イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「アンのゆりかご―村岡花子の生涯」読了

2018年05月07日 | 2018読書
村岡恵理 「アンのゆりかご―村岡花子の生涯」読了

朝の連ドラで「あまちゃん」の次に秀作であると思っているのは、「花子とアン」である。このドラマは主人公の村岡はなと「赤毛のアン」の主人公であるアン・シャーリーのキャラクターが見事にシンクロしている。
ついこの前までBSで再放送をしていて、やっぱりこの本を読まなくてはと手に取ってみた。
放送後4年も経つと古本屋で手ごろな値段で手に入れることができるのだ。

この本は「花子とアン」の原作であり、村岡花子の生涯が綴られたものだ。
せっかくなのでドラマのキャストの一覧表を作ってみて、あの人はこの人でこの人は実在しなかったのかなどと確認をしながら読んでいた。



例えばはなの妹のかよさんに当たる人は実在しなくて、ということは本当の郁弥さんはかよさんにプロポーズをした瞬間に震災に遭うということはなかったのだけれどももっと悪いことに、関東大震災で亡くなってはいるのだけれども、本当の郁弥さんは別の人と結婚していて子供までいたそうなので不幸の度合いはもっと厳しい。お兄さんの吉太郎さんらしき人は実は弟で早くに養子に出されて不幸な人生を送ったようだ。そして、本当の英治さんには子供がいて、離婚をいていたとはいえ、奥さんが存命中に花子と結婚をしたそうだ。養子に出ていた息子は震災で亡くなり、英二さんと花子の心にも大きな傷となって残ってしまったのである。

また、ドラマでは蓮さまとはなは蓮さまの息子の戦死をきっかけに一時期確執を深めたけれども、実際はそういうことはなかった(少なくとも書かれてはいなかったし、一緒に女性の地位向上の運動もやっていたようだ。)というのはよかった、よかった。
そしてずっと疑問に思っていたのだが、どうしてはなの父親は娘を修和女学校(本当の学校名は東洋英和女学校)に入学させることができたのかというと、この人、若いときにクリスチャンとして東洋英和女学校の創設メンバーから洗礼を受けていて、その縁を頼って花子を入学させることができたそうだ。ドラマでも社会主義運動っぽいことをやっていたけれども、実際はかなりそれにかぶれていたらしく、晩年は山梨で葡萄とワインを作っていたのではなくて、出身地の静岡県で生涯社会主義運動のようなことをやっていたそうだ。仕事をせずにそういうことに明け暮れていたので花子たちにとってはいい父親ではなかったのだけれども、娘をひとりだけとはいえ、学問の道に送り届けられたというのはこれはこれで大した事をやったと思うのである。
ドラマでははなが子供のころ、病気になってそのとき辞世の句を読んだというエピソードがあったけれども、これは本当だったらしい。また、ブラックバーン校長が空を飛ぶ戦闘機を見て話した言葉やテル号のエピソード、戦後、アメリカ軍人から、「あなたはポーシャのような人だ。」と言われたことも本当にあったことらしい。(ドラマでは放送局のなかでの出来事であったけれども、実際は軍事法廷内でのできごとだったそうだ。こっちのほうがポーシャらいしといえばポーシャらしい。)このシーンや、山梨での教員としての生活は実際は阿暮里小学校ではなくて東洋英和女学校の系列のミッションスクールであったそうだが、これれはきっとセットを追加でつくるのがもったいなかったという理由ではなかろうかなどといろいろ想像するのも面白い。
ちなみに、本当の花子は「私のことを花子と呼んでくりょ。」とは言ったことがないようだ。「花子」というペンネームは蓮様に誘われて和歌の教室に通い始めてから使い始めたそうである。


ドラマのほうは蓮さまとの友情、英二さんとの夫婦愛を中心に描かれているように思うけれども、本のほうは、花子が携わった女性の地位向上と少年少女に向けての翻訳や創作活動に重きを置いて書かれている。
女学校時代から秀才であった花子の交友関係はある意味華々しいもので、僕でも知っている政治家や作家、「はるが来た」のはるさんまでもその知己のなかにいたそうだ。
そして当時は少なかった少年少女向けの読み物を世の中に広めていこうという使命を自らに科しそれを実践したというのはやっぱりすごい人だったのだと思うのだ。

何の使命感もない僕にとっては、こういう人の話を読んだり聞いたりすると、すぐに、「こういう人はもともと頭の回転が鋭くて要は天才だったからこういうことを成し遂げられたに違いない。僕みたいな脳みその回路の配線の幅が太すぎて脳細胞の集積度が少なくできている人間にはそういうことは無理なのだ。」と思うわけだけれども、父親の勧めはあったにせよ、貧しい境遇から努力ひとつでそこまでやり遂げたなんていうことをまざまざと見せ付けられると本当にたじたじとなってしまうのである。

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