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電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ブラームス「チェロソナタ第1番」を聴く

2011年12月24日 06時06分35秒 | -室内楽
ロストロポーヴィチとルドルフ・ゼルキンという往年のビッグネームの組み合わせで、ブラームスのチェロソナタを聴きました。CDは UCCG-5129 という型番で「The Best 1000」シリーズ中の一枚です。

チェロの音が好きだとはいうものの、まことに地味なこの曲を、私が初めて意識したのは、ずっと昔、まだ若い頃の、某大学の音楽専攻の学生たちの発表会の場でした。プログラムが次々に進む中で、この曲を演奏する予定の学生がチェロを持って登場します。ところが、傍目で見てもわかるほどに、カチンカチンに上がってしまっており、演奏を始めたところで弓をパタッと取り落としてしまったのです。場内はシーンと静まり返ります。でも演奏者ははじめからやり直して、とにかく曲を演奏し終えたのでした。この曲の出だしを聴く度に、あの、パタッと弓を取り落とした音が聞こえるような気がして、ドキッとします。あの学生は、その後どんな生活を送っているだろうかと、想像してしまいます。なかなか思うようにいかないのが人生。躓いても失敗をしても、投げ出さずに辛抱していると、やがて糸口は見えてくるものなのですけれど。

曲は、第1楽章のみ、ウィーンに居を構えた1862年に完成していたけれど、残る2つの楽章を加えて全部が完成したのは、母親が没した年である1865年の夏でした。1832年生まれの作曲者が33歳のとき、ということになります。

第1楽章:アレグロ・ノン・トロッポ、ホ短調、4分の4拍子、ソナタ形式。全体に、熊のような大男のチェロの独白を、ピアノがなだめて言い含めるような風情です。雄弁な主題が奏され、展開されていきますが、ピアノもどこか悲しげな気分を持っています。満たされない憧れの音楽とでも言いましょうか。最後は、嘆きはなだめられ、呟くように静かに終わります。
第2楽章:添付のリーフレットには、アレグレット・クワジ・メヌエット、イ短調、4分の3拍子、三部形式と表記されていますが、「クアジ・メヌエット」かな。メヌエットのように、という意味でしょうか。確かに、三拍子の舞曲のような要素もあります。
第3楽章:いきなりフーガが始まります。なんだかバッハのようだと思ったら、実際にバッハの「フーガの技法」から「コントラプンクトゥスXIII」を引用している(*)のだとか。な~るほど、それでこういう音楽になるのですね。複雑ですが、男性的な力感や頑固さを感じさせるもので、ブラームスを聴いた~!という満足感があります。

身内を失い、親しい家族のいない男の、孤独の影と哀愁を漂わせるけれど、音楽的な深まりと充実を示す、見事な作品であり、堂々たる演奏だと思います。1982年の7月に、ワシントンで収録されたデジタル録音で、チェロの音もピアノの音も、鮮明にとらえられています。

■ロストロポーヴィチ、ゼルキン盤
I=15'01" II=5'34" III=6'33" total=27'08"

(*):チェロソナタ第1番(ブラームス)~Wikipedia
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山形弦楽四重奏団第41回定期演奏会でハイドン、モーツァルトと壺井一歩作品を聴く

2011年10月10日 14時05分08秒 | -室内楽
よく晴れた日曜日、本当は週末農業日和なのですが、大学の同窓会の案内状を準備する仕事があり、住所変更の点検をして、往復はがきに差し込み印刷を行いました。なんとか準備が完了して、メール便で送ろうと思ったら、近所の取次店が休みです。しかたがありませんので、午後に出かけるときに送ることに。

そんなこんなで午後になり、妻と県立博物館へ出かけました。先日、開展したばかりの「出羽国成立以前の山形」展です。たいへん興味深い展示の話は別の機会に譲ることにして、ゆっくりと文翔館議場ホールに向かい、山形弦楽四重奏団の第41回定期演奏会の開演を待ちました。早めに入場しましたので、前部中央に近い、いい席に座ることができました。



プレ・コンサートは、アンサンブル・とも'ズ=茂木智子(Vn)・田中知子(Vla)のお二人で、ミヒャエル・ハイドンの「ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲第三番」です。ハイドンの弦楽四重奏曲全曲演奏を目指す山形弦楽四重奏団のプレコンサートということもあってか、楽しくチャーミングな同曲を、シリーズで演奏されているようです。平日だと、仕事の関係で開演ぎりぎりに滑り込むことが多いため、こうしてゆったりとプレコンサートを楽しめるのは大変ありがたい。

さて、本日の解説は、チェロの茂木明人さんです。本日の曲目について、ハイドンの弦楽四重奏曲作品33-5ト長調と、モーツァルトの弦楽五重奏曲第六番、そして壺井一歩さんの弦楽四重奏曲第一番であることを紹介します。作曲者の壺井一歩さんは、昨年1月の山響第202回定期演奏会で「はるかな祭と海」が取り上げられた(*1)ばかりです。茂木さんが「今日は、作曲家ご本人がこの会場にいらっしゃってます」と紹介したら、お隣の方が立って挨拶されました。なんと、壺井さんご本人と隣席になったのでした(^o^)/wa-o

茂木さんと壺井さんの会話は、音大の作曲科というものがどういうものか知らない、実験に明け暮れる理系の学生生活の経験しかない当方には、まるで未知の領域。大学や先生によっては、12音の曲しか認めないとか、調性を持った曲を書くことを許容するかどうかなど、なんだか昔の徒弟修行のようなすごい世界みたいです(^o^)/

トークの後、四人のメンバーが登場。ステージ左から、第1Vnの中島光之さん、第2Vnの今井東子さん。二人とも、衣装は黒を基調にされています。ヴィオラの倉田譲さんは、ブルー系のシャツに紺系のネクタイです。チェロの茂木さんは、ダークグレーのシャツに黄色系の明るいネクタイが似合っています。

最初は、F.J.ハイドンの弦楽四重奏曲Op.33-5、ト長調「ご機嫌いかが?」から。Wikipediaによれば、ロシア四重奏曲第5番と呼ばれることもあるそうな。第1楽章、ヴィヴァーチェ・アッサイ。ハイドンらしい、軽快で明るく爽やかな曲調です。第2楽章、ラルゴ・エ・カンタービレ。演奏しながらいろいろ思い出してしまいそうな、第1ヴァイオリンの美しい旋律とアンサンブルが魅力的。ピツィカートでポロンという終わり方も印象的です。第3楽章:短いスケルツォ、アレグロで。軽やかなハイドンの味が出ていました。第4楽章:フィナーレ、アレグレットで。少し陰影を帯びた始まりから、終始、カルテットのアンサンブルの楽しみを味わいました。ハイドンの曲は、成熟した大人の音楽ですね。

次は、田中知子さん(Vla)が加わり、モーツァルトの弦楽五重奏曲第6番です。茂木さんのプログラムノートによれば、この作品はモーツァルトが亡くなる年の春に完成したもので、最後の室内楽作品だそうです。私も、自宅のパソコンにCDを取り込み、好んで聴いておりますが、変ホ長調の曲らしく、基本的には明るく美しい曲、という印象を持っています。

第1楽章:アレグロ・ディ・モルト。二本のヴィオラが「カッカッカッタララッタタララッタ」というようなリズミカルな主題を提示します。今日は、たいへんハードなスケジュールとなった山Qメンバーですから、この曲は、見かけ以上に奏者にはハードな面があると思います。思わず応援してしまいながら(^o^)、無事にこの楽章を終了。
第2楽章:アンダンテ。どこかで聴いたことのあるようなシンプルな主題が、はじめは二本のヴァイオリンと第1ヴィオラで、すぐに第2ヴィオラとチェロも、pでそっと入ります。第1ヴァイオリンがモーツァルトらしく軽やかに歌い始めると、音楽は次々に各楽器に受け渡されていき、アンサンブルの呼吸はぴったりです。
第3楽章:メヌエット、アレグレットで。スタッカートで下降するヴァイオリンから、各楽器が参加してこの主題が反復され、展開・変奏されていきます。その後の緊密な展開は、お見事です。
第4楽章:アレグロ。きびきびした、運動性の高い音楽が開始され、緊密なアンサンブルが求められます。各楽器が次々に追いかけるフーガみたいなところもあったり、モーツァルト晩年の透明な音楽のエッセンスみたいな音楽でした。



この後、15分の休憩。せっかく隣席になったご縁で、壺井さんと少しだけお話をしました。今回の演奏会で四人が使っている譜面台が、今までのと違う。文翔館の雰囲気に合う、クラシック・スタイルのものでしたので、てっきり文翔館の備品かと思ったら、違うのだそうです。壺井さんもリハーサル時に同じ質問をしたそうですが、今までの譜面台よりも低めのものを探していて、ギター用のものを揃えたのだとか。それにしては、ホールの雰囲気によくマッチしていました。もう一つ、壺井さんは今朝の電車で山形へ来られたそうで、お昼にはそばを食べたそうです。残念ながら、唯一苦手な食べ物が里芋だそうで、山形の芋煮は食べられないのだそうな(^o^)/
当方、最近はミーハー魂が満開となっております。今回のプログラムノートの曲目解説に、ご本人が執筆されていることを幸いに、余白にサインしてもらいました(^o^)/banza-i
自筆署名の社会的意味を考え、掲載は控えますが、うれしいプログラムになりました。私も、「電網郊外散歩道」というブログを書いている素人音楽愛好家です、と自己紹介。楽器の経験もほとんどなく、ただ好きで聴いているだけのことですので、少々気恥ずかしいのですが(^o^;)>poripori

さて、最後のプログラム、壺井一歩さんの弦楽四重奏曲第1番です。全部で5楽章からなり、後の三つの楽章は、続けて演奏される、とのこと。1996年、まだ20歳の音大学生時代、小品ばかり書いていた頃に、ある先生からの助言により、長大な作品を書いてみることにして出来上がったのだそうです。2010年に改訂した作品は、どんな曲なのか、初の体験に期待が高まります。よく聴きなれたモーツァルトのようなわけにはいきませんので、印象は断片的になりますが、第1楽章、ざわ~ざわ~という響きが印象的。チェロが力強い音です。第2楽章はそのチェロから始まります。ヴァイオリンの美しい音に、2nd-Vnもやや低い音で続き、さらに低くヴィオラが、弱音器を外してでしょうか、まるで無伴奏ソナタのような長いソロです。ヴィオラの高音は、訴える力がありますね。各楽器の音域と音色を生かして、受け渡されるところは、室内楽の醍醐味です。チェロの長い無伴奏ソロも、たいへん力感があり、知人の息子さん(小学生)も、真剣に聴き入っているようです。
第3楽章以降は、3つの楽章が連続して演奏されましたので、感想も区分できません。はじめの響きはややパセティックな色彩を帯びて、1st-VnとVcが一緒に、さらに2nd-VnとVlaの2人がギャロップのようにリズミカルに奏し、これがヴァイオリンとヴィオラ・チェロに分れ、という具合に、美しく多彩に変化します。4本のピツィカートも非常に印象的で、続くVlaから再びリズミカルに、激しさも加わります。終わりもカッコよく、いい曲を聴いたぞ~という充実感があります。
各楽器のソロをふんだんに取り入れた曲で、聴かせどころがいっぱいあります。特に、古典派の曲では目立ちにくいヴィオラとチェロには、ありがたい曲となるかも。総じて、ジェントルですが力強い音楽だと感じました。モーツァルトの五重奏曲を押しのけて、メインプログラムに据えるのもよく理解できます。これは、山形弦楽四重奏団にとって、重要なレパートリーになる曲かもしれません。何かの機会に、ぜひ再演を期待したいものです。

昨年の山響作曲賞21の受賞の際に、倉田さんが「弦楽四重奏曲はないの?」と尋ねたのが発端という今回の演奏会、実に良かった。倉田さんの大ヒット!ですね。ハードなスケジュールを乗り越えて演奏していただいた山形弦楽四重奏団の皆さんと、当日の演奏会を準備してくださった協力スタッフの皆さんに感謝です。



次回は、2012年1月17日(火)の18:30開演、ベートーヴェンの第5番とハイドンのOp.17-1、それからフィリップ・グラスという、名前も初めての作曲家の作品です。真冬の平日夜に、開演時刻まで到着できるか?厳しい日程になりそうです(^o^;)>poripori
そうそう、次回の案内で、今井東子さんのお声をはじめて拝聴しました。とても落ち着いた、ステキなお声でしたよ(^o^)/

(*1):山響第202回定期演奏会~大作曲家の青春時代~を聴く(2)~「電網郊外散歩道」2010年1月
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シューマン「ピアノ三重奏曲第3番」を聴く

2011年10月04日 06時00分38秒 | -室内楽
日が短くなり、急速に暗さを増す黄昏時に、シューマンのピアノ三重奏曲第3番を聴きながら帰路につくと、車内はこの曲の気分に満たされます。CDは、エラートが出していたシューマンの室内楽全集から、WPCS-11379/80 という型番の disc-2 です。演奏は、ジャン・ユボー(Pf)とジャン・ムイエール(Vn)、フレデリック・ロデオン(Vc)。

「ピアノ三重奏曲第3番ト短調Op.110」は、デュッセルドルフ市の音楽監督に就任した翌年にあたる1851年の作品とのことですので、作曲者41歳の作品です。妻クララは、次々に産み出される作品を通じて夫の天才を確信し、夫の病気の真実と進行、やがて来る結末を知らない。シューマンの後期を飾る、代表的な作品の一つと言ってよいでしょう。

第1楽章:ト短調、8分の6拍子。「動的に、しかし速すぎずに」と指示されています。ヴァイオリンが、上行し下行する第一主題を提示します。内面に揺れ動く情熱を表すかのように、音楽は反復されます。展開部の後半では、弦のピツィカートで気分が変わりますが、すぐに元の主題と暗い情熱が戻ってきてしまいます。充実したソナタ形式の音楽です。
第2楽章:変ホ長調、8分の12拍子。「かなりゆっくりと」と指定されています。思わずため息が出るような美しい緩徐楽章ですが、途中に劇的な中間部を置き、再びはじめのテンポに戻って、優しくppで演奏したのちに、ppp で終わります。実に感動的な楽章です。
第3楽章:ハ短調、4分の2拍子、「速く」と指定されています。Rasch です。暗い情熱の噴出が印象的。この盤では、叙情的な第1トリオ?(0'57"あたり)のあたりで、ピロロロという着信音かホイッスルのような音が鳴りますので、運転中に思わずビックリしますが、演奏そのものは素晴らしいものです。躍動的な第2トリオを経て、再び上昇し下降する音型が登場、sehr rasch で sf の指示のもと、スタッカートぎみに終わります。
第4楽章:ト長調、4分の4拍子、「力強く、フモールを持って」、という指示ですが、フモールって何?ユーモアのこと?アクセントのきいた、ダイナミックな終曲です。それまでの、暗く噴出するような情熱から、意志的な力強さを示す音楽に変わっています。ヴァイオリンとピアノが活躍することの多い曲ですが、ここでチェロが歌うところなどに、思わずほれぼれと聴いてしまいます。

1978年から79年にかけて、パリの Eglise Notre-Dame du Liban にて収録されている、エラートによるアナログ録音です。父が倒れ、学問の道を断念して関東某県に就職し、安い給料の中から仕送りをしていた時代。LPでこれが買えなくて、NHK-FMのエアチェックをずいぶん愛聴しました。あれが、まさにこの録音でした。BASF のカセットテープでした。そんな記憶だけが、やけに鮮明です。

■ジャン・ユボー盤
I=9'39" II=3'01" III=4'07" IV=7'07" total=23'54"

この曲については、いくつかのブログで取り上げられており(*1,2)、お好きな方がけっこう多いようです。秋の日に、シューマンの室内楽など、いかがでしょうか。

(*1):シューマン/ピアノ三重奏曲第3番~「Maestro!」より
(*2):シューマン:ピアノ三重奏曲第3番 ト短調 by ボーザール・トリオ~「Etude」より
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フォーレ「ピアノ五重奏曲第1番」を聴く~PCオーディオの恩恵

2011年07月26日 20時14分12秒 | -室内楽
まだ若いころ、LPの時代に、ジャン・ユボー(Pf)とヴィア・ノヴァ四重奏団によるフォーレの室内楽全集を購入して、宝物のように大事に聴いておりました。CDの時代になってから、ジャン=フィリップ・コラール(Pf)とパレナン四重奏団による演奏が、EMI Classics という二枚組として分売(7243 5 69264 2 4)されており、これを購入して聴いております。ただしこのディスクでは、第一楽章だけを異なる盤に分割収録しており、曲の全体を続けて聴くことができません。以下、「ピアノ四重奏曲第1番」(*)での、当方のコメントです。

このCDで残念なのは、素晴らしいピアノ五重奏曲第1番が、第1楽章だけCD-1に収録され、以後の楽章が CD-2に泣き別れしていること。若い頃に苦労して買い求めた五枚組LP、ジャン・ユボーらの「フォーレ室内楽全集」では、ちゃんとピアノ四重奏曲が一枚の裏表に収録されています。こんな非音楽的なカップリングを誰が決めたんだ~!といきまいても、裏面を確かめなかったアンタが悪い、と言われるんでしょうなぁ。
でもまぁ、風邪をひいて枕元でLPを聴くことはできませんので、ピアノ五重奏曲第1番はあきらめます(^_^;)>poripori

実際、これは不便なものだと感じておりました。

ところが、CDを二枚ともパソコンに取り込み、Ubuntu-Linux 上で、RhythmBox というソフトウェアでプレイリストを作成し再生すると、連続して聴くことができます。やったね!かくして技術は障害を突破します(^o^)/



第1楽章:モルト・モデラート。幅広いピアノの分散和音に乗って、ヴァイオリンがひそやかに歌いはじめます。若い頃、こんな気分が好きだったんだなと懐かしみながら、耳を傾けていると、次第に音楽に集中していきます。
第2楽章:アダージョ。ピアノはごく控えめに、弦が主体となって始まる楽章です。楽章間の対比はごく控えめで、CD交換がないため、ぼんやりしているとどこで楽章が変わったのか見失ってしまうほど(^o^;)です。パレナン四重奏団の演奏は、ヴィア・ノヴァ四重奏団のものよりもテンポは遅めで、けっこう粘って演奏しています。当方、どちらかといえばサラサラと流れるヴィア・ノヴァ四重奏団の方が好みですが、でもこちらはこちらで、説得力があります。
第3楽章:アレグレット・モデラート。ピアノの提示する旋律の表情が、今までのものとは少しだけ明るく変わります。途中、低音の力感を感じさせる部分を経て、主題が様々に変奏され、終わりは明るく結ばれます。

添付のリーフレットは、仏英独の三ヶ国語で書かれており、録音データは、顕微鏡でなければ読めないほどの小さな文字で、申し訳程度に添えられています。フレネル・レンズで辛うじて判読したところ、1975年から1978年に、パリの Salle Wagram で収録されたアナログ録音のようです。ホールの響き全体をふわりと録音したようなタイプではなく、それぞれの楽器の音をマイクでしっかり収録しました、というものでしょうか。ややきつい印象を受けますが、それでも今まで二枚の CD に泣き別れ収録されていた演奏が、本来の姿で通して聴くことができるのは、ありがたい限り。まさに PC-audio の恩恵を感じます。

参考までに、演奏データを示します。
■ジャン・フィリップ・コラール(Pf)、パレナン四重奏団
I=11'53" II=11'31" III=7'58" total=31'22"
■ジャン・ユボー(Pf)、ヴィア・ノヴァ四重奏団
I=11'13" II=9'57" III=7'10" total=29'20"

(*):フォーレ「ピアノ四重奏曲第1番」を聴く~「電網郊外散歩道」2007年4月

昨日、夜明け前の余震で目が覚めてしまい、昨日は一日眠くて大変でした。昨夜は早くから寝てしまい、今朝まで爆睡10時間。おかげで早朝更新はできませんでした。珍しく、夜の更新です。

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山形弦楽四重奏団第40回定期演奏会でハイドン、モーツァルト、高田三郎を聴く

2011年07月18日 06時01分00秒 | -室内楽
山形弦楽四重奏団の定期演奏会も、第40回を迎えました。当方、第何回から聴いているのか定かでないのですが、夜間勤務の頃は行きたくても行けなかったのですから、たぶん半分ぐらいではないかと思います。それにしても、2001年4月の第1回から10年。当初からのメンバーである中島さんと倉田さんにも、「遥けくも来つるものかな」という感慨があるようには見えません。あくまでも実践の途上、日々是新なり、という心境かも。

さて、某カバン店でコンパクトなショルダーバッグを選んでいたために、演奏会場である山形県郷土館「文翔館」議場ホールに到着したのは、ヴァイオリンの茂木智子さんとヴィオラの田中知子さんのお二人による Ensemble Tomo's のプレコンサートが始まった頃でした。ミヒャエル・ハイドンによるヴァイオリンとヴィオラの二重奏が、相変わらずチャーミングです。

18時15分頃、今回担当する中島さんのプレトークが始まります。今回は、メンバー交代について説明。新メンバーの今井東子(はるこ)さんは、少し変わっています、と言ってから、いや、性格じゃなくて経歴が、と笑いをとります。千葉大(文)を卒業後、印刷会社に勤務、その後音楽を続けたいと英国に留学、帰国して山形交響楽団のオーディションを受け、昨年入団したばかりだとのこと。なるほど、たしかに変わっていることは確かですが、当方、工学部原子核工学科を卒業して某大医学部に学士入学し、医者になった友人がいますので、大きな驚きはありません。むしろ、音楽が好きだったことに一貫性を見出すほうです(^o^)/
中島さんのプレトークは毎回見事ですが、今回もまた、必要にして十分、簡潔に作曲者と曲目を描き出します。

そしてメンバーが登場。第1ヴァイオリン、中島さんは紺系のグレーのシャツを腕まくりして、黒っぽいプリントのネクタイをしています。第2ヴァイオリンの、注目の今井東子さんは、エメラルド・グリーンのドレスに、髪を後ろにまとめ、すっきり涼しそうです。メガネがとてもお似合いで、ステキな才媛という雰囲気です。ヴィオラの倉田さんは、長袖のカッターシャツにノーネクタイと、エアコンを意識したのでしょうか。チェロの茂木さんは、白ワイシャツに明るいグレー系の斜め格子縞のネクタイといういでたちです。

最初の曲目、ハイドンの弦楽四重奏曲変ホ長調、Op.20-1、「太陽四重奏曲」というあだ名のついている曲です。中島さんの解説によれば、食卓の音楽という位置づけにあった弦楽四重奏曲を、自立した音楽ジャンルとして確立した曲とのこと。第1楽章:アレグロ・モデラート、第2楽章:短いメヌエット。第3楽章:厳粛な気分に情感がこもる、アフェットゥオーソ・ソステヌート。そして第4楽章:フィナーレはプレストで演奏されます。私は、新メンバーではじめて聴いたことになりますが、山Qの音楽に、しなやかさが加わったように感じました。

そしてモーツァルトのオーボエ四重奏曲ヘ長調、K.370 です。オーボエ独奏は、同じ山響団員の斎藤真美さん。空色がかったうすい緑色と言えば良いのか、表現に困りますが、硫酸鉄(II)の微結晶のような色のドレスで登場です(^o^;)>poripori

第1楽章:アレグロ。いきなりオーボエの突き抜けた音から。木管が一本入ると、それだけで室内楽は空気が変わります。快活なモーツァルトです。強い音も弱い音もたいへん美しく、ヴァイオリン→ヴィオラ→チェロ→オーボエと渡されて、アンサンブルに。第2楽章:アダージョ。弦が奏でる悲しげな音にオーボエの長い音が加わり、情感が強まります。うーん、いいなあ。最後のオーボエの超高音も難なく決まりました。第3楽章:ロンド、アレグロ。輪舞的なリズミカルな面はやや後退しますが、音楽をしっかりと表現。実演を聴くと、この曲のオーボエの高度な難しさが、あらためてよくわかります。齋藤さん、さすがです。

ここで、15分の休憩です。この間に、次回、10月9日の第41回のチケットを2枚、購入しました。妻の都合も聞きませんでしたが、たぶん大丈夫なことにして(^o^)/



休憩時の写真に、お客様が写ってしまっていましたので、ちょいと Gimp でキャンバス地ふうに加工してみました。これなら、ご本人以外は、たぶんわからないでしょう(^o^;)>

後半は、高田三郎の「山形民謡によるバラード」から「幻想曲」で始まります。解説によれば、高田三郎の友人の奥さんが、山形県の、現在の庄内町にの出身だとか。奥さんがおもしろい子守歌を歌うんだと聞いて友人のところに行き、この元歌を知ったのだそうです。その歌詞が、なんと、「やろててははは てんにんだとよ やろまたてんじょうさ ゆきたから うらのささぎを てぐるばし」(お前の父母は天人だということだ。お前も天上へ行きたいなら、裏の笹薮を探しなさい、そこに羽衣が隠されているから)というものだそうな。
この曲は、1913年生まれの作曲者が27歳のときに書いたそうですので、1940年ということになります。もうすぐ太平洋戦争が始まろうという頃です。中島さんのブログに、作曲者の高田三郎の言葉が紹介されています(*1)が、諸外国の音楽シーンについての情報が入らなくなる頃の、半ば諦めの気持ちも入った自覚なのかも、と思いました。

曲は、ヴィオラとチェロから始まり、ヴァイオリンが加わる形でスタートします。ヴィオラが、民謡風の味わいのある旋律を奏でます。これを1st-Vnが繰り返し、さらにチェロに移行します。1st-Vnが、やや異なる旋律を示し、ヴィオラがピツィカートする中で、ヴァイオリンとチェロが無調ふうな、しかし民謡風な旋律を奏でます。幻想曲と名づけられてはいますが、悲歌ふうな印象も強い音楽です。聴衆から、思わず「ブラ~ヴォ!」の声がかかります。

最後は、モーツァルトの弦楽四重奏曲第16番、変ホ長調K.428 です。言わずと知れたハイドンセット中の名曲。第1楽章:アレグロ・ノン・トロッポ。第2楽章:アンダンテ・コン・モト。第3楽章:メヌエット、アレグロ。第4楽章:アレグロ・ヴィヴァーチェ。たいへんな集中力が感じられる演奏で、ここはもう、ひたすら聴き惚れました。チェロの茂木さんが、縁の下の力持ち的な活躍で、しっかりと役割を果たしていたのが印象的でした。

そして、盛大な拍手に応えて、アンコールは同じモーツァルトの「狩」の第4楽章。これも良かった~(^o^)/

新メンバーを迎えての再スタートとなった第40回定期演奏会、大いに楽しみました。他のメンバーのニコニコ笑顔に比べると、今井さんの表情には、まだ緊張がありあり(^o^)/
回を重ね、ステキな笑顔が自然にこぼれるようになると、さらに落ち着いた音楽の愉悦感が現れてくるのでは、と期待しているところです。次回は10月9日(日)、楽しみです。

(*1):山形Q練習40-vol.12~「中爺通信」
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日曜は山Qへ

2011年07月17日 06時02分39秒 | -室内楽
ミュージカル「ハロー・ドーリー」に、「日曜は晴れ着で」という名シーンがありました。たいへん楽しく印象的な場面でした。それに引っ掛けて、今日のお題は「日曜は山Qへ」です。

山Qというのは Yamagata Quartet の略称で、もちろん山形弦楽四重奏団(*1)のこと。山形交響楽団のメンバーが集まり、定期的に各種の室内楽演奏会が開かれておりますが、山形弦楽四重奏団は常設のカルテットで、プロのオーケストラ団員が常設の弦楽四重奏団を維持しているという例は、国内でもごく少ないのだそうで、実は、今夜がその第40回定期演奏会(*2)なのです。

予定されている演奏曲目は、次のとおり。

W.A.モーツァルト/弦楽四重奏曲第16番 変ホ長調 K.428(421b)
W.A.モーツァルト/オーボエ四重奏曲 ヘ長調 K.370(368b)ゲスト Ob:齋藤真美
田 三郎 /「山形民謡によるバラード」から幻想曲
F.J.ハイドン/弦楽四重奏曲 変ホ長調 Op.20-1

ハイドンの弦楽四重奏曲の全曲演奏を目標にしていますが、今回はそれに加えて、モーツァルトの弦楽四重奏曲とオーボエ四重奏曲が加わります。ゲストの齋藤さんも、山響のオーボエ奏者です。また、山Qは日本人作曲家の室内楽曲をしばしば取り上げており、魅力的な作品が少なくないことを知ることができました。会場は、山形市の文翔館議場ホールです。建物の北側の道路向かいに無料の駐車場があり、演奏会のある日は、終演まで駐車することができます。

プロの演奏家の室内楽は、聴いていてたいへん楽しいものです。会場の雰囲気も親しみやすいもので、重要文化財のホールは、雰囲気も響きの面でも素晴らしいものがあります。「日曜は晴れ着で」を「日曜は山Qへ」に変えて、夕方から出かける予定です。おっと、その前に、果樹園の草刈りを済ませなければ(^o^;)>poripori
なにせ、当「電網郊外散歩道」では、「晴耕雨読、年中音楽」がモットーですから(^o^)/

(*1):山形弦楽四重奏団ホームページ
(*2):山形弦楽四重奏団第40回定期演奏会~会場、プログラムほか

なお、メンバーのブログは、以下のとおりです。

(*3):らびおがゆく Vol.3 ~ ヴィオラの倉田さんのブログ
(*4):中爺通信~ヴァイオリンの中島さんのブログ
(*5):茂木日誌~チェロの茂木さんのブログ
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コレルリ「ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ集Op.5」選集を聴く

2011年07月06日 06時05分36秒 | -室内楽
このところ、通勤の音楽で聴いていたのが、コレルリの「ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ集Op.5」です。といっても全曲集ではなくて、後半の第7番~第12番までの6曲を集めた選集です。第7番から第9番までが4楽章、第10番と第11番が5楽章からなり、第12番「ラ・フォリア」は単一楽章の音楽です。

バロック音楽の中でも、ヴィヴァルディには、若い娘たちに似合う陽気な華やかさがありますが、コレルリの音楽には、もう少し別なものを感じます。激しさを内に持った若者が波乱の中で年齢を重ね、一見すると古典的でストイックな音楽を展開している、そんな情景です。

寺神戸亮のバロック・ヴァイオリンは、奏法のせいもあってか、伸びやかで澄んだ音が楽しめます。ルシア・スヴァルツのバロック・チェロも、現代楽器のような押し出しの強さはありませんが、低音部をしっかり支え、ヴァイオリンと対比されます。通奏低音は、第10番と第11番はオルガンで、他はチェンバロです。この威圧的でないオルガンの音も、実にいいのですね。

特に第12番「ラ・フォリア」は、イベリア半島に起源を持つ舞曲「フォリア」の主題をベースに、これを様々に変奏するもので、ニ短調という調性もあって、一種独特の緊張感を感じさせます。たぶん、ヴァイオリン学習者が一定の段階に達したとき、挑戦する曲として愛奏されているのではなかろうかと推測しています。たしかに、数百年にわたって引き継がれてきた、魅力を感じさせる音楽です。

CDは DENON のクレスト1000シリーズのうちの一枚で、COCO-70459 という型番のもの。バロック・ヴァイオリンが寺神戸亮、バロック・チェロがルシア・スヴァルツ、通奏低音にチェンバロまたはオルガンを採用し、シーベ・ヘンストラが演奏しています。1994年、オランダのデン・ハーグ、旧カトリック教会でのデジタル録音で、響きがたいへんに自然で魅力的です。

通勤の音楽として、カーステレオで聴いた後に、自宅のパソコンに取り込み、Ubuntu-Linux から USB オーディオプロセッサを経由し、ミニコンポで鳴らしております。早朝に、コーヒーを飲みながら、音量を絞って小型スピーカで聴くコレルリの音楽は、なかなか良いものです。
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ドビュッシーの「ヴァイオリン・ソナタ」を聴く

2011年06月26日 06時03分12秒 | -室内楽
週末農業は、佳境に入っております。おそらく、佐藤錦の山場は過ぎて、まだ少し残る樹にとりかかる段階に入ったあたりでしょうか。

東北地方も梅雨入りしてしばらくたち、蒸し暑かったり涼しすぎたり、妙なお天気が続きます。こんなときは、気分だけでもひんやり涼やかに、ドビュッシーの音楽がよろしかろうと、最近は、通勤の音楽として、ドビュッシーの最後の作品、「ヴァイオリン・ソナタ」を繰り返し聴いておりました。先に実演を聴き(*1)、ご本人のサインをもらった、シュロモ・ミンツさんのCDにて。



第1楽章:アレグロ・ヴィーヴォ。別な曲の緩徐楽章みたいな始まりは、いかにもドビュッシーらしいです。とぎれとぎれの回想のような物思いの風情で、ピアノとヴァイオリンのひそやかな対話です。
第2楽章:間奏曲。幻想的かつ軽快に(Intermède. Fantasque et léger)。キュイッ、キュイーッというヴァイオリンの動機で始まります。気まぐれな表情は、すぐに活発なピアノとヴァイオリンによって変化し、感覚的な音楽が展開されます。
第3楽章:終曲。きわめて活発に(Finale. Très animé)。前の楽章の印象を引き継ぎながら、超高音を操る、高度な技巧を駆使した音楽であるように感じます。

シュロモ・ミンツさんの演奏は、とても集中度の高い、緊張感のあるものです。感覚を伸びやかに解き放つような方向ではなく、音楽を真摯に見つめ、考え抜くタイプのように感じます。美しい音で、技巧的なキレもすごいのですが、それが少しも不自然に感じさせず、納得させてしまう。CDに収録されているフランクのヴァイオリン・ソナタもラヴェルのソナタも見事なものですが、とくにフランクに始まりラヴェルに終わる曲の配置が、言い換えれば、両者の間にドビュッシーのソナタが入るという絶妙の配置が、なるほどです。ボタンとシャクヤクの大輪の花の間にひっそりと咲く、夕暮れにほのかなリン光を放つ新種の花のような存在です。

■シュロモ・ミンツ(Vn)、イェフィム・ブロンフマン(Pf)-(G: UCCG-5099)
I=4'39" II=4'03" III=3'52" total=12'34"

(*1):山響第213回定期演奏会でボロディン、プロコフィエフ等を聴く~「電網郊外散歩道」2011年5月
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山形弦楽四重奏団第39回定期演奏会を聴く

2011年04月24日 22時11分16秒 | -室内楽
土曜の夕方、仕事を終えて山形市の文翔館に向かいました。山形中央で高速を降り、なんとか開演に間に合いました。今回は、ヴィオラの倉田さんが挨拶と曲目の紹介を行い、セカンド・ヴァイオリンの駒込綾さんが今回の演奏会を最後に退団することとなり、今日は最後の演奏会となること、後に同じ山形交響楽団のヴァイオリニストで、プレ・コンサートに出演した今井東子さんが入り、団としての活動は続きますと説明がありました。良かった~。

本日のプログラムは、

(1) ハイドン 弦楽四重奏曲 ハ長調 Op.50-2
(2) クルッセル クラリネット四重奏曲第2番 ハ短調 Op.4
(3) グラズノフ 弦楽四重奏のための五つのノヴェレッテ

となっていますが、まず中島光之さんが立ち、今回の大震災で亡くなられた方々のために、モーツァルトの「レクイエム」から「ラクリモザ」を演奏しますので、お聴きの皆様も黙祷をお願いします、との依頼がありました。
モーツァルトの「白鳥の歌」となった「レクイエム」の、絶筆箇所である「ラクリモザ」の旋律が弦楽四重奏で流れると、美しくも悲しみに満ちた音楽に感動します。

そしてハイドンの弦楽四重奏曲ハ長調、「プロシャ王」の愛称を持つセットから、作品50-2です。
第1楽章:ヴィヴァーチェの指示のとおり、気分は晴れやかで、穏やかな親密さを持ちます。ハイドンの弦楽四重奏曲の常なのか、1st-Vnの比重が大きいとはいうものの、2nd-Vnの出番もけっこうあるようで。駒込さんは、モスグリーンとでも言うのでしょうか、落ち着いた大人の色合いのドレスです。大きく肩の開いたドレスで寒くないのかな、などと余計な心配をいたしました(^o^)/
第2楽章:アダージョ。2nd-Vnが低めの音域でしっとりと旋律を奏でると、1st-Vnが高い音で引き継ぎます。おやおや、中島さん、本日は眼鏡です。花粉症でコンタクト不可?学者みたいで、よく似合います。白いワイシャツにピンクのネクタイという、茂木明人さんのチェロの、低い音域から高い方へ縦横にかけめぐる音が、とても充実して響きます。
第3楽章:メヌエット、アレグロ。べつに難曲や力作・大作でなくたって、こういう雰囲気の曲は好ましいものです。いかにも親密で楽しそう。話しかけ、答えを待つように、ふと休止する「間」が実にいい感じ。ハートウォームです。
第4楽章:フィナーレ、ヴィヴァーチェ・アッサイ。2nd-Vnとヴィオラが一緒にリズムを刻む中で、1st-Vnが活躍しつつ、音楽が始まります。ヴィオラとチェロが同じフレーズを繰り返しヴァイオリンの音と対比するなど、いろいろな面白さがあります。

二曲目、クルッセル(1776-1838)のクラリネット四重奏曲第2番です。弦楽三重奏にクラリネットが入った形で、駒込さんはお休みです。クラリネットは、山形交響楽団クラリネット奏者の郷津さん。
第1楽章:アレグロ・モルト・アジタート。弦楽器とは傾向の異なる木管楽器の響きとの対比がおもしろい。作曲された時代は、まさにシューベルトやシューマンの初期のころでしょうか。北欧にこんな作曲家もいたんだ、という驚きも。郷津さんのクラリネットの音が、いつもながらいい音でステキです!
第2楽章:メヌエット~トリオ。クラリネットに続いて弦が入ります。そうそう、曲中のハ短調の響きは、ベートーヴェンのハ短調とは違い、柔らかいですね~。
第3楽章:パストラーレ・ウン・ポコ・アレグレット。パストラーレという言葉にふさわしく、のんびりと寛いだ雰囲気です。でも、このあたりからだいぶ冷えてきて、暖房節約の会場の寒さが感じられてきました。ちゃんとコートを着てくればよかった(^o^;)>
第4楽章:ロンド・アレグロ。はやいテンポで、なかなか魅力的な音楽です。軽快なリズム、ピツィカートの茂木さんのリズムと表情がいいですねえ。



休憩のあと、山形弦楽四重奏団員としては最後となる、駒込綾さんが第一ヴァイオリンを務めるグラズノフ(1865-1936)の「弦楽四重奏のための5つのノヴェレッテ」。初めて聴きましたが、いい曲だ~。ショスタコーヴィチの先生だそうです。
第1曲:アラ・スパニョーラ。スペイン風に、というような意味でしょうか。この曲は、山Q初期の演奏会で取り上げたそうですが、その頃は、当方まだ演奏会に通える状況ではありませんでした。チェロがいい音~。駒込さんも、思い切り奏いている感じです。
第2曲:オリエンターレ。チェロから、ハンガリー風に。ヴィオラがいい音で、ハンガリー風です。ペルシャやシルクロード(?!)の香りがします。
第3曲:間奏曲。ヴィオラと2nd-Vnが寄り添うように奏するところがステキです。朗々と響くチェロもいい音です。曲は静かに終わりますが、終わるのが惜しい。
第4曲:ワルツ。チェロのピツィカートにのって、ヴァイオリンとヴィオラがワルツのリズムを奏でます。ただし、響きはショスタコーヴィチの先生らしく、ですね。やがて調性が戻り、第1ヴァイオリンの駒込王女(^o^)が軽やかに踊るように。
第5曲:チェロのピツィカートにのって、ヴァイオリンとヴィオラがリズミカルに旋律を歌います。1st-Vnの活躍の場がたっぷりある曲。途中、思わずフライング拍手が出そうになりますが、すぐにVnが情熱的な旋律を奏でるので踏みとどまることに(^o^)/
まあ、初めて聴く曲ですからね~。ジプシー風なところもあって、再びチェロのピツィカートが戻り、ヴァイオリンとヴィオラが再現。白馬の騎士たちが駒込王女をエスコートしたかのような(^o^)演奏会でした。

アンコールは、郷津さんが加わり、モーツァルトのクラリネット五重奏曲から、第3楽章。思わず聞き惚れました。

そうですね、駒込さんの退団は寂しいけれど、秋田のオーケストラ等での活躍も増えそうで、それはむしろ期待すべきことかもしれない。また、山響の今井さんが加入して、山Qとしての活動が継続されることは喜ばしい限りです。新しいメンバーでの最初の定期は、記念すべき第40回となります。7月17日(日)、夕方6時半から、文翔館議場ホールにて。チケットはすでに購入済。今から楽しみです。
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ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ第5番「春」を聴く~その2

2011年02月22日 06時02分25秒 | -室内楽
最近の通勤の音楽は、ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ第5番「春」を選んでおります。この曲については、以前にも一度記事にしており(*)、このときはフランチェスカッティ盤や西崎崇子盤を取り上げておりましたが、今回は、ヨセフ・スーク(Vn)とヤン・パネンカ(Pf)による DENON 全集盤(COCO-83953~56) と、ジョナサン・カーネイ(Vn)とロナン・オーラ(Pf)のコンビによる、ロイヤルフィルハーモニック・コレクション中の一枚(FRP-1023)からです。

スークとパネンカの演奏は、ゆったりしたテンポの落ち着いたもので、フランチェスカッティとカサドシュとの小気味いい演奏とはだいぶ印象が違います。むしろ、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタというジャンルにおける意欲的な作品として取り組み、くっきりと描き出している、という印象を受けます。その分、この曲が持っている、「春」という愛称に象徴されるようなはずむような軽快感よりも、音楽の立派さ、構成感のような美質が、しっかりと現れているようです。とくに、パネンカのピアノは、ニュアンスに富む美しい音で、聴きごたえがあります。

もう一枚の、ロイヤルフィルの廉価盤も楽しいものです。Wikipedia によれば、ジョナサン・カーネイという演奏家は、1963年生まれのアメリカのヴァイオリニスト、指揮者で、アシュケナージの推挙によりロイヤルフィルハーモニー管のコンサートマスターとして活躍した、とあります。2002年からは米国ボルチモア響のコンサートマスターに就任しているとのこと。1687年のストラディヴァリウスを有し、現代音楽を得意とし、指揮者としては、1996年にナイマンのピアノ協奏曲を録音しているそうな。いっぽう、ロナン・オーラは1964年生まれの英国のピアニストで、欧米圏を中心に活動する一方で、EMI 等に録音を行い、現在は英国の音大・音楽学校の教授として活躍中だそうです。いずれも40代の演奏家です。私は初めて聴きますが、ゆったりめのテンポでじっくり取り組みながら楽しい音楽を聴かせてくれる、なかなか魅力的な演奏です。

この季節は、晴天にさえ恵まれれば、どんどん雪融けが進みます。融けた水が流れ、土を潤します。球根は目覚め、おそるおそる芽を出し始めます。若いベートーヴェンの作品24は、本来は第4番イ短調作品23と2曲セットで発表される予定だったとのことですが、どういう事情か単独で発表されたものらしい。通称「スプリング・ソナタ」は、聴く者に幸福感を感じさせてくれる、お気に入りの音楽です。

■スーク(Vn)、パネンカ(Pf)盤
I=10'55" II=6'35" III=1'10" IV=6'55" total=25'35"
■カーネイ(Vn)、オーラ(Pf)盤
I=9'55" II=6'22" III=1'13" IV=6'38" total=24'08"

参考までに、前回取り上げた演奏は、次のとおりでした。

■ジノ・フランチェスカッティ(Vn)、ロベール・カザドシュ(Pf)盤
I=7'00 II=4'50 III+IV=7'28" total=19'18"
■西崎崇子(Vn)、イェネ・ヤンドー(Pf)盤
I=9'35" II=5'43" III=1'08" IV=6'33" total=22'59"

(*):ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第5番「春」を聴く~「電網郊外散歩道」2007年3月
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山形弦楽四重奏団第38回定期演奏会でハイドン、ベートーヴェン、ドヴォルザークを聴く

2011年01月17日 06時03分42秒 | -室内楽
厳寒の日曜の夜、山形市の文翔館議場ホールまで、山形弦楽四重奏団第38回定期演奏会に出かけました。あいにく妻は過日の雪かきで腰を痛め、本日は私一人です。激しく降り出した雪道をノロノロと走り、ようやく会場に着くと、すでにプレコンサートが始まっておりました。今夜は、茂木智子さんと菊地祥子さんのヴァイオリン・デュオです。曲目は、作曲者名を聞き漏らしてしまいましたが、ベルギーのヴァイオリニスト・作曲家でフランコ・ベルギー楽派の創始者であるベリオの(*1)作品57-3から、第1楽章と第3楽章とのこと。なかなかすてきな曲、すてきな演奏です。

続いて駒込綾さんが登場、本日のトークを行いますが、「おやっ!」とびっくりするほど見事なショートカットに変身。「センセ、タカラヅカ」と生徒にひやかされるほど(*2)だということですが、なるほど、です。タカラジェンヌ、いつでも代役ができそうなほど、よくお似合いでした(^o^)/
まあ、それは冗談として、本日の曲目については、ハイドンのプロシャ王四重奏曲については、あちこちに「キラキラした輝きを持った曲」とのこと。ベートーヴェンの「大フーガ」は、ぎゅうっと凝縮したエネルギーを感じるすごい曲、とのことですし、ドヴォルジャークの第10番は、伝統的な様式に民族的な旋律とリズムが見事に調和した曲、とのことです。私的には、大好きなドヴォルザークの第10番(*3)が聴けるのが何といっても楽しみです。

さて、四人のメンバーが登場します。第1ヴァイオリンの中島光之さんは、ダークスーツに白いシャツ、ダークグレーかあるいはこげ茶色のネクタイです。第2ヴァイオリンの駒込綾さんは、上半身に水玉の入った紺色のドレスに黒のボレロ。そしてヴィオラの倉田さんは、黒のダークスーツに黒っぽいシャツ、赤いネクタイです。チェロの茂木さんは、黒のダークスーツと白いシャツに、濃いピンクのネクタイを合わせています。こうして四人揃ってまたカルテットが聴けるのは、うれしい限りです。

第1曲、ハイドンの弦楽四重奏曲、第44番、変ロ長調Op.50-1、プロシャ王四重奏曲です。1787年に作曲されたそうで、モーツァルトのお父さんが亡くなり、「ドン・ジョヴァンニ」が初演された頃の作品です。
第1楽章、アレグロ。チェロの刻むリズムから始まります。このブンブンブンブンという反復は、チェロに現れたりヴァイオリンに現れたりしますが、これに対し、ヴァイオリンとヴィオラが、優しく落ち着いた音楽を奏でます。
第2楽章、アダージョ。1st-Vn が主導して始まる緩徐楽章は、続いて 2nd-Vn に移り、四人の合奏を導きます。
第3楽章、メヌエット・ポコ・アレグレット。1st-Vn と 2nd-Vn が瞬時の間を置いて、キコキコキコと下降するところなど、おもしろい効果です。
第4楽章、フィナーレ、ヴィヴァーチェ。軽やかに始まり、リズミカルな音楽です。

2曲目は、ベートーヴェンの「大フーガ」Op.133 です。もともと、1825年に完成した、弦楽四重奏曲第13番(Op.130)の終楽章として完成したのだそうですが、第13番は好意的に迎えられたものの、この楽章だけは難解なものとして評価され、当時の楽譜出版側から、終楽章の別途作曲とともに、この大フーガは別作品として出版したいと提案されたとか。たしかに、現代のカルテットの演奏側でも「複雑」「難解」という語を用いるくらいですから、当時の商売の観点からは(^o^;)もっともな話です。当方は、映画「敬愛なるベートーヴェン」にて、「あなたと同じに聴こえました」を観ております(*4)し、さほど抵抗はありませんが、でも格別の集中力を求められることは間違いないところです。
曲の始まりで四者が序奏を響かせる中から、やがて1st-Vnが決然と厳しい音楽を開始し、不協和なフーガが展開されます。音楽はサラサラとは流れず、いかにもゴツゴツと、しかしテンポはしっかりと保たれ、リズムは強靭に貫かれます。全体のプロポーションは、現代のバルトークの音楽がすぐ近くに感じられるほどです。



15分間の休憩ののち、プログラムの後半、ドヴォルザークの「弦楽四重奏曲第10番」です。
第1楽章:アレグロ・マ・ノン・トロッポ。始まりはチェロとヴィオラからです。ヴァイオリンはバランスに配慮しているようで、抑えめに。チェロのピツィカートがとってもリズミカルで、曲にぴったり乗っている感じです。ほんとにドヴォルザークは、旋律に恵まれた作曲家ですね~。
第2楽章:ドゥムカ、エレジーア。アンダンテ・コン・モト。ゆったりした悲歌です。1st-Vn がややストイックに美しい音を聴かせると、2nd-Vn は感情をこめて応えます。なかなかいい塩梅です。後半、スラブ舞曲ふうにテンポアップして、再びチェロのポロロン、ポロロンというアルペジオに続いて悲歌が再現して終わります。
第3楽章:ロマンツァ。アンダンテ・コン・モト。始まりは第1Vnと第2Vnから、ヴィオラとチェロがそれに答える形で、です。ロミオとジュリエットみたいな連想をしてしまう、シンプルながら美しい場面です。やがて、ロマンティックではありますが静かに落ち着いた感じで、この楽章が終わります。
第4楽章:フィナーレ。アレグロ・アッサイ。曲は一転して速いテンポで活動的な音楽に変わります。背後でヴィオラがおもしろい音の効果を出しています。第1ヴァイオリンは終始見事なリードをしてくれますが、ここでも第2ヴァイオリンがしっとりとしたいい役回りを見せてくれます。そういえばこの曲は、第2ヴァイオリンにとっては、聴かせどころの「美味しい」部分が多いみたいですが、だちゅさん、違いましたか(^o^)/

アンコールは、同じドヴォルザークの弦楽四重奏曲「アメリカ」より、第3楽章を。やっぱり「アメリカ」いいですね~。なお、ハイドンの弦楽四重奏曲全曲演奏も、ついに残すところあと28曲になったとのこと、次回の定期演奏会は4月23日(土)18:45からで、ハイドンのプロシャ王四重奏曲から、Op.50-2 ほか、だそうです。

いや~、今日も真冬の室内楽演奏を堪能いたしました。外は大雪でも、文翔館議場ホールの中は、あたたかな親密空間でした(^o^)/
チェロの委員長氏は、某「畑の先生」と会話をしているようでしたし、私はといえば、某「庄内の笛吹き」夫妻とはじめてご挨拶。無事に酒田に到着されることを祈りつつ、当方も吹雪の中を疾走して田舎の我が家へ帰りました。

(*1):シャルル=オーギュスト・ド・ベリオ~Wikipediaの記事
(*2):そういや~「★だちゅのにっき★」より
(*3):ドヴォルザーク「弦楽四重奏曲第10番」を聴く~「電網郊外散歩道」2005年10月
(*4):映画「敬愛なるベートーヴェン」を観る~「電網郊外散歩道」2007年1月

【追記】
チェロの茂木さんから、プレコンサートで演奏された曲はベリオの作品で、ベリオといっても20世紀のイタリアのベリオではなく、フランコ・ベルギー楽派の創始者で、ベルギーのヴァイオリニスト・作曲家のほうであること、などの追加情報をいただき、訂正しました。
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山形Q第37回定期演奏会でハイドン、モーツァルト、シューマンを聴く

2010年10月12日 06時01分52秒 | -室内楽
体育の日の夜、山形市の文翔館議場ホールで、山形弦楽四重奏団(*)の第37回定期演奏会を聴きました。幸いにお天気でしたので、日中は自宅の裏の果樹園に今年最後の肥料散布で汗をかき、シャワーを浴びてゆっくりしていたら、ゆっくりしすぎて居眠りをしてしまい、会場にぎりぎりセーフ。茂木さんのプレトークが終わるところでした。あぶないあぶない(^o^;)>

本日の曲目は、

◆シューマン生誕200年記念◆
(1) F.J.ハイドン/弦楽四重奏曲 イ長調 Op.20-6 ~太陽四重奏曲~
(2) W.A.モーツァルト/弦楽五重奏曲 第5番 ニ長調 K.593
(3) R.シューマン/弦楽四重奏曲 第3番 イ長調 Op.41-3

となっています。

最初に、ハイドンの弦楽四重奏曲イ長調Op.20-6~太陽四重奏曲から。
第1楽章:アレグロ・ディ・モルト・エ・スケルツァンド。娯楽音楽として始まったはずのハイドンの弦楽四重奏曲も、バロック様式と立ち向かうこの時期ではかなり抽象的な響きの楽しみに変化しているようです。
第2楽章:アダージョ。1st-Vn が旋律を歌い、3人がゆったりとリズムを刻みながら、響きを支える形でしょうか。中声部のくすんだ響きが魅力的です。
第3楽章:軽やかで優雅なメヌエット。
第4楽章:アレグロ、三声のフーガ。ハイドンは、バロック様式をずいぶん研究した模様。でも、三声のフーガとはいってもバッハ風ではなくて、あくまでも柔らかく健やかなハイドン風のフーガです。

続いて、ヴィオラの田中知子さんを加え、モーツァルトの弦楽五重奏曲第5番、ニ長調K.593 です。
第1楽章:ラルゲット~アレグロ~ラルゲット。チェロが問いかけ、他が答える形で始まります。チェロが、澄んだいい音です。この頃モーツァルトは、人気が低迷し、経済的にも行き詰まっていて、ハイドンのトスト四重奏曲に名前が出てくるトストの依頼で作曲したのだそうな。どうやらモーツァルトは、「音符が多い」などと文句を言われることのない依頼主の注文にこたえて、思い切り腕をふるったようです。
第2楽章:アダージョ。こんどは逆に、Vn,Vlaから始まり、チェロが簡潔に答える形で始まります。途中のチェロのピツィカートのあたり、響きがとてもきれいです。ヴィオラは1人がヴァイオリンと、1人がチェロと一緒に奏するなど、細かく工夫された響きになっています。
第3楽章:メヌエット、アレグレット。2nd-Vn と Vla 2本と Vc のピツィカートの中で奏でられる 1st-Vn が気持ちよさそう。音程を取るのは大変そうですが、いかにもモーツァルトらしい、軽やかで美しい音楽です。
第4楽章:アレグロ。印象的な 1st-Vn のフレーズ。これを Vla と Vc が迫力で繰り返すとき、対比のおもしろさに思わず「なるほど!」と納得します。円熟期のモーツァルトの工夫なのでしょう。いかにも終楽章!という緊密な音楽に、五人のメンバーは集中しています。

ここで15分の休憩です。次回、新年正月の16日に開かれる第38回定期の前売券を、早々と購入してしまいました。(んー、受付の人ならわかっちゃうかな~(^o^;)>poripori まあいいか。)



三曲目は、私の好きなシューマンの弦楽四重奏曲第3番、イ長調Op41-3 です。
第1楽章:アンダンテ・エスプレッシーヴォ~アレグロ・モルト・モデラート。ああ、シューマンだ。いいなぁ~。思わず聞き惚れました。この曲は「間」が大切なのですね。絶妙の間のとり方に、シューマンらしい、夢見るような感じが出てきます。
第2楽章:アッサイ・アジタート~L'iestesso tempo~ウン・ポコ・アダージョ~テンポ・リゾルート。何者かに追い立てられるような焦燥感、それとも不安感を感じさせます。スケルツォのようですが、途中、フーガのような部分も。アダージョのところになると、変奏も悲しげで、最後に近い激しさは、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲の研究の成果でしょうか。ゆったりしたテンポに戻り、緊張感を保ちながら静かに終わります。
第3楽章:アダージョ・モルト。ヴィオラの響きが重要な役割を果たす楽章です。1st-Vn の甘美な旋律が、いいなぁ。2nd-Vn の刻みが、なにか運命的なものの歩みのようで、ちょっとコワい。チェロのピツィカートのところもステキです。
第4楽章:フィナーレ。アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ~クワジ・トリオ。立派なシューマンの音楽です。テンポは速すぎず遅すぎず。リズムのノリは力強く、気合の入った音楽、演奏です。全曲を貫く共通したイメージが感じられます。

ああ、良かった。聴衆の皆さんの拍手も盛大です。これにこたえて、アンコールがありました。メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲第2番の第3楽章。2nd-Vn,Vla,Vc がピツィカートを刻む中、1st-Vn がどこかジプシー風・民謡風の旋律を奏します。「屋根の上のヴァイオリン弾き」の風情です。途中、Vla の細かいリードで Vn も痙攣するような速いリズムに転じます。4人の息のあった演奏が続いた後で、最初のジプシー風の主題が回帰して、洒落たエンディングです。

最後に、次回のコメンテータらしい駒込綾さんが次回の案内を話しておしまい。

次回は、1月16日(日)、17:45開場、18:30開演だそうです。曲目は、

(1) ハイドン 弦楽四重奏曲 変ロ長調 Op.50-1~プロシャ王四重奏曲~
(2) ベートーヴェン 大フーガ 変ロ長調 Op.133
(3) ドヴォルジャーク 弦楽四重奏曲第10番 変ホ長調 Op.51

とのこと。今から楽しみです。

(*):山形弦楽四重奏団ホームページ
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アフィニス音楽祭の室内楽演奏会でシューマン、プロコフィエフ等を聴く

2010年08月24日 06時05分29秒 | -室内楽
前売券を入手できず、当日券だのみで、会場の文翔館議場ホールに駆けつけました。18時30分の開場後、前売券を入手できたお客さんはどんどん入場しますが、当日券希望者はおとなしく列を作って待ちます。整理スタッフに旧知の方がいましたので、列の中からご挨拶。なんでも、前売券が180枚出ているので、当日券は50枚くらい出るんじゃないかという話でした。しめしめ、それなら入手できそうと安心し、列の中から写真撮影。



入場してびっくり。いつもの議場ホールが、最後部ばかりか両サイドにパイプ椅子まで出して対応です。当方は、なんとか正面後部に席を取ることができました。あちこちに山響や山Q関係者のお顔が見えます。本日の曲目は、

(1) モーツァルト 弦楽五重奏曲 第2番 ハ短調K.406
(2) シューマン ピアノ五重奏曲 変ホ長調 Op.44
(3) プロコフィエフ 五重奏曲 ト短調 Op.39
(4) ベートーヴェン 七重奏曲 変ホ長調 Op.20

と、多少付け合わせを考えれば、ほとんど2回分のメニュー。七重奏曲は2度目の生演奏ですが、今回どうしても聴きたかったのは、大好きなシューマンの五重奏曲とベートーヴェンの七重奏曲、そして未聴のプロコフィエフでした。

最初の曲目は、モーツァルトの五重奏曲第2番です。正面左から第1ヴァイオリン:寺井馨さん、第2ヴァイオリン:砂畑佳江さん、第1ヴィオラ:P.ペシュテイさん、第2ヴィオラ:森亜紀子さん、チェロ:馬場隆弘さんが並びます。いつもの席よりだいぶ遠いのですが、それでも200人規模の小ホールですので、演奏者の表情や息遣いがよくわかります。第3楽章のカノンが効果的です。

続いて、曲間でスタッフがピアノを移動、中央にピアノが配置されてシューマンのピアノ五重奏曲です。第1ヴァイオリン:H.ホッホシルトさん、第2ヴァイオリン:織田美貴子さん、ヴィオラ:樋口雅世さん、チェロ:大澤哲弥さん、ピアノ:V.セレブリャーニーさん。室内楽にはちょうどよいホールですね~。第3楽章:スケルツォで拍手が出ません。さすが~。学生さんから年配の人まで、お客さんは多彩な顔ぶれとなっているのですが、山形の聴衆の層は、けっこう厚いのかも。
うーん、ピアノ五重奏を満喫しました!

ここで休憩です。



後半は、プロコフィエフの五重奏曲から。ステージ左から、ヴァイオリンが米田誠一さん、ヴィオラがM.キャシーさん、コントラバスがJ.リノヴィツキさん、クラリネットが古賀嘉比古さん、そしてオーボエがK.クリユスさんです。初めて聴きますので、いま何楽章かを見失ってしまいそうになります。第1楽章:コントラバスの高域がおもしろい音色です。第2楽章:速いテンポでエネルギッシュに。コントラバスは本来の低音をここぞとばかり発揮します。第3楽章:童話的世界。コントラバスは熊の歩行みたい。第4楽章:不協和音による葬送行進曲みたいな部分も。ここでオーボエに合わせて再チューニング。第5楽章:コントラバスは、ジャズのベースみたいに、指でリズミカルなピツィカート。プロコフィエフらしい知的なお遊びにあふれた曲です。第6楽章:アンダンティーノ。このモダーンな音楽を楽しみました。

最後はベートーヴェンの七重奏曲です。ステージには、Vn:川崎洋介さん、Vla:手塚貴子さん、Vc:渡邊方子さん、Cb:小金丸章斗さん、Hrn:I.ガスさん、Fg:高橋あけみさん、Cl:原田美英子さん、が並びます。2度目の七重奏曲は、軽やかさ、はずむリズム、音色の魅力、安心感と愉悦感など、楽しいひとときでした。山響の高橋あけみさんのファゴット、響きあいながらも埋没せず、しっかりと聴き取れました。さらにヴァイオリンの川崎さん、ほんとに汗だくになりながら、いや~、実にお見事でした!

さて、本日は夕方から知人の父君の葬儀に参列の予定。残念ながら、テルサホールでの室内楽演奏会(2)には行けません。良い演奏会になりますように、そして音楽を志す若い皆さんが良い刺激を受けますように、お祈りいたします。
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山形Q第36回定期演奏会で、モーツァルト、ハイドン、バルトークを聴く

2010年07月27日 06時18分10秒 | -室内楽
土曜出勤の代休で、運良く休日となった月曜の夜、週末農業の続きを済ませ、山形市の文翔館議場ホールで、山形弦楽四重奏団第36回定期演奏会を聴きました。本日の曲目は、

1. モーツァルトの弦楽四重奏曲第11番変ホ長調K.171
2. ハイドンの弦楽四重奏曲ハ長調Op.74-1
3. バルトークの弦楽四重奏曲第1番Op.7,Sz40

というものです。アンサンブル とも's がハイドンの弟ミヒャエル・ハイドンの「ヴァイオリンとヴィオラのためのソナタ第1番」を演奏している間に会場に到着、ちょいと遠慮して入り口付近の席に腰を下ろし、演奏を聴きました。代わってプレ・コンサート・トークにヴィオラの倉田さんが登場、「モーツァルトは何の天才か?」と問いかけます。倉田さんの答えは、模倣し自分のものにする天才だ、とのこと。確かに、大バッハの息子のJ.C.バッハや先輩ハイドンなどの作品を模倣し、自分のものにしていった作曲家なのかもしれません。モーツァルトとハイドンに限らず、当時の作曲家たちは、互いに影響しあいながら対抗意識をもやし、さらに優れた作品を書こうと努めていたのでしょう。でも、ベートーヴェンの、特に後期のカルテットを知ってしまうと、ロマン派の作曲家たちは、その呪縛から逃れることはできなくなります。メンデルスゾーンは6曲、シューマンとブラームスは3曲だけ。20世紀になって、バルトークが6曲の弦楽四重奏曲を書き上げます。今日の第1番は、曲想としてはロマン派と現代曲の中間にある曲、とのこと。

山形弦楽四重奏団は、今年、結成10周年を迎えたとのこと。第1ヴァイオリンの中島光之さんは、ダークブルーのシャツを腕まくりで、第2ヴァイオリンの駒込綾さんは、ガバッと肩の開いた黒のドレスで。ヴィオラの倉田譲さんは、長袖のシャツにサスペンダー、チェロの茂木明人さんは、黒の長袖に楽器には白っぽいハンカチ、というスタイルです。


第1曲目は、モーツァルトです。少年モーツァルトの姿を彷彿とさせるような、チャーミングですが、けっこう演奏効果のある曲です。第1楽章、アダージョ~アレグロ・アッサイ。第2楽章、メヌエット。第3楽章、アンダンテ。弱音器を付けて、それまでの明るく親密な雰囲気とは一転して、ちょいと悲しげな気分が漂います。第4楽章は、弱音器を外して晴れやかにヴィヴァーチェで、フィナーレです。約20分。

第2曲目は、ハイドン、Op.74-1です。あー、やっぱり大人の音楽だな~、と感じます。快活で、聴きごたえのある作品。第1楽章、アレグロ。第2楽章、アンダンティーノ・グラツィオーソ。フレーズごとに対比するように強弱を付けて奏されるヴィオラやチェロがいい味を出します。チェロからヴィオラ、第2ヴァイオリン、第1ヴァイオリンへとエコーのように繰り返されるほのぼのとした味も、いいですね~。第3楽章、アレグロで。メヌエットのリズムに体も揺れて動き出しそう。思わず調子を取りたくなります(^o^;)>poripori
第4楽章:フィナーレ、ヴィヴァーチェ。チェロの持続する低音の響きに乗って、ヴァイオリンとヴィオラが活発に動き回ります。やがてチェロもめまぐるしく動き始め、複雑な動きが交錯して、それでもしっかりとハーモニーになっていて。見せ場が多い、聴かせどころいっぱいの作品、といった感じです。約25分くらいかな。

およそ15分間の休憩のあとは、バルトークの第1番です。
第1楽章:第1Vnに第2Vnが加わり、不思議な響きで始まります。いいなぁ!バルトークの音だ!そしてVcが入り、Vlaが続き、高弦2人と低弦2人が対照的な動きを見せます。迫力のチェロにヴィオラがこれも迫力で迫るとき、二つのヴァイオリンはひそやかに。最初のところが再現されて、四人の動きは速度を増していきます。いつの間にかアタッカで第2楽章:アレグレットに入っていました。第3楽章:アレグロ・ヴィヴァーチェ。古典派やロマン派のヴィヴァーチェとはちょいと違いまして、目玉をしっかり見開き、口をヘの字に結びながら、でもしっかりヴィヴァーチェです。モーツァルトやハイドンでは地味だったチェロが雄弁です。バルトークのリズムは実に活力に富み、青白い天才の痙攣しそうな繊細さではありません。演奏時間は、およそ30分といったところ。

ふだんCDで(小音量で)聴いているときにはそれほど感じなかったのですが、この曲では、モーツァルトやハイドンに比べて、チェロの役割がとても大きいのだな、とあらためて思いました。響きの土台だというだけでなく、エネルギー感や迫力の土台としての役割。茂木さんのチェロは、倉田さんのヴィオラと共同しながら、バルトークらしさをアピールしていたと思います。

アンコールは、ドビュッシーの弦楽四重奏曲から、第3楽章。弱音器の効果がはっきりわかります。弱音器を外してから発散してくる光の照度が何倍かに強まったように聞こえます。再び弱音器を付けて、くぐもった声のように静かに終わりました。

次回は、10月11日(月)、体育の日です。文翔館議場ホールにて18時30分開演、曲目は、生誕200年の R.シューマンの弦楽四重奏曲第3番、田中知子さんをゲストに迎えてモーツァルトの弦楽五重奏曲第5番、全曲演奏に挑むハイドンの弦楽四重奏曲は、作品20ー6、いわゆる「太陽四重奏曲」から。さっそく前売券を購入して来ました。気が早いですが、気分はもう秋を待っています(^o^)/
夏はこれからが本番なんですけどね~(^o^)/
いやいや、その前に8月4日の山形交響楽団第207回定期演奏会があります。黒岩さんを迎えて、ベートーヴェンのカンタータ「静かな海と楽しい航海」、ブラームスの「運命の歌」、ベートーヴェンの「英雄」交響曲の三曲です。
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ベートーヴェン「ピアノ三重奏曲第7番《大公》」を聴く

2010年06月13日 06時12分10秒 | -室内楽
本当にすてきないい曲ですね!
このところの通勤の音楽は、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲第7番Op.97です。「大公」トリオという愛称を持つこの曲は、若い頃からのお気に入りで、軽やかなヴァイオリンはもちろん、伸びやかに活躍するチェロの音色や、歌うようなピアノの旋律に魅せられておりました。

作品の完成が、作曲者41歳にあたる1811年だそうで、青木やよひ著『ベートーヴェンの生涯』によれば「人生の星の時間」の頃、彼の音楽の良き理解者であるベッティーナ・ブレンターノを通じてゲーテに接近し、さらに義姉アントーニア・ブレンターノ母子の知遇を得て、彼女の邸宅に日常的に迎えられていた時期です。そして、この音楽そのものからも、ベートーヴェンが一番充実し、幸福感を感じていた時期の作品であろうと思われます。

第1楽章:アレグロ・モデラート、4分の4拍子、ソナタ形式。ピアノによる出だしがなんとも魅力的で、通りすがりの人をも思わず振り向かせるような力があります。シンプルですが、堂々としていて、実に音楽的。終結部で第1主題が出てくるところなど、本当にほれぼれします。
第2楽章:チェロがリズミカルにリードし、ヴァイオリンが弾むように続くと、ピアノも入ってくるという形で始まります。三部形式をとる軽妙なスケルツォ、アレグロで。
第3楽章:アンダンテ・カンタービレ・マ・ベロ・コン・モート。ピアノで始まるこの楽章だけを取り出すと、思わず後期の曲かと思ってしまうような、深い思索的な緩徐楽章です。好きですね~、この音楽!カーステレオでは、音域的にチェロの魅力が今ひとつ表現されにくいのですが、自宅のステレオで音量を上げて聴くと、深々とした音色や旋律、リズムが、なんとも魅力的です。
第4楽章:アレグロ・モデラート。明るく活発なロンド形式の楽章です。ピアノの活躍の場が十分に用意されており、こんな素敵な曲を献呈された若いルドルフ大公も、きっと嬉しかったことでしょう。

ところで、モーツァルトと比較して、ベートーヴェンはチェロの魅力を引き出すのが上手だと感じます。いえ、別にモーツァルトが下手だという意味ではなく、モーツァルトは高音域の楽器が好きだったのかな、という意味で(^o^;)>poripori
もしかすると、モーツァルトの時代よりも楽器の進歩があったのかもしれませんが、ベートーヴェンはチェロの音色が好きだったのかな、と勝手に想像しています(^o^)/

見事に息の合った演奏は、スーク・トリオによるものです。メンバーは、ヤン・パネンカ(Pf)、ヨセフ・スーク(Vn)、ヨセフ・フッフロ(Vc)の三人です。1975年6月14~15日に、チェコのルチャニー聖母マリア協会で収録されたPCM/デジタル録音で、制作は結城亨、音楽監督はピーター・ヴォルモースとエドゥアルト・ヘルツォーク、録音技師は穴沢健明とミロスラフ・クールハンというように、日本コロムビアとスプラフォンの共同制作となっています。いわば、DENON の初期デジタル録音の代表的なものと言ってよいでしょう。LPは、DENON OX-7035-ND という正規盤、CDはDENONの My Classic Gallery という全集分売もので、GES-9247 という型番ですが、中身は同じものです。さすがにLPでは通勤の音楽にはなれません(^o^;)>poripori

■スーク・トリオ
I=12'14" II=6'00" III=11'39" IV=6'30" total=36'23"

(*):ベートーヴェン「ピアノ三重奏曲」を聴く~ 第1番第2番第3番第4番第5番第6番
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