電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

平岩弓枝『はやぶさ新八御用帳』(第5巻)「御守殿おたき」を読む

2006年07月09日 20時15分23秒 | -平岩弓技
出張先で読み終えました、第5巻。今度の宿泊先は、ネットワーク環境が一応整っており、家族へのメールさえも可能です。昔はノートパソコンとポケットモデムを持参し、ISDN電話機に挿入したテレホンカードの度数を気にしながら、パソコン通信でメールしたものでした。それを考えると、実にありがたいことです。

第1話「赤い廻り燈籠」、鬼勘の娘・小かんが第1発見者となった殺しの被害者は、旗本進藤織部正の御愛妾。芝居の小道具の赤い廻り燈籠が届いているはずなのに見当たらない。小かんのお手柄に、秋茄子のぬか漬で女どうしの競争意識。まぁ、そのあたりが平和でよろしいのでは。
第2話「御守殿おたき」、京菓子屋の永田屋が拾って育てた娘が大名の松平上総介様のご落胤だという。数百両を騙り取られた永田屋の主人よりも、奥女中滝の井と名乗る女の方が役者が上だった。だが、小かんは永田屋光兵衛は裏表のある人間だという。親は子に、子は孫に愛情を注ぐ。飢饉の年にも同じことだ。その愛の形が違うだけなのだろう。ところで、御守殿者って、何ですか?
第3話「雪日和」、松平周防守の若君が、生みの母不在の不満を粗暴の振る舞いに表し、事件を重ねているという。側室の藤世の方に育てられた若君は、石洲浜田五万四千石の世継ぎを狙う者に扇動されての乱暴らしい。お鯉の洞察力は驚くばかりで、根岸肥前守のもとでいっそう磨きがかかったようだ。最後のシーンは一幅の絵のようといえばよいのか、あるいは東映ちゃんばら映画の最後のシーンみたい。
第4話「多度津から来た娘」、女天一坊とは言いますが、他人になりすますなぞ、大それたことではあります。普通、しませんね、そんなこと。相当の度胸です。
第5話「男と女の雪違い」、行き違いを雪違いにかけたのでしょう。伝統的駄洒落保存会ですな。しかし新八郎が八面六臂の大活躍で右肩を負傷しながらの人助け。小かんとの仲を嫉妬するおっとり妻の郁江さん、お鯉さんは陰から見守る構図。社交と芸事と家事という三者三様の女性を描く、典型的な平岩弓枝の世界です。
第6話「三下り半の謎」、離縁状を三通も。普通、おかしいと考えますよね。犯人たちはおかしいと思わなかったのでしょうか。それと、子供の墓はそっと静かにしておいてやりたいと思うだろうに。
第7話「女密偵・お鯉」、お鯉さんは密偵役に縁があります。御三家の一つ、紀州家の奥で起こった金無垢の薬師如来の小像の紛失事件、探索は無事成功しますが、少々腑に落ちないところもあります。1寸5分といえばほぼ4.5cmです。頭部からの投影面積が1cm^2とすれば体積は4.5cm^3、金の密度は19.3g/cm^3ですから、金無垢の薬師如来小像は4.5×19.3=86.85(g)もあるのです。そんなものが蒲鉾の中に入っていたら、ずしりとした重さに、誰かが気づくと思うのですよ。
第8話「女嫌いの医者」、こちらも岡崎の本多家の内紛がらみです。お庭番は長崎帰りの名医の役もこなしてしまうのですね。それにしては、評判を取るほどの診断や治療の腕前はどこで身につけたのでしょうか。医学に関する知識や技術は、そうたやすく習得できるものではないはず。偽医者はやがて正体がばれますので、お加津の深情けに懲りたこともあるでしょうが、早々に立ち去って賢明でした。
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