電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

平岩弓技『魚の棲む城』を読む

2006年07月17日 11時48分40秒 | -平岩弓技
出張の空き時間に読んだ本。田沼意次は「いい人」だった、という想定の物語は少ないと思っていましたが、意外にあるのかもしれません。池波正太郎の『剣客商売』もそうでしたし、新潮文庫版の平岩弓技著『魚の棲む城』は、ずばりデキる男・田沼意次を描いています。

田沼龍助(意次)と札差・板倉屋龍介、廻船問屋・湊屋のお北は互いに本郷御弓町の幼なじみでした。龍助と龍介は身分をこえた親友どうし。田沼龍助は生来言語障碍のある第九代将軍家重の信頼厚い御側御用取次役ですが、家のため商家に売られたも同然のお北のことが忘れられず、幽閉された茶室に忍び入る綱渡り生活を続けています。
米将軍と呼ばれた吉宗が逝去し後見が解かれて実質的にも家重の代になると、田沼意次の存在はますます大きくなり、やがて大名に出世しますが、御三家・御三卿は嫉みと軽侮を隠しません。お北は上方で中風で倒れた夫の介護に明け暮れる生活を強いられますが、実は意次の子である新太郎の成長だけが楽しみです。
やがて病弱な家重が亡くなり第十代将軍・家治の代になると、田沼意次は老中となり幕府の経済政策を変えていきます。米中心の経済から貨幣政策を重視した経済への転換です。豪腕の廻船問屋・魚屋十兵衛の陰助によりお北を側女とすることができ、相良に城を築き街を作り、ひそかに外国貿易を夢見ますが、将軍家斉の代となり政敵松平定信に追われ、夢はついえます。

「田沼の賄賂政治(*1)」と「松平定信の寛政の改革(*2)」とを対比する形で、中学の日本史では習いました。社会の自然な流れを改革という名で棹さそうとするのは、どだい無理があるということでしょうが、実情はどうだったのでしょう。小説は歴史学とは異なり、作家がどんなドラマを仕組むかがポイントでしょうが、興味のあるところではあります。

(*1):Wikipedia - 田沼意次
(*2):Wikipedia - 松平定信
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2 コメント

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白河の (きし)
2009-01-14 20:57:37
…ですね~。
確かに教科書に載っていました。変なことだけ覚えているものです。
トラックバック、ありがとうございました。
改めて拝見すると、読みどころが全然違っていて笑えるほどでしたので、ワタクシも珍しくTBさせていただきます。
それにしても、軽いですね~(笑)
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きし さん、 (narkejp)
2009-01-14 21:12:40
コメント、トラックバックをありがとうございます。この記事の文体がやけに軽いのは、おそらく「内野病」で発熱していたからでわ(^o^)/
当方は、エアコンのきいた宿泊先でのんびりと読んでおりましたので、比較的クールに読めていたようです。田沼意次にゆかりの「わいろ最中」を発売するなど、静岡県の旧相良町もなかなかやりますね(^o^)/
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