電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山形交響楽団第269回定期演奏会でモーツァルト、シューマンを聴く

2018年05月21日 06時01分16秒 | -オーケストラ
朝にはカッコウが啼き、いかにも初夏という日差しがまぶしい日曜の午後、山形交響楽団第269回定期演奏会にでかけました。プログラムは、

  1. モーツァルト/交響曲 イ短調「オーデンセ」K.Anh.220/16a
  2. モーツァルト/クラリネット協奏曲 イ長調 K.622 ダニエル・オッテンザマー(Cl)
  3. シューマン/交響曲 第3番 変ホ長調「ライン」作品97
     指揮:飯森範親、演奏:山形交響楽団

というものです。




開演前のロビー・コンサートは、モーツァルトのオーボエ四重奏曲K.370より、第1・第3楽章を、柴田祐太(Ob)、中島光之(Vn)、田中知子(Vla)、渡邊研多郎(Vc)の演奏で。いい曲ですので、もう一度、文翔館あたりでじっくり全曲を聴きたいところです。





プレトークでは、飯森さんと西濱事務局長の他にもう一人、女性がステージに立ちました。おや、通訳の人かなと思いましたら実は違っていまして、協賛していただいている(株)ジョインセレモニーの方でした。山響にいろいろな企業が協賛していただけるのはたいへんありがたい。中高生を演奏会に招待してくれている山形食品さんも、地道な活動ですが、山形の音楽文化への貢献は大きなものがあると思います。



さて、1曲めはモーツァルト作曲かどうか疑問もあるという、交響曲イ短調「オーデンセ」です。楽器編成と配置は、左から第1ヴァイオリン(6)、チェロ(3)、ヴィオラ(4)、第2ヴァイオリン(6)、左奥にコントラバス(2)、正面奥にホルン(2)、オーボエ(2)、ファゴット(2)というもので、だいぶ縮小した編成となっています。ホルンはナチュラルタイプ。ここで演奏される音楽も、「モーツァルトの作品? そうみたいでもあるし、ちょっと違うようでもあるし…」というものです。めったに聴けない曲を聴いて、ちょいと得した気分(^o^)/

2曲めは、間違いなくモーツァルトの作品で、晩年の傑作の一つ「クラリネット協奏曲」イ長調K.622です。楽器編成は弦楽が 6-6-3-4-2 で、これにナチュラルタイプの Hrn(2)、Fl(2)、Fg(2)が加わります。登場したソリストのダニエル・オッテンザマーさんはウィーン・フィルの首席クラリネット奏者で、黒いジャケットに黒いズボン、でも中は黒いTシャツ? 31歳、スラリとした長身の演奏家です。
演奏は、クラリネットの弱い高音と強い低音を対比させるなど、安定した弱音のコントロールが見事な演奏です。ごく弱い音を効果的に生かす独奏者に寄り添う山響の演奏も、実に立派なものでした。
オッテンザマーさんのアンコール、どこかで聞いたことのあるフレーズが出てきましたが、曲目は不明。

ここで15分の休憩です。

プログラム後半は、シューマンの交響曲第3番「ライン」です。
楽器編成は、8-7-5-5-3 の弦楽セクションに、Fl(2)、Ob(2)、Cl(2)、Fg(2)という木管セクション、そしてHrn(5)、Tp(2)、Tb(3:うち1はBass-Tb)、そしてTimp.というもの。目に付くのはバルブ付きの5本のホルンと、バロックタイプではない、見慣れた現代のティンパニです。
現代楽器によるシューマン、輝かしい交響曲「ライン」。いいなあ、この幸福なシューマン。5本のホルンが、そしてトロンボーンがホールに響き渡るのは、実に壮麗、壮観。晴れやかな活力に、第4楽章の重々しさもいい味です。通勤の音楽でも、飯森+山響のこの曲のCDにひたっておりましたが、実にいい曲、いい演奏ですね〜。

終演後は、山響のヤンネ舘野さんのCDを購入してきました。"Janne Plays Sibelius" というタイトルの、Martti Rautio(Pf) さんとの、ヴァイオリンとピアノの二重奏です。(ZIM-1801)




ところで、今回もモーツァルトではホルンなどでピリオド楽器で演奏しているのに、シューマンの交響曲第3番「ライン」だけはなぜ現代楽器なのか?

この疑問に対する答は、飯森範親指揮山形交響楽団の同曲の録音(CD:OVCX-00067)に添付されたリーフレットに、飯森さん自身が書いていました。シューマンの交響曲が作曲された年代は、1841年に交響曲第1番「春」と後に第4番となるニ短調交響曲、1846年に第2番、最後が1850年の第3番「ライン」という順番のようですが、この期間は、「管楽器の機能が飛躍的に改良され始めた時期と重」なり、第4番、第1番、第2番は「バルブの付いていない金管楽器を想定し作曲されたことがスコアから推測することができ」るが、「3番に関しては既に近代の楽器に近い形になった物を試そうと思ったのではないかと想像できる箇所がある」ために、他の曲ではピリオド楽器の金管とティンパニを用いるけれど、奏法はピリオド奏法を駆使しつつ、「第3番では現在の仕様のそれらの楽器を用いての演奏」としているとのことです。

楽譜上の専門的なことは、当方には見当もつきませんが、曲想にあっているかどうかを考えれば、現代楽器の音色の華やかさ、輝かしさは、この曲にふさわしいものと感じます。



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2 コメント

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ライン! (sankichi1689)
2018-05-22 18:50:33
narkejpさん、こんばんは
山響さんの演奏会ご盛会で何よりです。「ライン」は解放感溢れるホントいい曲ですよね。山響さんのホルンの使用についても興味深く拝読させていただきました。なるほど!。北海道でも札響が秋に「ライン」を演奏するので楽しみです。
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sankichi1689 さん、 (narkejp)
2018-05-22 20:39:09
コメントありがとうございます。山響第269回定期演奏会も、たいへん楽しみました。シューマンの「ライン」はほんとにいい曲ですね〜! 5本のホルンと3本のトロンボーンの吹鳴は実に壮麗壮観、オーケストラ音楽の醍醐味の一つです。この秋には札幌でも「ライン」が鳴り響き、皆さんが大喜びをすることでしょうね。
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