写真①:活用方法の再生整備計画案が策定された福津市・「津屋崎庁舎」
・連載エッセー『一木一草』
第26回:2014.3.11
津屋崎庁舎再生整備計画案策定
図書館、歴史資料館など複合施設として活用へ
福津市が津屋崎庁舎(3階建て延べ約3,800平方㍍。昭和62年建築)=写真①=の活用方法(再生整備計画)として「津屋崎庁舎再生整備計画案」を策定しました。
津屋崎庁舎再生整備計画案は、福津市が福間・津屋崎庁舎に組織を分散して配置している分庁方式を改め、全ての部署を福間庁舎へ集約するため、建築家ら有識者や市民公募委員で組織した「津屋崎庁舎再生整備計画策定審議会」を2013年11月25日設置、審議して策定。3月14日まで市民意見(パブリックコメント)を市広報秘書課と行政経営企画課で募集、必要に応じて修正を加え、同審議会から最終的な計画として市へ答申を受けて決定します。
津屋崎庁舎再生整備計画案によると、1階は「何度も行きたくなる施設を目指して図書館・喫茶コーナー」を配置=写真②=。図書館は、福間地区にある現在の市立図書館の補完的な機能に限定することなく、地域の中央館としての機能が発揮できる蔵書規模を確保し、特色あるものとして市立図書館との両立を図ります。喫茶コーナーは、庁舎側面の県道(つばき通り)から見て目立つ位置(南東側)に配置、開放的なイメージで整備し、特産物販売コーナーの設置など賑わいを演出します。
写真②:津屋崎庁舎再生整備計画案の1階レイアウト
2階は「市にこれまで無かった歴史資料館と学習室」を配置=写真③=。歴史資料館は、市の歴史を体系的に知ることができ、市内で出土、保管された郷土資料を含む貴重な文化財をじかに見ることができる施設を目指し、世界遺産登録を目指している「宗像・沖ノ島と関連遺産群」と福津市の古墳群に関する情報発信コーナーを設置します。このほか、学習室や多目的スペースを配置、高齢者や子供がゆったりと過ごせる空間づくりに努めます。
写真③:津屋崎庁舎再生整備計画案の2階レイアウト
「建築基準法により不特定多数の人の利用ができない」3階は、貸事務所と会議室を集積=写真④=。貸事務所には、公益的団体や民間事業者などの入居を想定し、既存の会議室や旧議場については入居した団体や市民が会議の規模に応じた部屋を利用できるよう大・中・小の会議室として活用します。
写真④:津屋崎庁舎再生整備計画案の3階レイアウト
また、津屋崎庁舎と市文化会館(カメリアホール)との間にある「健康センター」は市民サービス窓口(地域行政拠点)として再生、現在同庁舎で行っている住民・医療・年金関係の手続きと各種証明書類の発行、健康診断業務をこれまで通り継続できる体制を整備。高齢者サービスや福祉業務、その他市の業務全般の初期相談や取り次が可能な体制の整備を行う、としています。
津屋崎庁舎は鉄骨造りの準耐火構造のため、建築基準法上、用途変更に制約を受けることから、市では同庁舎再生整備計画案について①市全体としての施設の必要性②他施設との距離など地域的な必要性・市全体としての配置バランス③利用予測や事業効果などの有効性④建築基準法・構造上の可否、スペースが充分かなどの実現性――の四つの視点で整理。地域が賑わい活性化するような施設にすること、地域行政拠点・図書館・歴史資料館・喫茶コーナー・貸事務所などを配置する複合施設にすることなどの基本コンセプトを決め、レイアウトを検討して策定したという。
私は2013年11月23日、市民対象の「津屋崎庁舎見学・意見聴取会」に参加し、庁舎統合後の津屋崎庁舎の活用について、(1)佐賀県の「武雄市図書館」=写真⑤=のようにレンタル販売店大手チェーン「TSUTAYA(ツタヤ)」を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)を指定管理者とする「津屋崎図書館」の新設(2)福津市全域の自然と歴史、文化・民族資料を収蔵展示、ギャラリーも設けた「海洋・歴史文化館」(仮称)の建設(3)「ボランティアセンター」の開設――の三用途での活用を提案。事業者・行政・利用者にとっても大きな魅力のある複合施設化の推進を図るのが、公共施設のあり方として望ましく、三用途の施設を核とする複合施設は地域経済の浮揚、賑わい拠点としても期待できるので、ぜひとも実現してほしいと要望していました。
写真⑤:佐賀県の「武雄市図書館」
津屋崎庁舎再生整備計画案では、「津屋崎図書館」については「現市立図書館の補完的な機能に限定することなく、地域の中央館としての機能が発揮できる蔵書規模を確保し、特色あるものとして市立図書館との両立を図ります」としたうえ、「喫茶コーナー」も配置するとし、意欲がうかがえます。ただ、年中無休で、CDやDVDの有料貸し出しコーナーやコーヒーチェーン店(スタバ)を併設、来館者が激増し運営費も削減した「武雄市図書館」のようにカルチュア・コンビニエンス・クラブを指定管理者とするか、など管理運営のソフト面に触れていないのが物足りません。
また、「海洋・歴史文化館」の建設については、「歴史資料館」の新設で要望の半分はかなえられそうです。西村幸夫・東大教授(前副学長)は平成20年(2008年)7月19日、「津屋崎千軒 海とまちなみの会」が主催したカメリアホールでの講演会「〈津屋崎千軒〉まちおこしへの提言」で、「豊かな自然と歴史的環境が、両方とも身近に残っている所は、なかなかない。津屋崎の魅力と宝を活かした町づくりを」と講演されたように、絶滅危惧種のカブトガニやアカウミガメが産卵、クロツラヘラサギが越冬、福岡県内で最多の689種もの貝を産し〝貝寄せの浜〟の異名を持つ海辺の自然の素晴らしさも福津市の宝といえます。全国唯一の「うみがめ課」を持つ同市だけに、海洋の自然史や生物についての展示、学習コーナーも併設、学芸員の配置を望みたいものです。
「ボランティアセンター」の開設は津屋崎庁舎再生整備計画案には見えませんが、公益的団体や民間事業者などの入居を想定した3階の貸事務所と会議室をボランティア団体が利用できるか同案では分かりません。「歴史資料館」の機能補完役として市民の観光ボランティアガイドが常駐できるよう活用し、観光バスの発着、中継地の役割も果たせるようお願いしたい。