電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山響第244回定期演奏会で広瀬量平、チャイコフスキー、シューマンを聴く

2015年04月19日 20時49分50秒 | -オーケストラ
風邪もようやく回復期に入り、他のお客さんに迷惑にならないよう、咳が出ないことだけを念じながら、4月の山響第244回定期演奏会に出かけました。本日は、「耳に残るは…」と題するプログラムで、

  1. 広瀬量平/オーケストラのための「朝のセレナーデ」
  2. チャイコフスキー/ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 op.23、イリーナ・メジューエワ(Pf)
  3. シューマン/交響曲 第1番 変ロ長調 op.38「春」
    阪 哲朗 指揮 山形交響楽団

という曲目です。
季節が良いせいか、新年度のスタートの慌しさもそろそろ一段落したためか、チケットも完売だそうで、喜ばしいことです。

恒例のプレトークは、新事務局長に就任した西濱さんと指揮者の阪哲朗さんのお二人のかけあいで行われました。広瀬量平氏は、阪さんの師匠筋の方だそうで、作曲科所属なのに作品を提出せず、指揮ばかりやっていた阪さんを叱りもせず、指揮の道に進めてくれた恩師にあたるのだそうな。また、チャイコフスキーの協奏曲は、小編成でも良い響きが得られるように書かれているとのことで、山響のような小ぶりの編成でもじゅうぶんに楽しめます、とのことでした。シューマンの「春」については、北国の春がある日突然に訪れるように、パリッとしためりはりのある、爆発的な春を表したい、とのことでした。なお、チャイコフスキーは現代楽器で演奏しますが、シューマンは時代考証を踏まえ、古楽器で演奏する、とのことです。
なるほど、プレトークの在り方にも工夫をして、親しみやすさを演出しようという前向きな試みでしょう。好感を持ちました。ただし、ステージ上で距離が近い二人の会話になると、どうしても早口になってしまい、ホールの後ろのほうでは内容がよく聞き取れないところが出てしまいます。ぜひ、配慮をお願いしたいと思います。

1曲目、広瀬量平「朝のセレナーデ」です。素人音楽愛好家の当方は、もちろん耳にするのは初めてです。ステージ上には、向かって左から第1ヴァイオリン(8)、チェロ(5)、ヴィオラ(5)、第2ヴァイオリン(7)、正面奥にコントラバス(3)という、弦楽器群が左右の対向配置になっています。第1楽章:アレグロ・アニマート。軽やかさがあります。第2楽章:アンダンテ。しっとりとした音楽。第3楽章:アレグロ・ヴィヴァーチェ。活力を感じさせる音楽です。山響の弦楽アンサンブルの澄んだ響きを味わえる、なかなかステキな音楽と受け止めました。1998年版初稿による演奏と解説にはありますが、こういう音楽ならば、もっと聴いてみたい気がします。

2曲目、チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番です。ステージ中央にグランドピアノが引き出され、楽器配置が少し変わります。弦楽四パートは同じですが、正面奥にフルート(2)とオーボエ(2)、その奥にクラリネットとファゴットが各(2)、その奥にホルン(4)とトランペット(2)、最奥部にコントラバス(3)とトロンボーン(2)にバストロンボーン、金管楽器の右にティンパニが位置します。この曲では、バロック・ティンパニではありません。
ソリストのイリーナ・メジューエワさんが、濃赤色のドレスで登場します。これまで、メトネルの音楽(*1,2)などをCDで好んで聴いており、実演でも山響の第177回定期演奏会(*3)でショパンのピアノ協奏曲第1番を聴いていますので、今回が二度めとなります。歩くのも速いが動作も機敏で、まるで体操選手のような印象です。ピアノのコマネチみたいなイメージです(^o^)/
そして、演奏はきわめてダイナミック! 意外なほどパワフルな演奏です。でも、メトネルの曲を好んで弾く人らしく、カデンツァなどでは瞑想的な面を見せます。弦のピツィカートで始まる第2楽章、フルートのソロにうっとりとした後で、オーボエとチェロが歌う旋律のチャーム! ところで、メジューエワさんは譜めくりの人を置きません。楽譜が何ページか続く横長の譜面を使っているようで、自分でまとめてめくっています。こういうところに気づいてしまうのも、ナマの演奏会の面白いところです(^o^)/

演奏が終わるとブラボーの声が飛び、聴衆の拍手で何度もステージに呼び出されます。アンコールは、ラフマニノフでした。これもまた、メジューエワさんのダイナミックかつ瞑想的な資質によく合った音楽でした。



ここで、15分の休憩です。

後半は、R.シューマンの交響曲第1番「春」です。
楽器編成は、弦楽部が 8-7-5-5-3 の対向配置、Fl(2),Ob(2),Cl(2),Fg(2)の木管群に、Hrn(4),Tp(2),Tb(2),BassTb(1)の金管楽器が加わり、右手にバロック・ティンパニとトライアングルが位置します。
冒頭のホルンとトランペットが、見事に決まります。指揮の阪哲朗さんのテンポはややゆったりとしたもので、どちらかといえば細部をも克明に描いていくようなタイプの表現でしょうか。指揮ぶりもしなやかで踊るような身振りがおもしろく、ひそかに「踊るメフィスト」という敬称を進呈したいところです(^o^)/
演奏は、弦の繊細な響きを生かしながら、木管アンサンブルなどはすごくステキですし、バロック・ティンパニの音のヌケの良さをあらためて感じました。また、各楽章で、時折「おやっ」と思わせるところがあり、丁寧な描き方になるほどと感じました。ただし、春がみるみるうちに初夏に変化していくような、そういう前進力というか推進力というか、音楽が内在する力でぐいぐいと変化していくようなタイプの表現とは、いささか違うかもしれません。




いや~、それにしても、今回も良い演奏会でした。終演後のファン交流会に参加して、阪さんの抱負を聴き、メジューエワさんのCDを購入してサインしてもらいました。わが「ミーハー・コレクション」に、また宝物が増えました(^o^)/



(*1):「おとぎ話」「忘れられた調べ」など、メトネル作品集を聴く~「電網郊外散歩道」2008年7月
(*2):クリスマスの夜にメトネルのピアノ曲を聴く~「電網郊外散歩道」2008年12月
(*3):山形交響楽団第177回定期演奏会を聴く~ドヴォルザークほか~「電網郊外散歩道」2006年12月


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