電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

村上もとか『JIN~仁~』第2巻を読む

2011年09月07日 06時03分34秒 | 読書
村上もとか著『JIN~仁~』第2巻を読みました。なるほど、抜群のおもしろさです。集英社漫画文庫の第2巻は、「人の章」その4、「コレラ対仁」から。

西洋医学所で、蘭方医の一人、山田純庵がコロリに倒れ、南方仁先生はその治療にあたります。父をコロリで失い、仁先生に対処法の手ほどきを受けていた橘咲は、「どうして助太刀せずにおれましょう、咲は武家の子でございます」の名台詞を残し、仁先生のもとへ馳せ参じます。コロリ治療の試金石となった山田純庵が回復に向かったのは良いのですが、なんと仁先生まで感染してしまいます。その5:「咲の戦」は、死線をさまよう仁先生を救うために、咲さんが大腿静脈への二本の点滴を決断し、死の淵から救い出します。この場面は、テレビでもたいそう印象的な場面でした。緒方洪庵と山田純庵、そして橘咲。良き理解者と協力者を得るとともに、かけがえのない女性として見出す章です。

続いて「信の章」と「深の章」。ここでは、坂本龍馬を介して吉原の鈴屋彦三郎とのご縁ができ、彦三郎の慢性硬膜下血腫の手術を通じて、呼出し花魁・野風の信頼を得ます。そこから、遊女の梅毒の悲惨な場面から、天然ペニシリンの開発へとつながっていきます。テレビでは、天然ペニシリンの抽出と精製の可能性は、恋人の美紀が調べ、二人の接近のきっかけになるという想定でした。原作では、医学生仲間の友光が調べた、という想定です。このあたり、図解の力もあり、原作のほうが、解説がわかりやすいと感じます。

そして「真の章」。蘭方医の本山である西洋医学所でも内部に反発があり、漢方医の本山である医学館でも疑いを持たれますが、漢方医・福田玄孝の胃に穴が開き、命の危険があったときに、開腹手術でこれを救います。刺客に命を狙われる仁先生、野風・咲連合の機転であやうく難を逃れたと思ったら、一難去ってまた一難、こんどはペニシリン株を失いかけます。結局、西洋医学所から独立することとなり、本巻は閉じられます。



当方も、R.シューマンの悲劇を通じて、梅毒という病気の悲惨さを知りましたが、この漫画では、遊女の運命と悲惨な実状を描き、華やかな吉原遊廓の闇の部分を描き出しています。村上もとかという漫画家の意図は、単なる娯楽を越えて、ヒューマンな作品として現れています。表紙に描かれた、笑顔で働く女性は、橘咲さんでしょうか。なかなかいい絵です。

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