電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

宮城谷昌光『呉越春秋〜湖底の城(八)』を読む

2018年03月02日 06時04分16秒 | -宮城谷昌光
講談社刊の単行本で、宮城谷昌光著『呉越春秋・湖底の城』第八巻を読みました。2017年9月刊の第1刷で、現時点での最新刊です。

越王・勾践が立てた大戦略を、若い呉王の夫差を支える宰相は洞察することができませんが、伍子胥は見抜きます。呉王が越を後略すべく軍を発するとき、越は五湖に船を浮かべ、呉の首都を陥落させる計画であろう、と。越に対抗し、軍船を急造した呉は、兵車を製造していると虚報を流します。こうした情報戦は呉の有利に運び、湖上の決戦は呉が大勝、越王は逃げて会稽山にこもります。越の都を急襲した伍子胥を迎えたのは、ただ一人で喪服をまとった越王の正室でした。

越王の正夫人を焼き殺そうという企ては、呉王とその臣の劣悪さを示していますが、逆にそれを救った西施の勇気と自己犠牲も浮かび上がらせます。越王勾践は降伏し、忍従生活を強いられますが、この期間の范蠡と諸稽郢の活動は越の希望をつなぎます。行く先は、楚です。



越王は才をたのみ、それに溺れて伍子胥にしてやられます。情報戦は呉の勝ち。でも、越王勾践は苦難に学ぶでしょうし、後継者の質と世代は明らかに越が優っています。逆転は時間の問題のように思えます。それには、続刊をまたなければなりませんが、たぶん今夏以降になるでしょうか。待ち遠しいことです。

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