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PLAN(計画)、DO(実行)、CHECK(検証)、ACTION(調整)の4ステップからなるPDCAサイクルは、ビジネスパーソンであれば誰もが知る古典的なフレームワークで、一般的には製造工程の改善手法、またはチームやプロジェクトを管理する手法のひとつとして習得されるケースが多いです。
しかし、PDCAほど分かっているつもりで分かっていない、基本だと言われているのに実践している人が少ないフレームワークも珍しいのではないでしょうか。
この本では、PDCAを「前進を続けるためのフレームワーク」と捉え、それを高速を超える「鬼速」で回し続けることで、会社・部署・個人が圧倒的なスピードで成果を出し続けることを目指します。前進していることを実感できれば自信が湧き、モチベーションにドライブがかかり、さらにPDCAが速く回るのです。
鬼速PDCAのステップ
「P」:ゴールを決め、課題を考え、KPIを設定し、解決案を考える。<アウトプット=ゴール(KGI)、課題(KPI)、解決案>
「D」:解決案を一段具体化したDOを考え、そのKDIを設定し、さらに具体化したTODOに落とし込み、実行する。<アウトプット=DO、KDI、TODO>
「C」:KGI、KPI、KDIを検証し、できなかった要因とできた要因を絞り込む。<アウトプット=達成率、できなかった要因、できた要因>
「A」:検証結果を踏まえ調整案を考え、次のサイクルにつなぐ(または中止する)<アウトプット=調整案>
PDCAを鬼速で回す10個のポイント
1.因数分解で精度の高い仮説を立てる
2.仮説思考、リーン思考で動く
3.常にインパクトの大きい課題、行動から着手する
4.行動のアイデアが湧いたらすぐにタスク化する
5.行動目標も必ず数値化
6.TODOの進捗管理は毎日行う
7.こまめに検証を行う
8.要因分析時は「思い込み」を外す
9.次のサイクルに迅速につなげる
10.小さいPDCAを同時に多く回す
著者の冨田和成さんの経営する会社では、一般的な企業で週1回行うようなチームミーティングを週2回・3日ごとの頻度で行っています。メンバーの行動計画もこのミーティングに合わせて半週ごとで区切ってあり、結果目標だけではなく行動目標もすべて数字で追っています。そしてミーティングでは各自、数値目標が未達であったものについて未達になった要因や課題を共有し、参加者全員で手を差し伸べ、それを次のサイクルに活かしているとのこと。これにより、仕事の進め方で悩んでいるメンバーが1週間立ち止まるという事態は起きない仕組みを実現しています。
また冨田さんご自身も、社会人になってから毎日の振り返りを一度も欠かしたことがないそう。どれだけ遅く帰っても、どれだけ付き合いでお酒を飲んでも、毎晩必ずその日の行動を振り返って紙に書いてきました。そして週末にはほとんど予定を入れず、自室やカフェにこもって振り返りや計画を立てたりすることが習慣になっているという徹底さ。
「PDCA力が高まればタイムマネジメント能力もチームマネジメント能力も問題解決能力もすべて上昇していくのである。この発想の転換さえできれば本書の役目はほぼ終えたと言ってもいいくらいだ。」(P.24)
そんな机上の空論ではない、実践を通じて磨かれたPDCAモデルを味わい尽くしましょう。
【my pick-up】
◎ときに思考のリミッターを外す
私は部下から相談を持ちかけられたときには、このような質問をよくする。「他にできることがあるとしたらどういうことだと思う?」私は「当然あるよね」と言わんばかりのポーカーフェイスを決め込み、待つ。そこでいったん私は手を貸さない。そこで「ないなら別にいいけど」など助け船を出しては意味がない。
◎実行できないケース-タスクレベルまで落とし込まれていない
実行速度を上げたいのであれば上司は部下に対して「これをやれ」で終わらせずに、部下自身で「どうやってやればいいのか」を判断できる能力があるか正しく見極め、そのレベルに合わせてPDCAが軌道に乗るまで丁寧にフォローする必要がある。優先度が高いものを今までやってこなかったのにはそれなりの理由がある。上司としても行動レベルのブレイクダウンまで手助けする必要がある。
◎タイムマネジメントの3大原則
タイムマネジメントといっても方法は3つある。1.捨てる、2.入れかえる、3.圧縮する。あくまでも、この順番で行うことがポイントだ。真っ先に考えるべきは「いま抱えているDOで捨てられるものはないか?」である。それが一番簡単で効果があるからだ。