電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

諸田玲子『あくじゃれ~瓢六捕物帖』を読む

2009年06月12日 05時36分19秒 | 読書
『お鳥見女房』シリーズ四作を読んだのがきっかけとなりまして、読んでみた『末世炎上』も面白かったので、諸田玲子さんの別の作品を探してみました。たまたま手にしたのがこれ。文春文庫の『あくじゃれ~瓢六捕物帖』です。「あくじゃれ」とひらがなで書くと、なんとも意味不明ですが、「悪洒落」と書けば、なるほど、洒落者の小悪党というイメージが浮かびます。

「地獄の目利き」「ギヤマンの花」「鬼の目」「虫の声」「紅絹の蹴出し」「さらば地獄」と六つの章からなっており、真面目一方で堅物で、世渡りの下手な定廻り同心・篠崎弥左衛門が、切れ者与力・菅野(すがの)一之助の命によって、牢に入っている小悪党の瓢六と組み、様々な事件を解決するお話です。

「地獄の目利き」「ギヤマンの花」の章あたりでは、瓢六の小悪党ぶりが小憎らしいほどですが、ハシリドコロの毒を扱った「鬼の目」の章では、弥左衛門が滑稽な役回りを演じ、その対照的な描き方に、思わず才媛の習性(*)を感じてしまいます(^o^)/
しかし、娑婆と獄中を出入りする間に、どうも事情が変わってしまい、本当に命を失いそうになる「虫の声」あたりでは、当方も思わず瓢六を応援してしまいますので、作者の術中にはまったと言うべきでしょう(^o^)/
女性の和装にはとんとうといもので、「紅絹の蹴出し」と言われても、ちんぷんかんぷんなのですが、要するに和風下着の話なのですね。なるほど、それなら納得です。
「さらば地獄」の章では、お袖さんの気の強さが光りますし、最後に弥左衛門と八重さんの可能性を引っ張るところなど、話がちゃんと続くように伏線を張っているようです。ストーリーを説明してしまうと、意外性が失われそうですので、この程度でおさめておきましょう。なかなか面白い、ちょいとひねりのきいた時代小説です。

(*):才媛は、どうもこういう想定がお好きのようです。真面目で堅物よりも、才気走ったいい男の小悪党の方が魅力的に映るのでしょう。でも実際は、「昔はワルだったけれど私には優しい、才気走ったいい男」だと思っていたのに、なにかのきっかけで激しいDVにおちいる、という例も少なくないようで。人格はふつう積み重なるものであって、そうそう大きく変わったりはしないものだと思いますね~。

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