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電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

土曜の夜は山形弦楽四重奏団第45回定期演奏会へ

2012年10月13日 06時02分43秒 | -室内楽
週末の土曜日に、ようやくたどりついた、という気がします。
今日は、山形弦楽四重奏団の第45回定期演奏会の予定です。今回のプログラムは、

(1) W.A.モーツァルト 弦楽四重奏曲第15番 ニ短調 K.421(417b)
(2) 幸松肇 弦楽四重奏のための4つの日本民謡第3番
   ~箱根八里・佐渡おけさ・鹿児島おはら節・最上川舟唄~
(3) F.J.ハイドン 弦楽四重奏曲 変ロ長調 Op.71-1

というもの。私としては、幸松肇さんの「弦楽四重奏のための4つの日本民謡第3番」がまず期待大ですし、全曲演奏を目指すハイドンと、モーツァルトのニ短調も楽しみです。
会場は、山形市の文翔館議場ホール、開場/18:00 開演/18:45~
そして 18:15 より、◆プレ・コンサート◆ として、齋藤真美さん(Ob)&田中知子さん(Vla) の演奏も予定されているとのこと。



また、偶然にも山形県立博物館の特別展「出羽国成立1300年」公開初日に当たっているようです。せっかくですので、なんとか某行事を無事に済ませて、できればこの展示も観てみたいものです。

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村山市の東沢バラ公園で山形弦楽四重奏団の演奏会を聴く

2012年10月01日 06時03分59秒 | -室内楽
台風の影響で気温が上昇した日曜日、午前中に自宅から少し離れた場所にあるサクランボ等の果樹園の草刈りと肥料散布を行いました。本当は、九月中旬に実施したいところですが、天候やら体調やら諸般の事情で遅れてしまいました。それでも、なんとか午前中に切り上げ、シャワーを浴びてさっぱりして、午後からは村山市の東沢バラ公園へ。恒例の山形弦楽四重奏団の演奏会です。いつものログハウスの交流館には、すでに大勢のお客様が思い思いのスタイルで陣取っていました。





今回の演奏会では、フォーマルな燕尾服スタイルではなくて、例によってカジュアルないでたちです。第一ヴァイオリンの中島光之さんは、グレーのシャツに黒っぽいプリントのネクタイ、第二ヴァイオリンの今井東子(はるこ)さんは、青いワンピースドレスというのでしょうか、気温の上昇を予想したようないでたちです。ヴィオラの倉田譲さんはいつものように黒いシャツで、チェロの茂木明人さんは、首まわりと手首に白いラインの入った黒いシャツに、チェロにはハンカチかバンダナを巻いています。そういえば、メンバーが今井さんに変わってから、東沢バラ公園での演奏会は初めてかもしれません。今回のトークは、その今井東子さんです。

(1) まず、J.S.バッハの「G線上のアリア」から。おなじみの旋律で、聴衆は弦楽四重奏の響きにぐいっと引き込まれます。
(2) 続いて、ハイドンの弦楽四重奏曲第41番「ご機嫌いかが」ですが、こちらは一工夫ありました。第2楽章の冒頭を、まず第1ヴァイオリンだけで演奏し、次に同じフレーズをチェロを加えて演奏し、さらにヴィオラを加え、最後に第2ヴァイオリンも加わった完全な形で演奏してみせて、カルテットの音やアンサンブルといったものを実感する、という趣向です。これは、私にもとてもわかりやすく、良かったです~(^o^)/
聴衆の皆さんが、カルテットのそれぞれの役割を理解した後で、ハイドンの全曲を演奏しました。やっぱりハイドンはよろしいですなあ。
(3) チャイコフスキーの弦楽四重奏曲第1番より、「アンダンテ・カンタービレ」。トルストイが感激したというエピソードもさることながら、これはもう、チャイコフスキー節全開です(^o^)/
(4) 続いて、幸松肇「弦楽四重奏のための日本民謡」シリーズから東北民謡を選び、「さんさ時雨(宮城)」「会津磐梯山(福島)」「南部牛追唄(岩手)」「最上川舟唄(山形)」の四曲です。なじみの旋律だけに、年配の方々も楽しそうです。演奏面では、ハイドンでは低音部でリズムを刻む場面が多く持ち味を十分に発揮したとは言えないチェロとヴィオラが十二分に活躍しました。とくに「最上川舟唄」では、チェロと二丁のヴァイオリンが指でリズムを刻む中で、ヴィオラが歌い出します。あそこはほんとに見せ場で、かっこいいです。
(5) 続いて、ポピュラーな曲の編曲ものを。恒例になった「百万本のバラ」「小さい秋」「情熱大陸のテーマ」、最後にアンコールで「赤とんぼ」。「百万本のバラ」では、なんだかずいぶん懐かしいような気分になりました。ちょうど、昭和の時代に流行った歌声喫茶に、平成の今、ふらりと迷い込んだような感覚です。

今井さんのお話は、私は二度めかと思います。ちょいと緊張が感じられますが、知的で簡潔で、好感が持てます。「山形弦楽四重奏団は、来月10月13日(土)の18時45分から、山形市の文翔館で、定期演奏会を開く予定ですので、よろしければおいでください」と案内があって、演奏会はお開きとなりました。は~い、10月13日(土)、山形弦楽四重奏団第45回定期演奏会、行ける予定ですっ!

















東沢バラ公園は、干ばつの影響でしょうか、花のつき方が例年よりも少ないように感じました。でも、音楽をじゅうぶんに楽しみ、バラのソフトクリーム(280円)を食べて、園内を散歩して帰りました。良い一日でした。

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村山市の東沢バラ公園での弦楽四重奏を楽しみに

2012年09月22日 06時03分43秒 | -室内楽
今月末、9月30日の日曜日、村山市にある東沢バラ公園で、山形弦楽四重奏団の演奏会(*1)が開かれます。およそ一時間のミニコンサートですが、この時期になると楽しみにしている演奏会(*2~*4)の一つです。園内いっぱいに咲いている秋咲きのバラを見ながら散歩をして、ログハウスで音楽を聴き、バラのソフトクリームやピロシキを食べ、その後はお昼に村山市そば街道でそばを食べる、というのが定番のコースになっています。

久しぶりのような気がしますが、なんとか都合をつけて行ってみたいものです。料金は、バラ公園の入園料のみだったはず。たしか、大人400円、子供200円ではなかったかな。数百円で午前・午後の半日は確実に楽しめる、村山市商工文化観光課・同市観光物産協会の粋な企画です。

(*1):秋のバラまつり2012~村山市商工文化観光課・村山市観光物産協会
(*2):今年もバラ公園で弦楽四重奏を聴く~「電網郊外散歩道」2009年9月
(*3):バラ公園で今年も弦楽四重奏~「電網郊外散歩道」2008年9月
(*4):バラ園と弦楽四重奏~「電網郊外散歩道」2007年9月

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シェーネスハイムでフルートの演奏会を聴く

2012年08月11日 13時58分37秒 | -室内楽
山形県の最北端の町、金山町にあるシェーネスハイムで、近年毎年開催されているという演奏会「森の演奏会」に出かけました。「森の演奏会」といっても、別に森の中で演奏会を開くわけではなく、むしろホテルのレストランで、バイキング料理を食べた後でゆっくりと演奏を聴く、という趣向です。今回は初めての参加でしたが、なかなか楽しい演奏会でした。

プログラムは、次のようなものです。

(1) アンダーソン 「ザ・ペニーホイッスルソング」
(2) 成田為三 「浜辺の歌」
(3) チャイコフスキー 組曲「くるみ割人形」より
 「あし笛の踊り」、「花のワルツ」
~休憩~
ウォルト・ディズニー作品
(4) 「ミッキーマウス・クラブ」より「ミッキーマウス・マーチ」
(5) 「わんわん物語」より「ララルー」
(6) 「メリー・ポピンズ」より「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」
(7) 「ピノキオ」より「星に願いを」

(8) ショッカー 「2本のフルートのための3つのダンス」
  I:イージーゴーイング、II:ムーディ、III:コーヒーナーバス、プレスティッシモ

フルート:阿部太彦、菅紀子、ピアノ:田中ふみ子

聴衆との距離が非常に近いので、「浜辺の歌」では客席から数人に効果音係になってもらったり、ディズニー作品ではバグパイプにおもちゃを仕込んだり、フルートの阿部さん、なかなか楽しい趣向です。個人的には、最後のショッカーの三曲がとても良かった。ショッカーと言えば、某子ども向け特撮番組の悪役の名前ですが、もちろんそれではありません。現代のフルート奏者であり作曲家だそうです。曲は、難解な「ゲンダイオンガク」ではなくて、現代的なスピード感とリズム感に富む音楽と感じました。

今回は、妻の慰労のために宿泊としましたので、生ビールを飲んで温泉に入って、ゆっくり休みました。残念ながら、山の中のためにネット環境がなくて、定例の早朝更新はできませんでしたが、ロケーション、部屋、料金も含めて、好感の持てる宿泊地でした。
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テレマン「6つの四重奏曲《1730年ハンブルク版》」を聴く

2012年08月05日 06時03分25秒 | -室内楽
テレマンという作曲家は、生前は大バッハをしのぐ人気と尊敬を受けていたらしいのですが、今やその立場はすっかり逆転し、わずかに「食卓の音楽」という王侯貴族のための背景音楽をたくさん書いた職人的音楽家というイメージです。ところが、実際にテレマンの音楽を聴いてみると、音楽の多彩な楽しさ、愉悦感といったものを感じます。この「6つの四重奏曲《1730年ハンブルク版》」は、最初に出版されたテレマンの四重奏曲集だそうですが、同様に多彩な魅力を持った音楽です。

題名の「6つの四重奏曲」というのは、コンチェルトを二曲、ソナタを二曲、そして組曲を二曲、合計で六曲というものです。もちろん、コンチェルトといってもオーケストラと独奏楽器によるものではありません。ソロとアンサンブルの対比は、あくまでも四人の奏者による室内楽の範囲内のもので、このCD(DENON COCO-70523)では有田正広のフラウト・トラヴェルソ、寺神戸亮のバロック・ヴァイオリン、上村かおりのヴィオラ・ダ・ガンバ、クリストフ・ルセのチェンバロの四重奏となっています。

第1番:コンチェルト 第1番ト長調 3楽章
第2番:コンチェルト 第2番ニ長調 3楽章
第3番:ソナタ 第1番イ長調 4楽章
第4番:ソナタ 第2番ト短調 4楽章
第5番:組曲 第1番ホ短調 6曲
第6番:組曲 第2番ロ短調 5曲

ゆったりと始まるコンチェルト第1番と軽快で表情豊かなコンチェルト第2番のように、演奏は明解な対比を示します。音色は親しみやすく自然なものですが、たぶん技術的には高度なものを要求されるのでしょう。添付のリーフレットには、本作品が1736年にはパリでも出版されて評判となり、パリの音楽家たちに招かれて生涯ただ一度のパリ旅行を行う際の成果がパリ四重奏曲集(*1)である、という事情が記載されています。

1995年8月、フランスのカストル近郊にあるサント・イボリット教会でのデジタル録音は、たいへん自然な優れたものです。Ariare原盤による本CDはDENONのクレスト1000シリーズ中の1枚で、古楽の名手たちの演奏は魅力的です。

ところで、コンチェルトは3楽章、ソナタは4楽章、組曲は、第2番のほうは5楽章というか5曲から成っているけれど、ふつうは6つの舞曲からなる、いわば6楽章。3,4,6の最小公倍数は12です。以前、なぜ12曲?という疑問を記事にした(*2)ことがありますが、ここでも登場する不思議な数字12。たいへん興味深いものです。

(*1):テレマン「パリ四重奏曲」を聴く~「電網郊外散歩道」2012年6月
(*2):1ダースなら安くなるってもんじゃない~「電網郊外散歩道」2005年9月
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ハイドン「弦楽四重奏曲第65番(Op.64-3)」を聴く

2012年07月14日 06時01分06秒 | -室内楽
通勤の音楽として、ハイドンの弦楽四重奏曲第65番変ロ長調(Op.64-3)をしばらく聴いた後も、自宅でパソコンに取り込み、ブログ等の閲覧時などに流しておりました。エステルハージ侯爵家の楽団にいたヴァイオリン奏者、ヨハン・トストが楽長ハイドンに依頼して作られたという第3トスト四重奏曲6曲の中でも、まことに明るい曲調の作品で、いかにもハイドンらしい音楽です。演奏はコダーイ・クヮルテットで、1992年4月にブダペストのユニタリアン教会で収録された、NAXOS のデジタル録音(8.550673)です。

この曲について、CDに添付のリーフレットには、次のような解説がありました。

The lively first movement of the third quartet, in B flat major, has a principal subject followed by an insistent repeated rhythm introduced by the cello and at once taken up by the other instruments. The E flat major slow movement has a central section in E flat minor, followed by the return of the opening section in varied form. The repeated Minuet frames a Trio with unusual syncopation and the succeeding Finale again demonstrates the infinite variety of which Haydn is capable, within the restrictions of the established form.

だいぶ怪しいのですが、例によって超訳してみました(^o^;)>poripori

第3番目の弦楽四重奏曲の、変ロ長調の生き生きとした第1楽章では、主要主題がチェロとすぐに他の楽器により開始される執拗に繰り返されるリズムに続きます。変ホ長調の緩徐楽章には、様々な形で初めの節にもどり後に続く、変ロ長調の中心的な節があります。メヌエットは、風変わりなシンコペーションを伴ってトリオ部に進み、続くフィナーレでは、ハイドンが確立した様式の制限の中で可能な、無限の多様性を再現してくれます。

うーむ。なんだかわかったようなわからないような(^o^;)>poripori
section って、楽譜上でも「節」で良かったのだろうか?このあたり、素人音楽愛好家には手も足も出ません。やっぱり自分で聴くに限ります。

第1楽章:ヴィヴァーチェ・アッサイ。f と p が交代する主題の後に、なんとも楽しい反復するリズムが続きます。いかにもカルテットらしい見せ場(聴かせどころ?)がたっぷりあって、思わず体を動かしながら聴いてしまう音楽です。
第2楽章:アダージョ。mezza voce で始まる緩徐楽章です。この指定は、「声量を落とし、やわらげた声で」という意味だそうです。なるほど、途中に効果的な転調をはさみながら、そっと優しく歌われる音楽になっています。
第3楽章:メヌエット、アレグレット。あくまでも優雅な音楽。擦弦楽器なのに、ギターかマンドリンのように短めに奏されるのが特徴的です。
第4楽章:アレグロ・コン・スピリト。第1ヴァイオリンの動きが目立って活発となりますが、たとえば G.P.(たぶん全休止) のあとの dolce の指定のあたりからのように、第2ヴァイオリン~ヴィオラ~チェロも緊密なアンサンブルを展開し、フィナーレとなります。このあたりは、弦楽四重奏の楽しさです。



ハイドンの弦楽四重奏曲は、調べながら記事にするのはなかなかたいへんですが、それだけに楽しみも深まるようです。大人の音楽のように感じます。

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サン=サーンス「七重奏曲」を聴く

2012年06月30日 06時05分10秒 | -室内楽
ここしばらく、通勤の音楽として、アンドレ・プレヴィンのピアノを中心とするフランス近代の室内楽のCDを聴いていました。プーランクの「ピアノと管楽器のための六重奏曲」、ミヨーの演奏会用組曲「世界の創造」の室内楽版、そしてサン=サーンスの「七重奏曲変ホ長調Op.65」の三曲です。プーランクの新鮮な響きも、ミヨーのジャズ風の音楽も気に入ったのですが、とりわけサン=サーンスの「七重奏曲」の充実した音楽が気に入りました。CDは、BMG BVCC-38489 という型番で、RCA Red Seal というマークの入ったもので、1993年5月にニューヨークのマンハッタン・センター・スタジオで収録されたデジタル録音です。

1921年に没する直前に、老作曲家サン=サーンスが公開の場で演奏した最後の曲目が、この「七重奏曲」だったそうです。偶然にしても、晩年のお気に入り、自信作だったのでしょう。ピアノにトランペット、第1及び第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロにコントラバスが加わるという変わった編成で、湿っぽい暗さは少なく、しゃれたセンスを感じさせる、充実した音楽です。

第1楽章:Preamble, アレグロ・モデラート。力強く、堂々たる開始です。思わずベートーヴェンの「運命」を思わせるフレーズや、バッハ風のところがあったりして、なかなか興味深い音楽です。トランペットが吹き鳴らされて終わります。
第2楽章:Menuet, テンポ・ディ・メヌエット・モデラート。前の楽章に続き、トランペットが活躍して始まります。弦とトランペットがハーモニーを奏でるところ、実に雰囲気がよろしいです。
第3楽章:Intermede, アンダンテ。やや悲しげな音楽で始まります。途中のトランペットと弦のユニゾンは、ヴァイオリンも管楽器だったかと疑うほど、あるいはトランペットも弦楽器だったかと疑うほどの同質性を示し、思わずビックリです。もしかして、ミュートをかけているのかな?
第4楽章:Gavotte et Finale, アレグロ・ノン・トロッポ。軽やかなリズムに乗って、実に楽しい音楽です。トランペットも晴れやかに、ピアノも縦横無尽に活躍します。それにしても、この楽章はいいなあ。充実した音楽を聴いて、しかも楽しい。

演奏は、アンドレ・プレヴィン(Pf)、トーマス・スティーヴンス(Tp)、ジュリー・ローゼンフェルト(1st-Vn)、アニ・カヴァフィアン(2nd-Vn)、トビー・ホフマン(Vc)、カーター・ブレイ(Vc)、ジャック・クロヴィッチ(Cb)という顔ぶれです。

サン=サーンスの音楽というと、ヴァイオリン協奏曲とかオルガン付きの第3交響曲とか、「動物の謝肉祭」にとどまらない作品の世界があるのでしょうが、室内楽はつい後回しになっておりました。ましてや、Pf,Hrn,弦のカルテットにCbという変わった編成の曲です。それが間違いでした。こんなに楽しい音楽があったとは!長年音楽を聴いてきましたが、アンドレ・プレヴィンに感謝しなければいけません(^o^)/

■プレヴィン盤
I=3'51" II=4'06" III=4'51" IV=3'30" total=16'20"
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ハイドン「弦楽四重奏曲第64番(Op.64-2)」を聴く

2012年06月23日 07時07分39秒 | -室内楽
しばらく通勤の音楽で聴いていたハイドンの弦楽四重奏曲第64番ロ短調(Op.64-2)を、自宅のPCにUSB経由で接続したミニコンポにて、自作の12cmのフルレンジ・スピーカで聴きました。室内楽は、とくに大きな音量でなくても充分に楽しむことができますが、とくに小口径フルレンジでは、定位感がすっきりしていて、たいへん気持ちよく聴くことができます。そんなわけで、お気に入りの第64番があらためて新鮮に聞こえます。



第1楽章:アレグロ・スピリトゥオーソ。
第2楽章:アダージョ・マ・ノン・トロッポ。
第3楽章:メヌエット、アレグレット。
第4楽章:フィナーレ、プレスト。

ロ短調という調になっていますが、曲全体としては湿っぽくはありません。むしろ、ハイドンの音楽としては明暗を比較的くっきり描き分けたほうで、陰影に富む曲想が印象的です。演奏はコダーイ・クヮルテットで、CD は Naxos の 8.550673 というもの。添付のリーフレットには、こんなふうに記載されています。

The first violin opens the second quartet, Opus 64, No.2, in an apparent D major, before the third bar establishes the key of B minor in a movement of deep feeling. The second movement Adagio is in B major, its effect enhanced by the accompanying patterns provided by the second violin and cello. The minuet and Trio in B minor and B major respectively, lead to a lively Finale, with an unexpected ending, as the violins ascend to the heights.

例によって超訳してみると、こんな感じでしょうか。

第1ヴァイオリンが、作品64の2にあたる2番目の四重奏曲を、三つ目の縦線が深い感情の楽章をロ短調に確立する前に、ニ長調ふうに開始します。第2楽章アダージョはロ長調で、その効果は第2ヴァイオリンとチェロが一緒に奏されることにより、増強されます。ロ短調およびロ長調のメヌエットとトリオは、いきいきとしたフィナーレに導かれ、ヴァイオリンが高音に上昇するうちに予期せぬ終結を見せます。

なるほど。音楽を聴きながら訳していると、感じはつかめますが、bar が難しかった。棒?はて?思わず考え込みましたが、ホーンビーの英英辞典には、4番目の意味として、

[music] a downward line on written music, deviding it into parts

とありました。ああ、なるほど、縦線のことね、と納得しました。さすがです。ネット上で提供されている辞書では、こんな訳語は出てきませんでした。これだから紙の辞書も捨てられません(^o^;)>poripori
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ハイドンの弦楽四重奏曲第63番(Op.64-1)を聴く

2012年06月17日 06時18分57秒 | -室内楽
このところ、通勤の音楽にハイドンの弦楽四重奏曲を聴いております。梅雨に入ったとはいうものの、さいわいにまだジメジメした気候にはほど遠い日が続いておりましたので、さわやかな音楽を楽しむことができました。聴いていたのは、コダーイ・クヮルテットによるナクソス盤で、六曲の第三トスト四重奏曲を2枚のCDに分けたうちの第1集で、第63番から第65番までの三曲を収録しています。カーステレオでエンドレスに流していると、それぞれの曲の個性が少しずつわかってきて、なかなかおもしろい。基本的に晴朗で自然体で、危うさの要素はごく少ない音楽です。湿っぽくないロ短調の第64番も好みですが、まずは第1曲目のハ長調Op.64-1から。

第1楽章:アレグロ・モデラート。
第2楽章:メヌエット:アレグレット・マ・ノン・トロッポ。
第3楽章:アレグレット・スケルツァンド。
第4楽章:フィナーレ、プレスト。

作品64は、作曲者58歳の1790年に作曲されたもので、出版されたのは翌1791年、ウィーンで、あるいは英語版がロンドンで、それぞれ刊行されたそうです。モーツァルトとザルツブルグの大司教との関係を思えば、ハイドンとエステルハージ候の関係は興味深いものがあります。雇い主が、従業員が楽譜を出版し収入を得るという副業を認めていたのですから、かなり理解のある人と言えましょう。還暦間近なハイドンもまた、自由な身分に憧れながらも、こうした境遇の価値を十分に認識していたものと思われます。

そういう見方をするならば、ハイドンの音楽には、エステルハージ候の好みやあり方が、かなり反映していそうです。ハイドンも、若い頃には疾風怒濤の年代の激しい要素を持っていたのでしょうが、もしかするとエステルハージ候の好みに合わせ、晴朗で自然体なスタイルをとったのかもしれません。なんとなく、生まれながらの上流階級という品のよさを感じさせるところがあります。

■コダーイ・クヮルテット (Naxos:8.550673)
I=7'08" II=4'38" III=4'15" IV=3'41" total=19'42"

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テレマン「パリ四重奏曲」を聴く

2012年06月02日 06時01分08秒 | -室内楽
生前には、大バッハの知名度はテレマンのそれに遠く及ばないものであったそうです。どんなふうにバッハ復興が行われたかも興味深いものではありますが、それにしてもテレマンの音楽がどんなものだったのか、当方はあまりよく知りません。このブログでも、「無伴奏フルートのための12の幻想曲」(*1)や、「ヴィオラ協奏曲」(*2)などについて、書いたことがある程度です。

そんなわけで、季節も良し、テレマンの「パリ四重奏曲」全六曲を、通勤の音楽として繰り返し聴いておりました。演奏は、有田正広のフラウト・トラヴェルソとトウキョウ・バロック・トリオ、すなわち寺神門亮(バロック・ヴァイオリン)、上村かおり(ヴィオラ・ダ・ガンバ)、クリストフ・ルセ(チェンバロ)の四人。CDは DENON COCO-70521-2 という2枚組で、1992年8月にパリのコンセルヴァトワールで収録されたデジタル録音です。

Disc-1
(1) 四重奏曲第1番 ニ長調
(2) 四重奏曲第2番 イ短調
(3) 四重奏曲第3番 ト長調
Disc-2
(4) 四重奏曲第4番 ロ短調
(5) 四重奏曲第5番 イ長調
(6) 四重奏曲第6番 ホ短調

全六曲は、長調の曲と短調の曲とが同数含まれます。第3番が7曲からなるほかはみな6曲ずつで構成されており、組曲のスタイルをとっています。どれも数分程度の曲の集まりですが、いずれも魅力的な音楽、演奏で、ほぼ一週間の通勤の間、楽しく聴き続けることができました。



古楽器による、いわゆるピリオド・スタイルの演奏は、たいそう生き生きと活気があります。一昔前の重厚な演奏スタイルでは、たぶんこういう音楽は生き生きとは聞こえないのだろうと思います。ハンブルクに居を構えたテレマンは、生涯にただ一度、外国旅行をしたのだそうで、それがパリ旅行だったのだそうな。この曲集は、予約者名簿にJ.S.バッハの名前もあり、パリではたいへん人気があったとのことで、なるほどと納得です。

(*1):テレマン「無伴奏フルートのための12の幻想曲」を聴く~「電網郊外散歩道」2011年8月
(*2):テレマン「ヴィオラ協奏曲」を聴く~「電網郊外散歩道」2011年9月
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山形弦楽四重奏団第43回定期演奏会で林光、壺井一歩、シューベルトを聴く

2012年04月29日 10時13分45秒 | -室内楽
早朝からタイトなスケジュールとなった土曜日、高速を下りたのが18時20分頃で、これは間に合わないかと思ったら、文翔館の旧県会議事堂ホールになんとか開演前に滑り込むことができました。



今夜のプレトークは、いつもの黒いシャツで、ヴィオラの倉田譲さん。ダンディな風貌からは意外でしたが、時代劇映画が好きだったのだとか。その音楽を通じて、黛敏郎や武満徹や伊福部昭などの日本人作曲家に興味を持つようになったのだそうです。今回の林光さんとの関わりは、山形市の合唱団「じゃがいも」の演奏会で、何度か林光さんに委嘱した作品を演奏する機会があり、一緒に演奏したりしたのだそうです。今回の訃報で、全曲演奏を目指すハイドンを一回お休みしても、林光作曲の弦楽四重奏曲を取り上げたかった、ということのようでした。

もう一つの日本人作曲家の作品、「弦楽四重奏曲第2番」の作曲者である壺井一歩さんが来場されていましたので、倉田さんがインタビューする形でお話を聞きました。日本人作品については、学生時代に作曲を志し、日本人作曲家の作品ばかり聴いていたので、とくに偏見や抵抗はないとのこと。林光さんの作品も、その頃に聴いていたそうです。今回の「弦楽四重奏曲第2番」については、第1番とは違う曲を書こうと思った、とのことで、これはものを創る人間としての思いだ、と説明されていました。なるほど、自然科学者が something new を求めて研究するのにも通じる、普遍的な感情かもしれません。

本日の曲目は、

(1) 林光 弦楽四重奏曲「レゲンデ」
(2) 壺井一歩 弦楽四重奏曲第2番
(3) シューベルト 弦楽四重奏曲第13番 イ短調 D.804 「ロザムンデ」

となっています。なんともマニアックの極みとも言える、しかしこの機会を逃せば次はいつどこで聴けるのだろうかという、実に貴重な体験です。これが地元山形でナマで聴けるというのですから、素人音楽愛好家でミーハー室内楽ファンといたしましては、「どうして聴かずにいられようか、いや、ない。」という世界です。
お客様の数は、さすがにいつもよりも少なめですが、人口二十万と少し、周辺人口を合わせても数十万しかいない地方都市で、連休の初日の夜に開催する室内楽演奏会、しかもこのマニアックなプログラムとしては、実に驚異的な入場者数と言ってよいでしょう(^o^)/

しばらくして、山形弦楽四重奏団が登場します。略式服の上下にワイシャツ、明るいグレー?のネクタイの中島光之さんが1st-Vn、こげ茶色のノースリーブに黒のロングスカートの今井東子さんが2nd-Vn、いつも黒っぽいいでたちですがご本人はぜんぜんダークではない、Vla の倉田譲さん、そして先ごろ奥様が女児を出産され、一児の父となったばかりの、チェロの茂木明人さんは、明るいグレー?のシャツにネクタイといういでたちです。

さて、演奏会が始まります。

■林光 弦楽四重奏曲「レゲンド」
第1楽章:FANTASIA チェロから始まり、2nd-VnとVlaが続き、1st-Vnが入ってきます。チェロとヴァイオリンのやりとりにヴィオラも独自に絡み、不協和音の中に、強い緊張感があります。チェロがすごくいい役回りをしています。
第2楽章:SCHERZO 明るくはないが暗くもない、諧謔的な、という意味で、たしかにスケルツォ風かも。チェロのすごいソロで終わります。
第3楽章:In memoriam 1989.6.4 四本の弦楽器のピツィカート合戦で始まります。軽機関銃の乾いた銃声?某国の某広場における銃声でしょうか。チェロのソロは、強い訴える力を感じさせ、2nd-VnとVcとVlaの中に入ってくる、弱音器を付けた第1ヴァイオリンの旋律は、嘆きというよりも祈りのようです。

■壺井一歩 弦楽四重奏曲第2番
パンフレットによれば、この曲は、
I. Monologue~Moderato~Largo~Moderato~Monologue~Allegro ma non troppo~Meno mosso~Andante~Meno mosso~Andante~Allegro con fuoco~Monologue
という構成になっているそうです。
チェロの長いソロから始まります。ヴァイオリン、ヴィオラが加わり、チェロの息の長い音と対比されます。静寂の中にピツィカートがかなり大きく響き、第2ヴァイオリンが細かな繰り返しを行い、ヴィオラがぐっと出ます。第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの奏でる響きの中で、第1ヴァイオリンによるハイトーンが印象的です。全休止の後に再び第1ヴァイオリンのハイトーン。他の三人が加わり、こんどはヴァイオリンの低い持続音に対応して、第2ヴァイオリン、ヴィオラが旋律を歌います。そしてチェロの雄弁なソロ。ヴィオラが強いリードをする中に、2本のヴァイオリンとチェロがこたえ、やがて第2ヴァイオリンが悲歌を歌います。ヴィオラのリードが再び繰り返されますが、これがやけにかっこいい。2nd-Vnの悲歌も印象的です。
そして曲想は一転して速いテンポに。ヴィオラが同じ音を繰り返す中で、他の三人も同じ音を繰り返します。一種独特な同音反復効果です。再びはじめのチェロのモノローグが登場し、ヴァイオリン、ヴィオラの連続する高音の中で、チェロのピツィカートが印象的に曲を締めくくります。
素人音楽愛好家らしく、たどたどしい外面的な記述になってしまいましたが、今回の第2番も、たいへん魅力的な音楽です。とりわけ、茂木さんのチェロの活躍がスゴイ!迫力といい表現といい、あらためてかけがえのない山Qの宝だと感じました。できれば、第1番と第2番を収録したCDがほしいと思いました。

ここで、15分の休憩が入ります。作曲者の壺井一歩さんのところではファンの方が話をしておられるようで、今回は隣席でなかったのが残念(^o^)/



そして後半のプログラム、
■シューベルトの弦楽四重奏曲第13番イ短調「ロザムンデ」
です。
第1楽章:アレグロ・マ・ノン・トロッポ。どうしても「あ~めは降る降る」と聞こえてしまう(*)のですね。でも、「城ヶ島の磯に~」とは続かない(^o^)/
ああ、シューベルトだ、と安心するような響きですが、でも緊張感を途切れさせることのできない音楽です。もし、集中力を途切れさせたら、どこかへ飛んで行ってしまうようなタイプの音楽とでも言えばよいのでしょうか。テンポはややゆっくり目で、これはかなり意図的なものでしょう。
第2楽章:アンダンテ。例の、チャーミングな「ロザムンデ」の主題です。四人の音が、音量のバランスや響きの面でも、実にとけあっています。自由闊達さはありませんが、四人が心を合わせてアンサンブルしていることが感じられます。
第3楽章:メヌエット、アレグレット。チェロの強い音から。ヴァイオリンとヴィオラが同じフレーズで応じます。ちょいと嘆き節ふう。途中、曲想が変わり、開放的な雰囲気も出てきますが、再びチェロの強い音ではじめの短調の世界に戻り、終わります。
第4楽章:アレグロ・モデラート。チェロの軽やかなピツィカートがおもしろい。いかにもフィナーレにふさわしい、明るく親密な雰囲気の中で、曲が終わります。

アンコールは、山形県白鷹町出身の、紺野陽吉?さんの弦楽三重奏曲から、第2楽章。
第2ヴァイオリンの今井さんは、ステージ脇で聞き役に変わります。
実はこの曲、以前取り上げた(*2)鶴岡出身の佐藤敏直さんの師匠、清瀬保二?さんの遺稿の中に楽譜が見つかったのだそうで、白鷹町に育ち、夢半ばで倒れた作曲家の作品を再現することになります。以前、山形北高の校長先生から、たくさん白鷹町のわらべ歌を送ってもらったそうですが、その中の一曲に雰囲気が似ている、とのことでした。来年一月には、ぜひ全曲を演奏したいとのことです。それは、私もぜひ聴いてみたいものです。

中島さんが「男ばかりでむさ苦しく終わっては申し訳ないので」と聴衆を笑わせ、アンコールをもう一つ、今度は今井さんも一緒に、ハイドンで、「皇帝」の第2楽章を。
ああ、ハイドンの音楽は、文句なく幸福になる音楽です!今宵の楽師さんたちのサービスでしょうか(^o^)/

今回も、良い演奏会でした。終演後に、壺井一歩さんと少しだけお話しして、CDを二枚購入しました。一枚は「Gift」というクラシック・ギターのCDで、演奏が宮下祥子さん、編曲が壺井一歩さんです。帰路にちょこっと聴いてみましたが、思わず懐かしくなるような選曲と編曲です。
二枚めは、ピアノと詩の朗読で、「スイミー」と「さるかに」など。こちらはまだ開封しておりません。今後の楽しみです。



(*):シューベルトの弦楽四重奏曲第13番「ロザムンデ」を聴く~「電網郊外散歩道」2009年5月
(*2):山形弦楽四重奏団第29回定期演奏会を聴く(2)~「電網郊外散歩道」2008年12月
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モーツァルトの弦楽四重奏曲第17番「狩」を聴く

2012年02月29日 06時05分25秒 | -室内楽
外はまだまだ寒いお天気が続いていますが、室内は暖かで、寄せ集めPCオーディオでモーツァルトの弦楽四重奏曲を聴いております。第17番「狩」です。伝ハイドン「セレナード」、ハイドン「ひばり」にこの曲とくれば、これはもう、伸びやかな楽しい古典派室内楽の王道を行く曲目です。

モーツァルトの弦楽四重奏曲は、弾むような活力が感じられるものが多くありますが、とくにこの第17番「狩」では、そうした魅力が顕著に現れているようです。

第1楽章: アレグロ・ヴィヴァーチェ・アッサイ
第2楽章: メヌエット、モデラート
第3楽章: アダージョ
第4楽章: アレグロ・アッサイ

演奏は、パノハ四重奏団。曲自体がそういう性格であることもありますが、演奏もたいへん活気があり、溌剌とした好ましいものです。CD は GES-9242 という型番で、DENON My Classic Gallery シリーズ中の1枚。手元の資料 The History of DENON PCM/Digital Recordings 1972ー1987 によれば、録音は1980年10月7~8日に荒川区民会館ホールでPCM/デジタル収録されたものだそうで、たいへん鮮明です。

■パノハ四重奏団
I=8'32" II=3'57" III=6'53" IV=6'11" total=25'33"
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伝ハイドン、弦楽四重奏曲第17番「セレナード」を聴く

2012年02月11日 06時01分10秒 | -室内楽
連日、厳しい天候の中で長距離通勤が続きます。緊張感が求められる運転を続けて自宅に戻ると、近代の緊張感に富み集中力を要求される音楽を聴くよりも、人懐こく、思わずほっとする音楽を聴きたくなります。たとえば伝ハイドンの弦楽四重奏曲第17番ヘ長調、Op.3-5「セレナード」です。

現在は、この作品3自体が偽作とされ、作曲者は R.ホーフシュテッター という名前の、バイエルンの坊さんなのだとか(*)。でも、そんなことはどうでもよろしい。いかにも初期のハイドン作品に見える(聞こえる)音楽は、いかにも楽しそう。ほっと息を抜くにはちょうどよいくらいです。

第1楽章:プレスト。優雅で快活、たしかにハイドンの初期作品と言われても疑わないでしょう。ホーフシュテッターさんの作品は、儲け主義の出版社のせいで妙な形で後世に遺ってしまいましたが、作品はたいへんチャーミングです。
第2楽章:アンダンテ・カンタービレ。いわゆる「セレナード」という名前の由来となった楽章です。第一ヴァイオリンが愛を歌うテノールで、第二ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロがピチカートでギターを模しているようです。むしろ「窓辺のセレナーデ」と言う方がしっくりきます(^o^)/
演奏は、なんといっても第一ヴァイオリンに魅力が必要です。その点、この録音では、美音とともに、よく歌うカンタービレで、魅力いっぱいです。
第3楽章:メヌエット。こちらは典型的な舞曲スタイルです。華やかな王宮のシャンデリアの下でというよりも、どことなく田舎風の味もあり、セレナードに応えて窓から抜け出した娘さんが、恋人と踊っているような風情があります。
第4楽章:スケルツァンド。ちょいと滑稽味を加えたフィナーレ。危うく見つかりそうになった恋人たちが、あちこち隠れて逃げまわるような風情です(^o^)/

CD は DENON の GES-9242。My Classic Gallery というシリーズの分売で入手したものです。録音データなどはまったく記載がありませんが、手元にある「The History of DENON PCM/Digital Recordings 1972-1987」という記録によれば、1983年の9月に、西ベルリン(当時)のジーメンス・ヴィラでデジタル録音されたもので、演奏はフィルハーモニア・クァルテット・ベルリン。東独の団体?いえいえ、れっきとしたベルリンフィルのメンバーからなる四重奏団で、エドワルト・ジェンコフスキー(Vn)、ワルター・ショーレフィールド(Vn)、土屋邦雄(Vla)、ヤン・ディーセルホルスト(Vc) と掲載されています。初出のLPは、「セレナード」「五度」「皇帝」という三曲を収録したもので、OF-7094 という型番であったようです。なるほど、それでこの魅力的な演奏なのだなと納得です。

■フィルハーモニア・クァルテット・ベルリン
I=3'56" II=3'06" III=3'00" IV=2'10" total=12'12"

(*):伝ハイドンの「セレナード」、真の作曲者は修道士ロマン・ホフシュテッター~スケルツォ倶楽部
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ベートーヴェン「弦楽四重奏曲第1番」を聴く

2012年01月29日 06時05分34秒 | -室内楽
若いベートーヴェンの音楽(*1)は、溌剌としたリズムや魅力的な旋律・響きなど、たいそう魅力的なものです。ただし、現代の私たちは、中期から後期における、この作曲家の偉大な作品群の影に、その魅力が隠れてしまい、充分に触れることなく過ごしてしまう面があるのでしょう。若い時代には持っていても、年をとると失われてしまう魅力や価値がたくさんあるということは、私たち中年世代は実感として気づいていることです。若いベートーヴェンには、晩年には失われてしまう独自の魅力や価値がある(*2)ことに気づかせてくれたのは、たとえばこの弦楽四重奏曲Op.18の6曲、とりわけこの第1番でした。

弦楽四重奏曲第1番Op.18-1は、1801年に完成されており、全6曲中第2番目に作られた曲であるのに、第1番とされたものだそうです。このあたりも、自信作を第1番にするというベートーヴェンの流儀が、やっぱり踏襲されているようです。

第1楽章:アレグロ・コン・ブリオ、ヘ長調、4分の3拍子、ソナタ形式。ターラララッタッターという始まりから、四人の緊密なアンサンブルの音楽となっていきます。ハイドンの弦楽四重奏曲では、ソリストのような第一ヴァイオリンに対して、他の三人が伴奏をするような形から次第に進化していきますが、ベートーヴェンの場合は最初から四人とも忙しく活躍する形になっています。チェロのパートなどは、ベートーヴェンのほうがずっと重視しているように聞こえます。
第2楽章:アダージョ・アフェットゥオーソ・エ・アパッショナート。ニ短調、8分の9拍子、ソナタ形式。ベートーヴェン自身は、「ロメオとジュリエット」の墓場の場面を考えていたとされていますが、たしかに悲劇を感じさせるものがあります。ただし、晩年の音楽のような厳しさではなく、しだいに穏やかな表情も現れます。中ほどに、三度の全休止を置き、劇的な効果も与えます。印象的な緩徐楽章です。
第3楽章:スケルツォ、アレグロ・モルト、ヘ長調、4分の3拍子。三部形式。前の楽章の暗い気分からはだいぶ抜けだし、軽妙なスケルツォとなっています。優雅なメヌエットでなくて、活発なスケルツォの採用も、若いベートーヴェンらしさなのかも。
第4楽章:アレグロ、ヘ長調、4分の2拍子。始まりからして、晴れ晴れとした解放感を感じさせる音楽です。やわらかな優しさもあり、モーツァルトやハイドンに連なる伝統の響きはしっかりと持っておりますが、四人の奏者の緊密な響き合いは、たしかに革命児ベートーヴェンの工夫と労作でしょう。

演奏は、スメタナ四重奏団。本当は、もっと若々しい団体で聴きたい(*3)ところですが、残念ながら録音はこれしか持っていないので、仕方がありません(^o^;)>poripori

(*1):ベートーヴェンの「第1番」~「電網郊外散歩道」2005年2月
(*2):ベートーヴェンのピアノソナタ第1番を聴く~「電網郊外散歩道」2009年2月
(*3):山形弦楽四重奏団第31回定期演奏会を聴く~「電網郊外散歩道」2009年4月
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山形弦楽四重奏団第42回定期演奏会でハイドン、グラス、ベートーヴェンを聴く

2012年01月18日 06時03分33秒 | -室内楽
ちょうどアレルギー性副鼻腔炎の薬がなくなりそうでしたので、早々と休みをとって通院を済ませ、山形市の文翔館にかけつけました。幸いに雪は止み、道路は黒くアスファルト面が出ています。久しぶりにプレコンサートに間に合いました。今日は、茂木智子さんと菊地祥子さんのお二人によるヴァイオリンの二重奏で、フランスの作曲家ルクレールの「二つのヴァイオリンのためのソナタ第2番」です。3つの楽章からなる曲で、茂木さんのヴァイオリンを菊地さんが追いかける?形で始まる、チャーミングな曲でした。

そして、当夜は今井東子(はるこ)さんの初プレトークでした。山形の冬の寒さに対応してか、黒い長袖の上衣とロングスカートのドレスで、メガネの奥にキラリと知性が光ります。今回の曲目について、プログラムノートを見ながらの説明でした。ハイドンは、均整のとれた曲、というイメージだとか。同感です。P.グラスの「MISHIMA」は、死に向かうおだやかな面も感じられるとのこと。ベートーヴェンは、聴覚異常が出てきていた時期にもかかわらず、そんな気配は出ていないことに、強い精神力を感じる、とのこと。とてもわかりやすい説明でした。少しはずかしそうで、比較的前の方に座ったのでよく聞こえましたが、客席の一番後ろのお客様には聞こえたかどうか、ちょいと心配になりました。

さて、第1曲めは、ハイドンの「弦楽四重奏曲ホ長調Op.17-1」です。
第1楽章:モデラート。第1ヴァイオリンが美しく伸びやかな旋律を歌い、第2ヴァイオリンとヴィオラ、チェロが響きを加える形や、二本のヴァイオリンの重奏、あるいはヴィオラも加わって、などの多彩な響きとリズムを堪能します。安心して聴けるハイドンの音楽ですが、第1ヴァイオリンはけっこう難しそうな印象あり。
第2楽章:メヌエット。基本的に明るく楽しい音楽です。二曲目にメヌエット?と変な気もしますが、まあ、固いことは言わないことに(^o^)。なにせハイドンさんは、さまざまな楽曲の形式を作った張本人なのですから(^o^)/
第3楽章:アダージョ。とても印象的な哀愁の音楽。とても美しい音楽です。今井さんのプログラムノートによれば、当時はやっていたオペラやオラトリオの「シシリアーノ」の形式をとるそうな。その今井さんの第2ヴァイオリンの細かい動きの音が、繊細に響きます。
第4楽章:フィナーレ、プレストで。二本のヴァイオリンから始まります。時折転調をまじえながら、充実したフィナーレです。

お客さんの入りは、そうですね、いつもよりも少なめでしょうか。厳冬期、有名曲を含まないプログラムの平日の室内楽演奏会ですので、まあやむを得ない面があります。P.グラスなんて、「誰?それ。」なんて感じでしょう。私の場合、珍しい曲目の場合は、この次という機会はない!とばかり出かけるようにしていますが(^o^)/



さて、そのP.グラスの弦楽四重奏曲第3番「MISHIMA」は、映画「MISHIMA」の音楽をもとにして弦楽四重奏曲に再構成したものだそうです。MISHIMAとはもちろん三島由紀夫のことです。この事件のことは、多少の記憶がありますが、ずいぶん違和感があったなあ、という程度のものでしかありません。三島由紀夫の良い読者ではありませんでしたし、もちろんこの映画も観たことはありません。さてどうか?
第1楽章、1957:Award Montage, 鎮魂と回想でしょうか。第2楽章、November 25-Ichigaya, ごく短い心象風景か。第3楽章、Grandmother and Kimitake, キミタケというのは三島由紀夫の本名だそうです。(知らなかった!) 威厳のある祖母の力か、ヴァイオリンらしい高音がほとんど登場せず、中低音のみで表されます。暗い印象、抑圧のイメージでしょうか。大人になってまでバアちゃんのトラウマってのも、なんかヘンですけどね~(^o^)。第4楽章、1962:Body Building, ヴィオラとチェロから始まり、はじめは中低音で表されますが、やがてヴァイオリンの高音も加わり、負荷がかけられる様子でしょうか、思いがけない中断で終わります。第5楽章、Blood Oath, 次第に昂揚する血の誓い。同様にプツッと終わります。第6楽章、Mishima/Closing, リズムの執拗な反復を特徴とする曲の中で、旋律らしいものが登場します。うーむ、執拗な反復からなるミニマル・ミュージックの手法による音楽は、たぶん映画には効果をあげたことでしょう。

ここで休憩です。先ほどの「MISHIMA」の音楽の後、若いベートーヴェンの音楽がどういうふうに聞こえるか、興味津津です。たぶん、すごく魅力的にきこえるだろうなあ、というのが予想。いや、評価する・しない ではなく、そういうタイプの音楽表現、ということです。

そのベートーヴェン、弦楽四重奏曲第5番、イ長調Op.18-5です。
第1楽章:アレグロ。第1ヴァイオリンが活気を持って登場します。ここは、いかにも若々しさが感じられます。ハイポジションの音程が難しい今日のハイドンと比べて、第1ヴァイオリンの難しさは同等と感じますが、他のパートは格段にベートーヴェンの方が充実しています。とくに、私にとってはチェロの役割の増大がうれしいところ。楽器としての進歩や、奏法の進歩もあったのかもしれません。四人が一緒に奏するときのリズム、息の合い方は、さすがに三回目の定期演奏会ならではと思います。
第2楽章:メヌエット。2本のヴァイオリンから。ヴィオラが加わり、チェロがそっと寄り添います。ハイドンよりも無理のない音域でヴァイオリンが歌いますので、安心感があります。ベートーヴェンは、アンサンブルの点でぐっと密度が増した感じです。
第3楽章:アンダンテ・カンタービレ。主題は甘くロマンティックなものではなくて、むしろのどかで開放的な感じのものです。これが変奏されていきますが、チェロの伸びやかな音が好ましい。ヴァイオリンがゆらゆらと、あるいはのびのびと奏でられ、ヴィオラが響きを補強します。ちょいとベーさんとは思えないところがあるアンダンテ・カンタービレ。多彩な変奏の展開と見事なコーダです。
第4楽章:アレグロ。速めのテンポで、四人がほとんど同等の重要性を担う、緊密な響きとアンサンブルの世界です。たぶん、ハイドンのようにアマチュア演奏家(貴族たち)が加わることも想定して易しめに書くのではなく、四人の演奏家の技量を前提に作曲できる点で、ベーさんは恵まれていたと言うべきでしょう。明朗な音楽の世界です。

うーん、やっぱり若いベートーヴェンの音楽はいいなぁ!Op.18の6曲は、第1番を筆頭に、どれも魅力的で見事な作品ばかりです。

アンコールは、そのベートーヴェンの第13番から、ゆっくりしたテンポで演奏されるカヴァティーナです。緊密で内省的で充実した響き。中年~初老の孤独な男の心情を思います。



次回の第43回定期演奏会は、4月28日(土)、18時45分開演予定とのこと。プログラムは、シューベルトの弦楽四重奏曲第13番イ短調「ロザムンデ」、壺井一歩「弦楽四重奏曲第2番」、ハイドンはお休みして、林光さんの弦楽四重奏曲「レジェンデレゲンデ」という予定だそうです。早々と前売券を購入してしまいましたが、予定が入らないことを祈りたいと思います(^o^;)>poripori
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