写真①:上部にミケランジェロ(左)とラファエロの彫像が飾られている「ヴァチカン美術館」出口
=ヴァチカン市国で、2011年5月25日午後2時15分撮影
世界遺産の旅
〈イタリア・町歩き〉 10
:永遠の都・ローマ
24日のイタリア3泊目の宿も、フィレンツエの同じホテルでした。翌25日朝、ツアーバスで高速道路を約4時間南下し、いよいよ〝永遠の都・ローマ〟へ入りました。
人口270万人の首都・ローマ市で最初に訪れた名所は、ローマ法王と聖職者ら人口約千人という世界最小の独立国・ヴァチカン市国です。約10億人の信者を持つカトリックの総本山で、歴史的建造物や膨大な美術品の収蔵でも知られ、国自体が世界遺産に登録されています。
「ヴァチカン美術館(博物館とも呼ばれます)」の出口上部には、ミケランジェロとラファエロの彫像が飾られていました=写真①=。館内の「ピーニャ(松ぼっくり)の中庭」中央には、巨大なブロンズ像の松ぼっくり=写真②=があります。このブロンズ像は、古代ローマ時代に噴水として使われていたという。
写真②:「ピーニャの中庭」にある巨大なブロンズ像の松ぼっくり
=5月25日午後2時50分撮影
「ピーニャの中庭」には、隣接の「システィーナ礼拝堂」の祭壇側壁にあるミケランジェロ作の巨大絵画『最後の審判』のガイドパネル=写真③=が掲示されていました。絵の上部中央に審判するイエス・キリストが、左側に天国へ昇る者、右側に地獄へ落とされる者がそれぞれ描かれています。同礼拝堂は、法王の選挙会議が開かれる場所でもあります。
写真③:ミケランジェロ作の巨大壁画『最後の審判』のガイドパネル
=5月25日午後3時5分撮影
「ヴァチカン美術館」内には、16世紀以降の歴代法王が古代ギリシャの彫刻群をはじめ絵画、地図など貴重な文化遺産を海外流失から守るため収集したコレクションが各所に展示されています=写真④,⑤,⑥=。写真⑥は、ティグリス川を男神に見立てた彫刻『ティグリス』です。手に持ってる壺から流れる水がティグリス川の流れになるという。
写真④:回廊に並べて展示されている古代ギリシャ・ローマ時代の彫刻群
=5月25日午後3時10分撮影
写真⑤:浮き彫りで装飾された古代の柩
=5月25日午後3時10分撮影
写真⑥:ティグリス川を男神に見立てた彫刻『ティグリス』
=5月25日午後3時10分撮影
ヴァチカン南東にあるカトリック教会の総本山・「サン・ピエトロ大聖堂」は、キリスト12使徒のひとり、聖ペテロがローマ皇帝ネロの迫害で処刑された場所に4世紀に建てられ、現在の建物は1626年に完成した二代目。床面積2万3千平方㍍という世界最大級の教会です。1633年に法王の祭壇を覆って建てられたブロンズ製の大天蓋は、ツタのからまるねじれた柱や細部まで施された華麗な装飾で彩られています=写真⑦=。
写真⑦:「サン・ピエトロ大聖堂」の大天蓋
=5月25日午後3時25分撮影
ラファエロが1520年に描いた『キリストの変容』=写真⑧=は、上部にイエス・キリスト、その左右にモーセとエリヤ、下部に神の慈悲を懇願する信徒らが表現されています。
写真⑧:ラファエロ作『キリストの変容』
=5月25日午後3時25分撮影
「地図のギャラリー」=写真⑨=には、16世紀のイタリア各地の地図を両側の壁面に展示。黄金に輝く天井の彫刻が、きらびやかです。
写真⑨:16世紀のイタリア各地の地図を両側の壁面に展示した「地図のギャラリー」
=5月25日午後3時30分撮影
ラファエロ作『アテネの学堂』は、古代ギリシャの哲学者・アリストテレスやプラトン、科学者らが一堂に集い、議論している様子を描いています=写真⑩=。
写真⑩:ラファエロ作『アテネの学堂』
=5月25日午後3時45分撮影
「サン・ピエトロ大聖堂」=写真⑪=の前には、17世紀に設けられた約30万人を収容できる楕円形(長さ340㍍、幅240㍍)の「サン・ピエトロ広場」があります。円柱284本を左右対称に配置したバロック様式の広場で、現在の第265代法王・ベネディクト16世の大きな写真が掲げられていました=写真⑫=。春の「復活祭」には、世界から20万人の信者が集まるという。
写真⑪:「サン・ピエトロ大聖堂」と「サン・ピエトロ広場」(手前)
=5月25日午後3時35分撮影
写真⑫:「サン・ピエトロ広場」に掲示された第265代法王・ベネディクト16世の写真
=5月25日午後3時35分撮影
「ヴァチカン市国」出入り口では、約百人いるというスイス衛兵が立番していました。青と黄の縦縞の制服は、ミケランジェロのデザインといわれ、色鮮やかです=写真⑬=。
写真⑬:制服が素敵な「ヴァチカン市国」を守るスイス衛兵
=5月25日午後4時30分撮影
次に訪れた「ヴァチカン市国」南東方向にある「コロッセオ」=写真⑭=は、紀元80年に完成した古代ローマを象徴する大理石の建物です。高さ57㍍という4階建ての巨大な円形競技場(闘技場)で、外周は527㍍。約5万人収容の観客席があり、6世紀前半まで使われました。地下には、猛獣の檻があり、捕虜や奴隷の剣闘士同士、または猛獣との冷酷な対決や罪人の処刑も見世物として行われたといい、見学して気持ちの良いものではありません。
写真⑭:古代ローマの巨大な円形闘技場・「コロッセオ」
=5月25日午後5時20分撮影
ぜひとも行きたかったのが、青春時代に観た映画『ローマの休日』の舞台となった「トレビの泉」=写真⑮、⑯=と「スペイン広場」=写真⑰=でした。「トレビの泉」は、紀元前19年の古代ローマの放水口を元に、18世紀にニコラ・サルヴィが完成させたローマ最大の噴水。アン王女に扮したオードリー・ヘッブバーン=写真⑱=が、街の雑踏を楽しみながら通り過ぎた場所です。泉に背を向けてコインを1枚投げ入れると、ローマ再訪がかなうという有名な言い伝えがあります。
写真⑮:観光客で混雑する「トレビの泉」
=5月25日午後6時20分撮影
写真⑯:見事な彫刻群に飾られた「トレビの泉」
=5月25日午後6時15分撮影
「スペイン広場」は、17世紀にスペイン大使館があったことから名付けられました。17世紀建造の彫刻「バルカッチャの泉」の背後にある「スペイン階段」を、『ローマの休日』でアン王女役のオードリー・ヘッブバーンと新聞記者・ブラッドリー役のグレゴリーペック=写真⑲=が手をつないで歩く名シーンがありました。137段ある「スペイン階段」は1720年に造られ、「トリニタ・ディ・モンティ教会」へ上る参道になっています。かっこいいグレゴリーペックのようにと、新聞記者になった私は青春の思い出を懐かしみながら同教会まで階段を上りましたが、66歳の身にはやや息が切れました。
写真⑰:「トリニタ・ディ・モンティ教会」(向こう)へ上る参道になっている「スペイン階段」
=5月25日午後6時45分撮影

写真⑱、⑲:王女役のオードリー・ヘッブバーンと新聞記者役のグレゴリーペック
=ツアーバスで放映のDVD影像から、5月25日午前9時25分撮影
『ローマの休日』のもう一つの舞台、「サンタ・マリア・イン・コスメディアン教会」にある「真実の口」にもオプションで訪ねたいと検討しましたが、時間の都合で行けなかったのが残念でした。海神・トリトンの顔をした「真実の口」は古代の井戸の蓋といわれ、うそつきが手を入れると噛まれるという伝説から付けられた名称です。私は細君ともども、「トレビの泉」を訪ねた際、きれいな泉へコインを1枚投げ入れてみましたので、ローマ再訪がかなった暁には「真実の口」に手を差し伸べたいものです。