ベラルーシの部屋ブログ

東欧の国ベラルーシでボランティアを行っているチロ基金の活動や、現地からの情報を日本語で紹介しています

2022年8月9日。ウクライナ侵攻から167日目

2022-08-09 | ベラルーシ旅行・長期滞在・留学注意情報
 2022年8月9日。
 長崎に原爆が投下されてから77年目。
 あのベラルーシ大統領選挙からは今日で2年目です。

 ベラルーシの野党リーダー、チハノフスカヤ氏は「新ベラルーシ」会議の2日目に当たる今日、暫定内閣を組閣しました。外交担当、国防担当など6人のメンバー(大臣に相当)を指名し、今日ビリニュスで発足しました。
 非常に簡単な内閣で、国際的に認められているわけではありませんが、大統領選挙から2年後に、ベラルーシにもうう一つの政府が誕生したと言えます。つまりベラルーシ政府が二つ存在しているということです。
 
 
 現政権の大統領、ルカシェンコ氏も今日、担当大臣や国営企業の代表など約50名を集めた会議を行いました。
 大統領は演説で、貧しい人もいれば、裕福な人もおり、特にベラルーシでは両者はお互いに不機嫌になり、お互いを羨ましがり始め、争いが始まったと述べました。その結果、大統領が必要とする結果を政府当局(や国営企業)が出さなければ、ベラルーシ経済はすぐに火の車になり、状況はウクライナよりも悪化すると発言しました。
 それは「非常に深刻な状況であり、食べ物や飲み水があり、着る服があり、全てを与えられているが、気を緩めると一瞬で崩れ去る危険性がある。経済が一番の問題であり、経済が回っていさえすれば、すべてがうまくだろう。」
と、ともかくベラルーシの抱える問題で最大のものは経済であると強調しました。


 ウクライナ大統領は、西側諸国がロシア人を受け入れないことを提案しました。ワシントン・ポストに対し、現在の対ロ制裁は弱過ぎると主張。ロシア人の入国を禁止し「考え方を変えるまで自分たちだけの世界に住まわせておけ」と述べました。
 このような発言はしないほうがいいです。ウクライナは民主国家を目指しているのでしょ? このような排他的な発言は民主主義的ではありませんし、人種差別ですよ。そもそもロシアの現政権に反対しているロシア人が多く出国しているのに・・・と思ったら、これは観光ビザに制限しての発言だったようですね。
 ウクライナ大統領の発言を受けてか、フィンランド政府は先週、ロシア人への観光ビザを制限する可能性があると表明しました。エストニア首相も9日、ツイッターに「ロシアからの観光はやめる時だ。欧州訪問は人権ではない。ロシア人に与える栄誉なのだ」と書き込みました。
 ちなみに前述のベラルーシ暫定内閣は、ベラルーシ人に対するシェンゲンビザ禁止に反対する表明を出しました。
 ラトビア国会がベラルーシとの国境閉鎖を呼びかけたことに関しての表明です。ベラルーシの暫定内閣がEU圏内になるのにシェンゲンビザが出なくなったら、困りますからね。



 プーチン大統領の支持者として知られ、ロシア国籍も持つアメリカの俳優スティーブン・セガールが今日、先月29日に爆撃されたウクライナ東部ドネツク州の新ロシア派支配地域にある捕虜収容所を訪れ、ウクライナ軍による攻撃だと批判していることがロシア国営テレビニュースで報道されています。
 捕虜50人以上が死亡し、多数の負傷者が出ている爆撃を巡っては、ウクライナとロシアが互いの攻撃を主張している渦中の捕虜収容所です。
 ロシアはウクライナ軍がアメリカが提供した高速機動砲兵ロケットシステム、ハイマースを使って収容所を攻撃したと主張しており、人道分野での対米関係を担うロシア外務省の特使に2018年から任命されているセガールは、
「間違いなくロケットによる攻撃のようだ。燃焼などの詳細を見れば、これが爆弾によるものではないと分かる。ここはハイマースが攻撃した場所で、50人が死亡し、70人が負傷した。」
と語っています。セガールが話す英語はロシア語に吹き替えられているが、「ウクライナのゼレンスキー大統領は、収容されているナチスの口を封じるため、ハイマースを使用した」とも述べていると米メディアは伝えている。

 ウクライナ側(アメリカも含む)は、収容所にはアゾフ連隊の兵士も収容されており、ロシアが捕虜への拷問や殺害などの証拠を隠蔽するために攻撃したと主張しています。
 しかし、ロシアは、ウクライナ軍が、収容所内でウクライナ軍にとって都合の悪いことを捕虜がしゃべってしまわないように、この収容所を攻撃し、捕虜たちを口封じしたと主張しています。
 セガールもロシア側の主張を支持しています。


 ウクライナ大統領は今日の夜の演説で、
「ウクライナ、そして全ての自由な欧州諸国に対する戦争はクリミアで始まった。そして、クリミアの解放とともに終わらねばならない。クリミアはウクライナのものであり、我々は決して諦めない。」
と述べました。また、
「我が国にはクリミアで民族の文化や願いが形成された人たちが住む。従って、クリミア半島の解放に取り組むとき、我々は領土の一体性を回復し、ウクライナの先住民の故郷を取り戻すために戦っているのだ。」
とクリミアの重要性を強調しました。


 このようにウクライナ大統領が発言したからなのか分かりませんが、今日、クリミアにあるロシアの軍用飛行場付近で複数の爆発が起こりました。
 ウクライナ側から攻撃についての言及はありません。動画が出回っています。クリミアを脱出しようとする観光客たちの動画も出てきました。
 ロシア側当局は、
 「これまでのところ確認できているのは、ノボフェドロフカ付近で複数回の爆発があったという事実だけだ。」
とし、爆発の原因はまだ特定できていないとしています。
 ノボフェドロフカ村近くにあるサキ地区の軍用飛行場は、ロシア国防省の航空機の基地として使用されているそうです。
 当然この飛行場を狙って攻撃した可能性が高いので、攻撃するならウクライナ軍であるはずですが、ウクライナ側は今のところ攻撃したと発表していません。
 ロシア国防省の話として、航空機用の弾薬が爆発し、1人が死亡、子どもを含む5人が負傷したとロシアのメディアが伝えています。


 ロイター通信などによると、ロシア軍部隊は今日の夜、ザポリージャ原発から約20キロの地点にあるマルハネツイにロケット弾約80発を撃ち込んだと報道しました。複数の学校や寮、文化センターなど20棟が損傷したそうです。

 ザポリージャ原発について、ウクライナ国営原子力企業エネルゴアトムのコティン総裁は今日、ロシア軍がウクライナ国内への送電網を遮断し、クリミア半島への送電を計画していると述べました。
 5、6日の砲撃もコティン氏は送電網を遮断する計画の一環としてロシア軍が実行したとの見方を示しました。
 これでクリミアへの電力供給も確保できるとロシア政府が考えている、というわけです。クリミア半島は電力不足(と水不足)が問題なので、これを解決するために、ザポリージャ原発を軍が占拠したという見方ができます。ウクライナ国内にある5箇所の原発のうち、どうしてザポリージャ原発ばかりにこだわるのか、その理由はクリミアに近いからということなんですね。


 ロシア国防省は今日、ウクライナ軍側でロシア軍と戦う外国人は今月5日時点で計2192人に上り、日本からはアジアで最多の9人となっているとする独自の集計を公表しました。7月8日時点では日本人は1人だったそうです。
 さらに外国人戦闘員について、これまでウクライナ入りした7200人超のうち2682人を「殺害した」と主張しています。
 あのですね、ウクライナ軍について戦っている外国人傭兵を捕まえて捕虜として確保した場合の数はロシア軍は正確な発表ができると思うんですよ。でも、ウクライナ軍の側で戦っている外国人傭兵の数や国籍などの詳細は、ロシア軍は正確に把握できないのでは? ウクライナ側は公表していません。
 それともウクライナ側が作成した外国人傭兵リストをロシア側がハッキングしたのでしょうか。
 ともかく日本人が9人に増えたとか、信じないほうがいいですよ。
 
 
 ルガンスク人民共和国のトップ、パセチニク氏は今日、占領したルハンシク州のポパスナ市を再建しない可能性があると明らかにしました。
 市内の建物の96%が被害を受けたそうで、
「あまり意味がないので、ポパスナ市を再建しないかもしれない。街は、ほぼ完全に破壊されている。」
と述べました。
 苦労して占領しても町を再建しないんですね。ゴーストタウンを手に入れるための戦争なのでしょうか。