電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

有川浩『三匹のおっさん』を読む

2012年08月18日 06時01分41秒 | 読書
文藝春秋社から刊行された単行本で、有川浩著『三匹のおっさん』を読みました。実は、次作『三匹のおっさん~ふたたび』を先に読んでしまい(*1)、著者の有川浩さんが女性であったことをはじめて知ったのでしたが、物語の発端と登場人物の周辺事情は、やっぱり第一作を読むに限ります。

第1話:清田清一の二世代住宅での定年退職と還暦祝の場面で、息子の嫁の貴子さんは、人は良いのだけれど、お嬢さん育ちの図々しさと無神経さを示し、おっさん清一はキレてしまいます。暇になった三匹の悪ガキ長じて「三匹のおっさん」を自称する還暦三人組は、私設自警団を結成。なにせ剣道家と柔道家と頭脳派メカ屋がそろっているのですから、最強です。さっそく嘱託のアミューズメント・パークに巣食う悪党野郎をたたきつぶし、バイト中の孫の祐希を救います。この祐希クン、チャラチャラした今風の少年ですが、けっこういい奴です。

第2話:街中に「ちかん出没注意!」の立看板が立ちます。どうも、単純なちかん事件ではなさそうで、表沙汰にならないレイプ未遂事件が発生しているのかも。三匹のおっさんは、さっそく夜回りを開始します。シゲさんが娘さんを助け、犯人らしい姿を目撃しますが、警察官から犯人扱いされてしまい、大憤慨。ところが、こんど被害に遭ったのは、機械マニアの工場経営者、有村則夫ことノリさんの一人娘の早苗さんでした。目撃した祐希クン、自力救助は難しいと三匹に緊急連絡し、犯人に立ち向かおうとします。しかし、そこはやはり父親の出番でしょう。当然のごとく、いささかやりすぎましたが。

第3話:居酒屋の元女将さんに降って湧いたような不倫詐欺。このあたりの女心は、わかるようなわからないような。むしろ、早苗チャンと祐希クンの仲が、よろしいですなあ。

第4話:動物虐待の話です。ストーリーはおもしろく、なるほどと思わせますが、犯人像がどうも通俗で説得力に乏しい。受験プレッシャーが、優等生の集団を小動物の虐待に向かわせるなど、ありえないでしょう。むしろ、その虐待集団の中の力関係というか、建前の裏に隠された本音を暴かずに終わってしまった感が否めません。ここでも早苗チャンと祐希クンの間柄が、一服の清涼剤となっています。

第5話:ノーといえない早苗さんが悩みますが、相手が祐希君で良かったね、の巻でしょう。どう考えても、三匹のおっさんは舞台の狂言回しと言うか、物語を動かす動力、パワー源の役回りですなあ。約一台、キャタピラが切れたみたいですが(^o^)/

第6話:うーん、いくら世間知らずのお嬢さん主婦のままに年齢だけ取ったとは言っても、70万円の空気清浄機といえば、それは詐欺でしょう。クーリングオフの手続きを取ってもらって安心したところへやってきた、恫喝慣れした男たち。清一さんの社会的経験は、伊達ではありません。剣道仕込みの迫力もあるでしょうが。で、三匹のおっさんの次なるターゲットは、催眠商法です。そしてその解決も、妥当、真っ当、地域の絆でした。それなら話はわかります。正義の味方だけでは、物事は解決できませんからね~。

(*1):有川浩『三匹のおっさん~ふたたび』を読む~「電網郊外散歩道」2012年7月

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