イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「スペース・トランスフォーメーション 人類の生存圏が拡大する時代に向けて」読了

2024年09月10日 | 2024読書
堀口真吾 「スペース・トランスフォーメーション 人類の生存圏が拡大する時代に向けて」読了

「スペース・トランスフォーメーション」とは、DXに引っかけて創られた言葉のようだ。内閣府のホームページを見ると、『宇宙空間における活動を通じてもたらされる経済・社会の変革 』と書かれている。
僕のようにSF的な頭しかない人間から見ると巨大宇宙戦艦やスペースコロニーの建設なのかと思い浮かべるが、どこから投資を得てどうやって利益を出すのかというのを考えるとそれはちょっと無理だと思えてくる。
しかし、現実では身近な宇宙で、具体的には国際宇宙ステーションが周回している500キロメートル上空の宇宙ではスペース・トランスフォーメーションは始まりつつある。
奇しくも明後日は「宇宙の日」だそうだ。(何の記念かは知らないが・・)

著者は宇宙ビジネスのスタートアップ企業のCEOで宇宙ステーションで使用される実験装置の開発・製造をおこなっているビジネスマンだ。この本では、宇宙開発の歴史、現在の宇宙ビジネス、宇宙産業をいかにして盛り上げていくべきかについて書かれている。
以前に読んだ本に比べるとかなり現実的ではあった。

日本は宇宙ビジネスに対し、国家を含めてもっと投資すべきだという。まあ、これがこの本の結論ではある。著者は、日本の体質として、リスクのある投資に尻込みしすぎるのだというのである。リスクの高い宇宙開発に理解を示してほしいそうだ。

日本の宇宙に関する企業というと、串本でロケットを飛ばしたり流れ星を作る会社があるというのはニュースを見て知っていたけれどもまだまだ存在するそうだ。堀江貴文もそんな会社を立ち上げていたというのをこの本を読んで思い出した。そのほか、水平飛行で宇宙に飛び立つ宇宙船を造っている会社や「水」を推進剤に使った衛星用のエンジンを開発している会社もあるそうだ。スペースデブリの除去を目指している会社もある。
日本も宇宙産業への投資を頑張っている。2023年には10年で1兆円の「宇宙戦略基金」を運用することを決めている。しかし、アメリカはその比ではない。
2030年1月に退役したあとには3機の民間宇宙ステーションの建設計画がすでに進んでいるらしい。民間が主導する産業となるわけだが、NASAは総額4億ドルを超える支援が決まっている。4億ドルというと、600億円弱だから1兆円と比べると相当少ないように思えるが、その程度の支援しかなくても自立して経営ができるほど産業として成熟しているということなのである。
民間が造る宇宙ステーションはその内容も独創的で、微小重力下での科学実験や宇宙技術開発はあたり前だが、宇宙旅行の拠点や映画製作の舞台ともなるらしい。
周回遅れとも思えてしまいそうな日本の宇宙産業だがはたして勝算はあるのだろうか・・。

どちらにしても、ビジネスとなると投資した額以上のリターンがなければならない。微小重力下での科学実験といってもどれだけ新たなものが開発できるのだろうと、素人考えでは思えてくる。
投資家の中にはイーロン・マスクやジェフ・ベソスという名前も出てくるが、本当に将来には巨大な富を生み出すだろうと考えて投資をしているのだろうか・・。僕にはなんだか趣味の延長でしかないように思える。最近のニュースによると、イーロン・マスクは2026年に火星に向けてロケットを飛ばし、それがうまくいけば2030年には有人飛行を計画しているそうだ。しかし、数人の人が火星に行けたとしてもそこから何も生み出すことはできないだろう。そこに行くための装備を造ることで消費は生まれるだろうがそこ止まりだ。イーロン・マスクはこの発表に際して、『そこから飛行頻度が飛躍的に伸び、20年ほどで自律した都市を建設することを目標としている。複数の惑星が存在し、すべての生命が一つの惑星に存在することがなくなるため、人類の寿命は大幅に伸びるだろう』と語ったそうだが、やっぱり男のロマンのようにしか見えない。

まあ、そんなことしか思えない人間はビジネスマンとしても投資家としても落第なのではあるが・・。

しかし、当面は低軌道の宇宙を利用して地球上で富を生み出す形を続けることになるのだろうが、その先にはきっと宇宙空間から富を生み出す経済システムが生まれるのだろう。
僕の寿命はそれまで待てないかもしれないが、2030年1月に国際宇宙ステーションが大気圏に突入し流れ星となって燃え尽きる姿や、同時かその前後なのか知らないが民間宇宙ステーションが打ちあがるくらいまではおそらく見届けることはできるかもしれない。
その時には空のもっと奥の方を見ながら、投資家たちの野望に思いを馳せたいと思うのである。
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