福岡市の道路の大陥没事故には驚きました。
地下鉄工事が行われていたその上部からの出水とのことですが、これが現代日本の出来事なのだと思うと、もう技術大国ではないのかと不安になります。
工法の選択の問題かもしれませんし、その工法選択も工事経費と安全と工期など様々な条件の兼ね合いで決定されたものでしょう。
迂闊なことは言えませんが、いずれにしても出水から作業員の退避、通行止めまでを迅速に行う事が出来て、事故発生後の二次被害が全く出なかったことは立派だと思いました。異常があった際の対応の想定や警察などとの連携はそつがなかったようです。
まずは陥没状態を終息させて、それから原因究明が行われることでしょうが、事故と言う単語を聞くだけで胸が締め付けられるのはそういう責任を取る立場にいたことがあるからでしょうか。
報道では24時間の突貫工事だったとのことで、そのことだけでも工期に追われている様子は伺えます。
予算や工期や制度の運用など、各場面でできるだけ余裕を持たせてあげたいと思うのですが、ともすると「余裕は無駄」と思われがちで、それを説得することは実に難しいのも現実です。
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様々なことを計画するときに、"リダンダンシー(redundancy)"という単語があります。この意味は「余剰」、「冗長性」、「多重化」などと訳されて使われますが、つまりは余裕のないカツカツ状態にするのではなく、少しずつ余裕を持たせるという事です。
道路の「う回路」などもこの多重性の説明によく使われます。「道路なんて一本だけで良くてそれを使えばよい」というカツカツの計画論では、それがダメになった時の想定ができているとは言えません。
この秋に道東を襲った台風の大雨で国道274号線は各所で寸断され、またJRも不通になり十勝と道央を結ぶ交通・物流機能は道東道一本に助けられました。
北海道の高規格幹線道路は整備が遅れていて、道東道の夕張IC - 占冠IC間の開通がされたのは2011年10月のこと。
わずか五年前までは道東道は繋がっていなかったわけで、こうした代替手段というものを何重にも用意することが安全で安心につながる強靭な国土と言えるでしょう。
計画論の余裕、工期や弾力的な制度運用という余裕。
周りを見回して、ちょっと余裕のないことに気が付いたら改善したいものです。