電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

グリーグ「ペール・ギュント」を聴く

2012年08月14日 06時05分01秒 | -オーケストラ
子ども時代、テレビが普及し始めた頃、すでに「みんなの歌」という番組がありました。いつ頃かはわかりませんが、「ソルヴェイグの歌」を覚えたのは、たしかこの番組でだったと思います。物悲しくロマンティックな旋律が、たいへん印象的でした。そして半世紀が過ぎ、今は通勤の音楽で、グリーグの劇音楽「ペール・ギュント」を聴いております。イプセンの原作は、なんとも風刺的な、若い時代を悔悟するような内容で、Wikipedia によれば、

落ちぶれた豪農の息子で、母と共に暮らしている夢見がちな男ペール・ギュントは、かつての恋人イングリを結婚式から奪取して逃亡する。しかしイングリに飽きたら彼女を捨て、トロルの娘と婚礼寸前まで行くが逃げ出す。純情な女ソルヴェイと恋に落ちるが、彼女を待たせたまま放浪の旅に出る。山師のようなことをやって金を儲けては無一文になったり、精神病院で皇帝になったり遍歴した後に老いて帰郷する。死を意識しながら故郷を散策していると、ボタン職人と出会うが、彼は天国に行くような大の善人でもなく地獄に行くほどの大悪党でもない「中庸」の人間をボタンに溶かし込む役割の職人だった。「末路がボタン」というのだけは御免だと、ペール・ギュントは善悪を問わず自分が中庸ではなかったことを証明しようと駆けずり回るが、トロルの王も「やせた男」もそれを証明してくれなかった。彼は最後の証人として会ったソルヴェイに子守唄を歌ってもらいながら永眠する。

というものだそうです。やれやれ(^o^;)>poripori

聴いているのは、ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団の演奏です。ただし、正規盤ではなくて、某中古書店で入手したソニーの名曲全集の分売で、FDCA-507 という型番のものです。取り上げられているのは、第1組曲の4曲と第2組曲のうち「ソルヴェイグの歌」のみ。曲順は、

第1曲「朝」
第2曲「オーセの死」
第3曲「アニトラの踊り」
第4曲「山の魔王の宮殿にて」
第5曲「ソルヴェイグの歌」

のようになっています。
ところが、オリジナルのLPや正規盤CDでは、

第1曲「朝」
第2曲「オーセの死」
第3曲「アニトラの踊り」
第4曲「ソルヴェイグの歌」
第5曲「山の魔王の宮殿にて」

のようになっています。つまり、ソニーの名曲全集では、編集者が(セル自身が許可した)オリジナルの曲順を変更して、ロマンティックに終わる形にしてしまっています。ところが、オリジナルな盤では、ロマンティックな「ソルヴェイグの歌」の後に、オーケストラの威力を存分に発揮する「山の魔王の宮殿にて」を配置し、スカッと終わる形になっています。セルの意図は、こちらでしょう。ここはやはり、オリジナルの曲順で聴きたいところですので、パソコンに取り込み、PCオーディオのメリットを生かして、プレイリストの曲順を変更して再生することとしましょう。

第1曲「朝」の冷涼な雰囲気は、真夏の朝の清涼剤です。第2曲「オーセの死」では、心打たれます。第4曲、「ソルヴェイグの歌」では、十分にロマンティックな歌を満喫します。第5曲「山の魔王の宮殿にて」のアンサンブルの精妙さには、思わず舌を巻きます。



有名曲であるにもかかわらず、記事にする角度が決まらずお蔵入りしていた音源でしたが、ふと気づいた曲順の違いから、逆に指揮者セルの音楽づくりを垣間見ることができたように思います。
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