電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

メンデルスゾーン「真夏の夜の夢」の音楽を聴く

2012年08月23日 06時02分06秒 | -オーケストラ
シェイクスピアの戯曲『真夏の夜の夢』を読んだのは、たしか学生時代だったと思います。妖精や惚れ薬など、合コンに魅力を感じる世代でもなければ、あまり興味の持てる題材ではありませんが、中高年世代になると、妖精王オベロンと女王タイターニアが養子をめぐって喧嘩をしている、などという想定には、なぜか親近感をいだいてしまいます(^o^)/

演奏は、ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団、LPでは交響曲第4番「イタリア」がA面に、この曲がB面に収録されておりました(CBS-SONY:13AC445)。CDのほうは、例の某中古書店の全集分売もので、FDCA-529という型番のものです。

「序曲」、アレグロ・ディ・モルト、ホ長調、2分の2拍子。物語のあらすじを説明してしまうような序曲ですが、演奏は実に見事の一言です。もっと夢幻的な要素を多く、という批判は理解できますが、それなら別の演奏を聴けば良いだけの話で、セルとクリーヴランド管のコンビは、境界のはっきりしない、ぼやけた夢幻性を求めているのではないようです。あくまでもギリシア・ローマ神話の世界。明晰で曖昧さの少ない、爽やかな夢を描こうとしているようです。

「スケルツォ」、アレグロ・ヴィヴァーチェ、ト短調、8分の3拍子。思わず唖然としてしまう見事な軽やかさ。劇的な盛り上がりを楽しみながら、メンデルスゾーンのスケルツォの面白さを十分に味わうことができます。

「夜想曲」、アンダンテ、ホ長調、4分の3拍子。ファゴットとホルンの音色が素敵です。夜想曲といっても、単にロマンティックな甘い音楽ではなくて、二組の恋人が眠る森の神秘性を描く音楽です。

「間奏曲」、アレグロ・アパッショナート、イ短調、8分の6拍子。王女ハーミアが恋人の不在に気づき、森の中をさまよい歩く音楽です。乙女の不安とあぶなっかしい歩き方がよく表されています。

「結婚行進曲」、アレグロ・ヴィヴァーチェ、ハ長調、4分の4拍子。我が娘曰く、若い女性なら憧れを持ち、少し年齢が上になると抵抗を持つようになる(らしい)代表的な曲ですが、別にこの音楽に責任があるわけではありません。
トランペットで導かれる華やかな曲の始まりは、中間部と良い対照をなしています。このあたりも、若いメンデルスゾーンの才気のあらわれでしょうか。



全体として、ジョージ・セルとクリーヴランド管弦楽団の演奏は、あいまいさを残さない、明晰でさわやかな幻想の世界です。もっと湿気のある、霧にけむる苔むした森の世界を期待する人には向かない演奏かもしれませんが、エアコンをきかせた車内で郊外路を走る長距離通勤には適した雰囲気、演奏です。


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