イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「食通に献げる本」読了

2010年07月24日 | Weblog
山本容朗 偏 「食通に献げる本」読了
古い作家の食にまつわる文章を集めた本で、編者はどんな人か知らないが、開高健の文章が入っていたので買ってみた。
開高健の前に出てきた人は牧羊子。夫婦そろって掲載されている。
半分以上の人はすでに物故した人たちばかりだが、1980年に初版が出てすぐに第2版が発行されていることをみると少しは売れた本なのかも知れない。確かに30年前ならそうそうたる面々だったのだろう。

その中の檀一雄の文章に「柊魚」という魚が出てくる。この字を読めて、なおかつどんな魚かがわかる人は相当な魚通だろう。
標準和名は「ヒイラギ」で和歌山(といってもかなり局地的かもしれないが)では「ギンタ」と呼ばれている。
檀一雄の文章によれば、高知県で半干しにしたものを焙って食べたのがすこぶるおいしいということだ。

チヌなんかを釣っているとたまに釣れてくる魚で、大きさは10センチ足らず。とにかくヌルヌルがすごくて、釣ってしまうと大変な魚だ。
そんなわけで普通の人には嫌われ者だが、僕にはかなりの思い入れがある。
僕はつりを始めてもう40年以上になるが、そのスタートがこの「ギンタ」であった。新和歌浦の漁協の水揚げ場の片隅でこの魚を釣ったのが僕の釣り人生のスタートだった。初めて父親が買ってくれた3本継ぎの1間半の延べ竿で釣るのだが、自分の竿で釣る。それがうれしくて仕方がなかった。釣りに行かない日は父親の釣竿に混ざって一緒に保管していたのだが、それもうれしかった。お父ちゃんと一緒だぜ。みたいな感じで。
普通はそうだろうと思ったもので、僕も子供が小さい頃、同じように小継ぎの3.6メートルの延べ竿を買ってあげたのだが、悲しいかな、彼はその竿を使って魚を釣ったことがない。やっぱりどうも迷惑だったようだ・・・。う~ん。

当時、イシゴカイは100円から売ってくれて、小さなお猪口に1杯が100円でそれをもってふたりで釣りに行くのだ。やっぱりヌルヌルが大変で、イシゴカイをハリに刺すのも大変で、それでもやっぱり楽しかった。
釣れてくるのはほとんどが7,8センチあるかないかの大きさだったが、家に持って帰ると母親がそれを煮魚にしておいしそうに食べてくれるのだ。
そんなわけなので、この文章を読んだときはなんとも懐かしい気がした。

そういえば、最近この魚は釣れなくなってしまった。一体どこに行ってしまったのだろう。
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