電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

国民読書年とは言うけれど

2010年06月04日 06時04分10秒 | 読書
今年は国民読書年だそうです。思い立って書店にいけば、たしかに書棚にあふれるほど本は並んでいますが、では昔おもしろく読んだ本をもう一度読んでみたいと思ったとき、その本を新たに入手できるのでしょうか。

たとえば、アレクサンドル・デュマの『モンテ・クリスト伯』はどうでしょう。子ども時代はもちろん、大人になってからでも、この長大な物語をわくわくどきどき、たいへん面白く、何度も読み返しています(*)。誰かに「なにか面白い本はありませんか」と尋ねられたら、まず真っ先に推薦する本の一つです。

試しに、山形県立図書館のホームページで蔵書検索をしてみました。その結果、1927年10月刊という古~い「世界文學全集」や子ども向けの縮約版、あるいは訳語が古めかしい岩波文庫くらいしか見当たらず、しかも岩波文庫は全5巻中後半の3冊しか登録されていない、というお寒い状態です。

さらに県内のいくつかの公立図書館で、横断検索を試みましたが、状況は似たようなものでした。昔、あれほど何種類も出版されていた「世界文学全集」は、今はどこへ行ってしまったのでしょう。そして、新しい『モンテ・クリスト伯』さえも入手できないという出版界や公共図書館の現状とは?もう、電子出版や著作権切れで青空文庫に入るのを待つしかないのでしょうか。

どうもあまり盛り上がっているとは思えない国民読書年という掛け声は、逆に「奇妙な現実」に気づかせてくれます。

(*):デュマ『モンテ・クリスト伯』を読む(14)~ダングラールの場合と復讐者の幸福~「電網郊外散歩道」

写真は、霞城公園北側土塁にあるサイカチの巨木です。

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