電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

高橋義夫『風魔山岳党』を読む

2012年09月04日 06時04分30秒 | 読書
文藝春秋社から1997年に刊行された単行本で、高橋義夫著『風魔山岳党』を読みました。忍者や行者を主として描くもので、伝奇小説といってよいのでしょうか。時代としては、秀吉の小田原攻めで北条氏が滅んだ頃で、北条に仕えていた若い忍者の風祭小次郎は、故郷・風摩の庄を焼き討ちにした者たちを追いながら、羽州山形に落ち延びます。

この時代の山形は、最上義光(よしあき)の時代。かわいい駒姫を秀次の側室に差し出しながら、到着してすぐに秀次とともに殺されてしまい、最上義光は豊富秀吉を恨み、徳川家康に近づきます。ところが、越後の上杉は会津に移ることとなり、直江兼続が米沢に入ります。したがって、山形を取り巻く舞台は、会津と米沢の上杉・直江、仙台の伊達に挟まれ、乱世の余韻さめやらぬ頃で、「東の関ヶ原」と知る人ぞ知る「長谷堂合戦」の前哨戦、畑谷楯の攻防までとなります。

誰が味方で誰が敵なのか、入り乱れる複雑な人間模様が、ほどよくお色気も交えながら展開されます。土着信仰の担い手として、修験道の行者集団を絡ませたあたりは、作者が西川町岩根沢の宿坊集落に居住したときの経験を生かしているのでしょうか。なんとなく、風魔の忍者を主人公とするところから、某有名作家の小説を思い出しながら、でもこちらの方がずっと渋い味だなと、ご当地もの時代・伝奇小説を楽しみました。


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