写真①:テレビ西日本が発行した『大丈夫です、友よ』の番組PRチラシ(上段は市原悦子=右=と藤竜也)
=津屋崎の郷土史と自然のガイド本、吉村青春著『津屋崎学―A Quaint Town Tsuyazaki-sengen Guide』(Obunest刊)277頁から
・連載エッセー『一木一草』
第67:津屋崎ゆかりの山田太一さん死去を悼む
全国放映された山田さん脚本のテレビドラマ『大丈夫です、友よ』
(津屋崎は風景がよく、気に入りました)と撮影舞台に
脚本家で作家の山田太一さんが11月29日、老衰のため89歳で亡くなりました。山田さんは、福津市津屋崎を舞台に撮影して平成10年(1998年)にフジテレビ系列で全国放送されたスペシャルドラマ『大丈夫です、友よ』(深町幸男演出、市原悦子、藤竜也主演)の脚本を書かれ、A Quaint Town Tsuyazaki-sengen (古風な趣のある町並み)・津屋崎千軒の良さを全国に発信いただきました。名脚本家の死去を心から悼み、合掌。
私は吉村青春の筆名で平成23年(2011年)に発行した津屋崎の郷土史と自然のガイド本、『津屋崎学―A Quaint Town Tsuyazaki-sengen Guide』(Obunest刊)の第18章津屋崎よもやま話の「第3節小説やテレビ・ドラマに描かれた津屋崎」で、『大丈夫です、友よ』を紹介しました。
テレビ西日本が発行した粗筋紹介の番組PRチラシ=写真①=の中で、脚本家の山田さんは〈津屋崎は風景がよく、昔のままの造り酒屋があり、電車の終着駅ということも気に入りました〉と語っています。その電車の終着駅・旧西鉄宮地岳線「津屋崎駅」は、平成19年(2007年)3月末に津屋崎―新宮間約10㌔が廃線になって取り壊され、跡地には住宅が立ち並び、跡形もありません。
『大丈夫です、友よ』は、東京で目標を失った中年男(藤竜也役)が古里・津屋崎で中学の同級生の女性(市原悦子役)と再会、希望を取り戻す物語です。演出の深町幸男さんは、『夢千代日記』『あ・うん』などのテレビドラマを手がけたNHKの看板ディレクター。昭和62年(1987年)にNHKを退職後、民放のドラマも多く演出し、平成26年に亡くなりました。深町さんが『大丈夫です、友よ』のロケ地に松林のある糸島市を検討していることを知った柴田治・「津屋崎町街並み保存協議会」事務局長(平成14年他界)が、白砂青松の津屋崎海岸の美しさや〈津屋崎千軒〉の古い町並みをアピールし、津屋崎がロケ地に選ばれたという。
山田さんが語った〈昔のままの造り酒屋〉・明治7年創業の豊村酒造は、11月24日の文化審議会で国重要文化財指定が決定。私が所属している「津屋崎千軒 海とまちなみの会」は同月29日、福津市津屋崎の景観撮影ロケに訪れた福岡市のアイドルグループ・HKT48のメンバー梁瀬鈴雅(やなせれいあ)さんと江口心々華(えぐちここは)さんを同市津屋崎3丁目の本会観光ガイド拠点事務所・「貝寄せ館」に迎え、津屋崎千軒を巡り、豊村酒造や、明治34年建築の旧染物屋「藍の家」(国登録有形文化財)などの町家の建築様式や魅力をガイドしました。
津屋崎ロケに訪れた梁瀬さんと江口さんは、福岡県がYou Tubeチャンネルで12月22日16時に公開する県内の「美しい景観」ビュースポット紹介サイト「福岡県まちめぐりガイド」で、福津市津屋崎海岸の景色と「海とまちなみの会」の景観維持活動紹介のため、県民情報広報課から同市で「美しい景観」撮影にチャレンジするリポーターに起用されました。豊村酒造の主屋では、塩木の大きな松の梁組みなどを見学し、カメラで撮影。山田さんにも、このYou Tubeで豊村酒造をはじめとした津屋崎千軒の町家を見ていただきたかったのに、残念です。
1983年から97年にTBS系列で放映されたテレビドラマ『ふぞろいの林檎たち』は、中井貴一さんや時任三郎さん、柳沢慎吾さんらによる群像劇。当時、私も毎回、視聴しましたが、大学生役を演じた柳沢さんのにぎやかなキャラが印象的でした。人生の機微や、生きていく中で本当に大切なものは何か、を感じさせる山田さん脚本のドラマがもう見られないのは寂しい。