまったので、すぐに眠ってしまった。

昨日の朝、4時に目が覚めたので、枕元でこの本を開いた。
そこからである。ず~っと、ず~っと、読み続けた。
途中で「続きはまた明日」としおりをはさむことができないのだ。
それほどに引き込まれる小説であった。

あいだにモミィをコスパのスイミング教室に連れて行ったりと、何度か中断はしたけれど、午後3時ごろに最後まで読み終えた。

こんなことは、仕事を持っていると、出来ないことである。その気になれば、とことん好きなことができるという現在の環境を、いまさらながら有難く思った。なんだか、学生時代に戻ったような軽やかな気分すら芽生えた。

小説のストーリーは、ネットでいっぱい紹介されているので、ここでは触れない。(これだけ複雑なストーリーを紹介できるような文章力は僕にはない)。

さて、主人公が「プロの酔っ払い」であることは、昨日のブログで買いた。
朝からウイスキーを飲むのが日課の男性である。

それはともかくとして…
とにかく、文章がいい。骨太というか、カチッとしている。
現代小説の文章で、これほど魅了されたのは、村上春樹以来である。
作風は違うけれども、登場人物の描かれ方が、ちょっと似ていなくもない。
特に主人公に絡む21歳の勝気な女性は、言動が多少過激ではあるが、いかにもハルキさんの小説に出てきそうなキャラクターである。

でもまあ、何よりも、小説としての構成が、ものすごく精緻である。
ボンヤリ読んでいたら、また読み返さなければならないほどで、スキがない。これがまた大いなる魅力である。(ボケ防止にぴったり??)。

ミステリーなのか、ハードボイルドなのか…。カテゴリーは、特定しにくいけれども、この小説は、面白さにおいて、文句のつけようがない。

特に団塊の世代の僕らにとっては、宝物のような小説である。
発刊されてから14年の歳月がたつというのに、これまでこの小説を読まなかったことが、なんとも「もったいないことをした」という思いに駆られるほどである。読むきっかけを与えてくださったお嬢様には、ほんと、感謝感激雨アラレ、ですわ。

ところで、この物語も、やはり全共闘世代の中での恋が、話の中核になっている。先日のブログで書いたテレビドラマ「1969年のオヤジと僕」も、 同じような闘う学生たちの男女間の恋が描かれていた。大学闘争の中で、あれだけ男の学生たちが権力に対して熾烈な闘いを続けられたのも、「同志」である女性たちの存在があったからであろう。権力を弾劾しながら、女の子と肩を組み、手をつなぐ、ということが、当時、学生運動に参加した男たちの喜びでもあったのだろう。まあ、そんな見方は不純かも知れないけれども、そういうことって、たぶん、あると思う。

それともうひとつ。知らなかったけれど…
「テロリストのパラソル」は、テレビでドラマ化されていたのだった。
ネットを見て、初めて知った。このころはドラマも見ていなかったなぁ。

主人公は、ショーケンこと萩原健一だった。
うちの妻は「前略おふくろさま」以来の、ショーケンの大ファンである。

昨日の夕方、そのことを妻に伝えると、
「う~っ。見たかったわ~」と、地団太を踏んでいた。
でも、まあ、放映されたのは、10年以上も昔みたいだけどね。
DVDは出ていないのだろうか…?

著者の藤原伊織は、大阪府の出身。
2年前、59歳で他界している。




 

 

 

 

 

 

 

コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする