電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

クリスマスの夜にメトネルのピアノ曲を聴く

2008年12月25日 06時32分58秒 | -独奏曲
クリスマスの夜に、単身赴任のアパートで、メトネルのピアノ曲集を聴きました。演奏は、イリーナ・メジューエワさん。1999年の10月に、笠懸野文化ホールでデジタル録音された、DENON COCO-70811 という型番のCDは、同社のクレスト1000シリーズに収録されたメジューエワの2枚目のメトネル作品集にあたります。1枚目のアルバム(*)もたいへん好ましく聴きましたが、このアルバムも、まるでたった一人のクリスマスのために録音してくれたような、ぴったんこの音楽です。

収録されているのは、
(1) 8つの心象風景 Op.1 より(4曲)
(2) ピアノソナタ 変イ長調 Op.11-1 「三部作ソナタ第1番」
(3) おとぎ話 ハ長調 Op.9-2
(4) おとぎ話 ハ短調 Op.42-2 「フリギア旋法」
(5) おとぎ話 嬰ト短調 Op.42-3
(6) 忘れられた調べ Op.39 (5曲)
です。

前半には、どちらかといえばロマンティックな要素の強い、初期の作品が並びます。そして後半には、いわば中期の作品が並んでおり、作曲者の変わらぬ本質と音楽的な変容とが概観できるものとなっている、というところでしょうか。

音楽院時代に書かれたという、記念すべき作品1の「8つの心象風景」は、たった一人のクリスマスに聴くにふさわしい、見事な旋律と響きを持った音楽です。
解説によれば、本CDの最後に収録された「忘れられた調べ」というのは、ロシア革命直後の1919~20年頃の作品だそうで、1921年の、モスクワ音楽院大ホールにおける初演当時は、プログラムに「抒情的作品集」と書かれていたそうな。でも、いつの頃からか、「忘れられた調べ」になっていったのでしょう。たしかに、革命当時の騒然たる空気や、当時の前衛的な風潮を思えば、時代に忘れられた調べのように思うのも無理はありません。でも、一部にある苦汁に満ちた表情などは、間違いなく時代の刻印のような気がします。



(*):「おとぎ話」「忘れられた調べ」などメトネル作品集を聴く

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