電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

カール・シュターミッツ「ヴィオラ協奏曲ニ長調」を聴く

2014年06月23日 06時02分23秒 | -協奏曲
通勤の音楽に、ヴィオラ協奏曲を集めたCDを聞いています。カール・フィリップ・シュターミッツにホフマイスターの二曲を収めた、まことに地味~なCDです。でも、繰り返し聴くほどに、味わいのある音楽だと感じます。本日はその中から、カール・シュターミッツのヴィオラ協奏曲ニ長調を取り上げます。CDは、ナクソスの 8.572162 です。

添付のリーフレット等によれば、カール・シュターミッツ(1745~1801)は18世紀後半に生きたヴァイオリン奏者・ヴィオラ奏者・作曲家で、父親などマンハイム楽派の先人たちから多くを吸収した恐るべきヴィルトゥオーゾで、主にパリで活躍し、ハイドンやモーツァルトと同時代を生きた人のようです。彼のヴィオラ協奏曲ニ長調は、ヴィルトゥオーゾが活躍した19世紀の音楽でしばしばお目にかかるような水際立った作品で、豊かな色彩的なセンスと入り組んだ記譜法に結びついた傑出した作品、とあります。

私の小規模なライブラリには、残念ながらこの人のCDはほとんどないのですが、山形弦楽四重奏団の定期演奏会(*1)で「クラリネット四重奏曲」を聴いたり、先年のファゴットとストリングスによる「室内楽の夕べ」で「ファゴット四重奏曲」の生演奏に接する(*2)などによってその魅力を知り、とくにヴィオラの使い方がうまいことに強い印象を受けました。そこで、シュターミッツのヴィオラ協奏曲ニ長調です。楽器編成は、独奏ヴィオラ、クラリネット(2)、オーボエ(2)、第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラも2つのパートに分かれ、チェロとコントラバス、という具合です。

第1楽章:アレグロ。オペラの序曲のように、期待感を盛り上げるような序奏を持つ始まりです。そして、ヴィオラが登場するところは、まるで豊かなアルトの声を持つ貴婦人の登場のよう。でも、一番長い楽章の中で、その後の展開を聴いていると、貴婦人というよりはやっぱり能弁なヴィルトゥオーゾを想像してしまいます。
第2楽章:アンダンテ・モデラート。しみじみとした情感を持つ、親密な始まりです。前の楽章がパーティの始まりだとしたら、この楽章は親しい集まりでしょうか。ヴィオラが低い音で暗めの音色を聴かせながら、バックの弦楽が対照的な高音で鋭い対比を示したりします。
第3楽章:ロンド、アレグレット。独奏ヴィオラがゆらゆらと始まると、弦楽パートではヴァイオリンだけが簡素に応えます。やがて、終楽章らしく独奏ヴィオラが存分に活躍し、オーケストラがこれに華やかさを加える、といった展開で、盛り上がって終わります。

ネットで検索しても、この曲に関する記事はあまり多くなく、CDの販売に関するものを除けば、オーディションの告知や演奏記録などが多いようです。ポピュラーとは言い難いヴィオラの、一般に知られているとは言い難いシュターミッツの協奏曲。晩年には錬金術に凝るなどあまりかんばしくない行状の音楽家だったようですが、音色に対する感受性を想像させる、穏やかな音楽と言ってよろしかろうと思います。

演奏は、ヴィクトリア・チャン(Vla)、マーカンド・ザーカー指揮のボルチモア室内管弦楽団。2009年5月に、米国メリーランド州 Towson の Goucher College, Krausuhaar Auditorium で収録されたデジタル録音です。

(*1):山形弦楽四重奏団第31回定期演奏会を聴く~「電網郊外散歩道」2009年4月
(*2):ファゴット&ストリングス「室内楽の夕べ」を聴く~「電網郊外散歩道」2013年4月


コメント    この記事についてブログを書く
« リービッヒの研究・教育とギ... | トップ | 民放ラジオの面白さとCMのつ... »

コメントを投稿

-協奏曲」カテゴリの最新記事