電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山響第213回定期演奏会でボロディン、プロコフィエフ等を聴く

2011年05月14日 21時09分16秒 | -オーケストラ
平日の金曜日、山響第213回定期演奏会に出かけました。土曜日も同じ曲目で演奏会があるのですが、残念ながら近所の親戚の法事が予定されており、たぶん出かけることはできないだろうと予想し、花の金曜の夜という悪コンディションをものともせず、山形市のテルサホールへと、愛車 TIIDA Latio を走らせました。なんとか辛うじて開演前に滑り込んだものの、恒例の飯森範親音楽監督によるプレ・コンサート・トークは終わりそうな頃でした。会場に入る前にPAで聞こえたのを総合すると、どうやら本日の曲目を紹介していたみたい。残念ながら、詳細は不明です。

ステージ上の楽器配置は、今回は対向配置ではなくて、通常の、左から1st-Vn、2nd-Vn、Vc、Vla、その右手奥にCb、正面後方に木管で、ピッコロ、Fl(2)、Ob(2)のうち1本はコールアングレ、さらにその後方にCl(2)とFg(2)、奥に金管が二列に並び、Hrn(4)、Tp(2)、Tb(3)、Tubaとなっています。左手奥にはHrpとパーカッション、ティンパニという具合です。

金曜夜という条件のせいか、お客さんの入りはいつもよりも少なく、あまり良好とは言えません。最前列から3列ほど空いており、サイドも何列か空いています。たぶん日曜のマチネはうまるのでしょうが、かなりもったいない感じです。



本日の曲目は、

(1) ボロディン 歌劇「イーゴリ公」より「だったんの娘たちの踊り」「だったん人の踊り」
(2) プロコフィエフ ヴァイオリン協奏曲第1番 ニ長調 Op.19
(3) グリンカ 歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
(4) ストラヴィンスキー 3楽章の交響曲
 演奏:シュロモ・ミンツ(Vn)、飯森範親指揮山形交響楽団

というものです。

第1曲め、ボロディンです。ふだんからよく耳にしている曲ですが、ティンパニとバスドラムが一緒に叩いている、それであの迫力が出るのだな、と実感します。ヴァイオリンがリズミックに弓で弦を打つように奏するとき、チェロとヴィオラがピツィカート。リズムの力でしょうが、思わず興奮する音楽です。それでも、どことなく上品なのは、作曲家が生まれ育った環境のせいでしょうか。

続いて、待望のプロコフィエフの協奏曲第1番です。
私はこの曲が大好きですので、定期演奏会に取り上げられるだけでもうれしいのに、独奏者がシュロモ・ミンツ氏というビッグネームです。今シーズンの曲目が発表された時から、ワクワクして待っておりました。

楽器編成は、フルート(2)ただし1本はピッコロ持ち替え、オーボエ(2)、ファゴット(2)、ホルン(4)、トランペット(2)、チューバ、ティンパニ、小太鼓、タンバリン、ハープに弦五部というところでしょうか。

第1楽章:アンダンティーノ。ヴァイオリンのトレモロのゆらぎの中で、ソロ・ヴァイオリンの繊細な美音が立ち上がり、フルートが寄り添います。シュロモ・ミンツさん、何気なく直立して楽器を横に掲げてますが、膝はやわらかく使っています。この曲を最初に知ったアイザック・スターンの演奏でも感じましたが、「屋根の上のヴァイオリン奏き」みたいな、ジプシー風な旋律まわしが印象的です。フルートの透明な響き、ヴィオラのゆらぎの中でヴァイオリンが繊細で細やかな音を奏で、ハープがひそやかに鳴らされると、いつのまにかオーボエとピッコロに移っています。思わずため息の美しさです。
第2楽章:スケルツォ。急速なテンポで、ソロもオーケストラも、ものすごい技巧的な楽章です。でも、思わず聞き惚れてしまいました。
第3楽章:モデラート~アレグロ・モデラート。再び叙情的な旋律です。美しい響きの中には、そっとクラリネットが入っていたのですね。そして、背後では低い音域でファゴットがリズムを支えているのが、実に効果的です。隠し味のハープも効いていますし、チューバの迫力も。それにしても、ソロ・ヴァイオリンの音の美しさ、技巧の自然さ、的確さ。指揮者が指揮棒を下ろした後、思わずため息がでるような間が、ホールをうめていました。なんと素晴らしい音楽を聴いたものかと、拍手する手が痛い。あの聴衆の人数から、こんな拍手になるのかと思うほどでした。大好きな曲だけに、もう大満足です。

拍手に応えて、ミンツさん、アンコールを1曲。



クライスラーの「レチタティーヴォとスケルツォ」です。これも唖然、呆然!なんとも見事な、幸福な時間でした。

休憩の間に、ステージにはハープとパーカッションの位置に、ピアノがセットされました。それと、ファゴットのわきに、見慣れぬ楽器も。もしかして、コントラファゴット?

後半の始まりは、グリンカの歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲です。かなり速いテンポで演奏されますので、疾走感というのか、スピードの快感です。
今回気づきましたが、退団された牧さんのかわりに、若いクラリネット奏者が座っています。パンフレットでお名前を調べたら、川上一道さんという方らしい。山響での活躍が楽しみです。

さて、最後の曲目はストラヴィンスキーの「三楽章の交響曲」です。当方、あまりなじみのない曲です。演奏時間が20分余りのようですが、それにしては楽器編成もだいぶ増強されます。ピッコロ、フルート(2)、オーボエ(2)、クラリネット(2)、バスクラリネット、ファゴット(2)、コントラファゴット、ホルン(4)、トランペット(3)、トロンボーン(3)、チューバ、ティンパニ、ピアノ、ハープ、バスドラム、弦五部、というものです。

第1楽章:ピアノを打楽器のように扱う、リズムの面白い、活発な音楽です。「春の祭典」でもそうですが、ストラヴィンスキーはファゴットの使い方がうまいと感じます。
第2楽章:アンダンテ。弦のピツィカートの中に、フルートやクラリネットの短いフレーズ。ハープも入って、響きも重くならずに、わりに古典的なスタイルの音楽になっています。連続して第3楽章へ。
第3楽章:コンモート。やっぱり、高橋あけみさんと鷲尾さんのファゴットがすごくいいなあ~。昨夜の酒席の疲れが出ても、ティンパニの一撃や金管の咆哮が眠気を吹き飛ばします。トロンボーンとピアノの掛け合いなんて、面白い音の組み合わせです。それがハープとピアノになり、バスクラが入ってきたり、なんとも面白い音楽です。いい経験をしました。



演奏が終わって、ファン交流会がありました。ミンツさんのインタビューがたいへん興味深かった。
多くの演奏家がキャンセルされる中で、よく東北へ、山形へ来てくださいました、という挨拶に答えて、「それが人間としてやるべきことだと思った」とのこと。うーむ。
最高の演奏家や最高のオーケストラというのはありえない。音楽はそこで生まれるものであって、常に最高ではありえないものだと言います。また、自分にとって音楽とは、届かない真実への追求であり、聴衆は演奏家がそれを追求する過程を共有するものだ、とも。
たいへん厳しくかつ誠実な応答と感じました。



並んでいたCDの中から、フランクとドビュッシーとラヴェルのソナタの録音を購入し、ミンツさんにサインをお願いしました。"What's your name?" と聞かれましたので、名前を答えると、For narkejp(本当は名前), Mintz とサインしてくれました。やったね!
(ブロークンな英語で)プロコフィエフはとても美しかった、幸福な時間を過ごしました、ありがとう、と感謝を伝えて来ました。宝物のCDがまた増えました(^o^)/

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4 コメント

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素晴らしかったですね! (うに・木島由美子)
2011-05-15 11:29:21
ミンツ氏のViolin、素晴らしかったですね!誠実なお人柄を映したように、完全に音楽を自分のものにした演奏にシビれました。
Clarinet・川上さんの音が良く溶けて、木管セクションの音色までも変わったような印象がありました。これからも注目ですね。
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うに・木島由美子 さん、 (narkejp)
2011-05-15 23:09:45
コメントありがとうございます。素晴らしい演奏でしたね。若い川上さんの活躍を期待したいものです。
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TBさせていただきます (balaine)
2011-05-17 09:03:22
コメントとTBありがとうございます。本記事からミンツ氏の発言などを拝借致しました。(^^;;;
ミンツ氏のような人を真の意味での巨匠というのでしょうか。段位などを超越した真の武道家のような印象をうけました。
こちらからもTB致しますのでよろしくお願いします。
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balaine さん、 (narkejp)
2011-05-17 20:58:40
コメント、トラックバックをありがとうございます。ミンツ氏の発言も記憶に頼って書いているものですから、一字一句正確とは言い難いのですが、まあ大体そんな趣旨でした(^o^;)>poripori
非常に論理的な学者、とくに哲学者のような印象を受けました。先生としては、非常に厳しいタイプかもしれませんね(^o^)/
でも、あの音楽は素晴らしいです!
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