電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

池上彰『高校生からわかる原子力』を読む

2018年03月07日 06時05分19秒 | -ノンフィクション
私が原子力について書かれた本を読んだ最初の記憶は、たぶん小学校高学年の頃、母方の実家で接した『少年朝日年鑑』昭和29年版でしょう。ビキニ環礁でのアメリカの水爆実験と第五福竜丸の被曝が大きな社会問題となった年の年鑑で、モノクロの写真と報道記事とともに、原爆と水爆の違いやアイソトープなどの解説が子供にもわかるように平易に書かれていました。この時には、父親がヒロシマで救援活動に従事し入市被爆したことなども承知しておりましたので、原子力の恐ろしさ、人間の手に負えないほどのエネルギーと死の灰の危険性を知りました。その後、中学〜高校と科学少年の時代を過ごしましたが、原子核エネルギーを解説してくれた物理の先生の影響も受けることなく、むしろ放射性廃棄物の始末もできない原子力エネルギーというのは不完全な技術なのだろうと感じて、疑いの目で見ていました。ただし、技術的な知識はあったものの、社会的・歴史的な背景についてはまるで理解がいたらず、大人になってようやく、池上彰著『高校生からわかる原子力』を読んでいるところです。

本書の構成は次のとおりです。

第1講 爆弾に使われた原子力
第2講 世界で最初の原爆投下
第3講 核開発競争始まる
第4講 原子力の平和利用へ
第5講 日本は原発を導入した
第6講 日本も核保有を検討した
第7講 拡散する核の脅威
第8講 原発事故と反対運動
第9講 悪戦苦闘の核燃料サイクル
第10講 原発に未来はあるか?

ここで、当方にとって興味深いのは、第4講と第5講でしょうか。第五福竜丸事件を経て、反米的な空気の高まりを抑えたい米国側の意思を受けて、改進党の中曽根康弘議員が莫大な原子力研究予算を国会で認めさせた、ということのようです。日本学術会議が調査機関の設置を勧告提案していた時期に、巨額予算を付けて、いわば札束で学者たちをひっぱたいたみたいなものでしょう。まさしく「見切り発車」のような事態で、放射性廃棄物問題はすでにここから始まっていたというべきでしょう。



以後の歴史の動きは記憶に残るものが多くあり、なんだかほろ苦いものがあります。


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