写真①:「旧蔵内邸」の「茶室」
=福岡県築上町上深野で、2014年3月17日正午撮影
「旧蔵内邸」観覧記③
「応接間」の次には、北側の「回遊式庭園」に突き出た「茶室」=写真①=を訪ねました。庭園の眺めを意識した開放的な造りで、丸窓があり、表面に皺状の模様と凹凸がある「俵絞り」の床柱など数寄屋風の意匠が特徴です。
「応接間」の西側にある「仏間」は、撮影禁止のため生写真で紹介できないのが残念です。内陣の周囲の部分を一段持ち上げるようにした「折上格天井」には屋久杉と黒柿を市松模様に配し、壁紙に「金唐革紙(きんからかわし)」=写真②=を使った豪華な装飾。西洋の装飾革工芸を和紙で加工して模したこの「金唐革紙」の壁紙は、明治時代に流行したもので、現存するのは国内でも数例しかなく、「旧蔵内邸」のは最古級のものという。
写真②:「金唐革紙」(「旧蔵内邸」のパンフレットから)
「仏間」の北西にある10畳の「座敷」=写真③=は、大正6年の建物増築で造られ、かつては掘りごたつがありました。西側の廊下にはガラス戸を立て込み、花崗岩の切り石を幾何学形に配した当時としてはモダンな「中庭」を楽しめます。
写真③:10畳の「座敷」
「座敷」北側の「大広間」=写真④=は、18畳間が2室続き、炭坑主住宅では最大規模です。奥には、5畳の上段と3畳の神殿が並び、「旧蔵内邸」では最も格調の高い部屋とされています。
写真④:18畳間が2室続く「大広間」
「大広間」の西側にある「洗面所」=写真⑤=は、大理石の床でモダンなデザインです。
写真⑤:モダンなデザインの「洗面所」
「洗面所」に隣接した「トイレ」=写真⑥=も大理石の床で、清潔感があります。
写真⑥:大理石の床の「トイレ」
「トイレ」の北側にある「浴室」=写真⑦=は、浴槽と腰壁に白い大理石を、床には白と濃緑の大理石を市松模様に貼ったモダンなデザイン。大正から昭和初期の建物に多く使われた霜の結晶のような模様の摺りガラスで、貴重なアンティークガラスとされる「結霜(けっそう)ガラス」を貼った窓ガラスが、大正ロマンを感じさせてくれます。
写真⑦:床には白と濃緑の大理石を市松模様に貼った「浴室」