「自分は鬱により苦しんでいる。人前で話すことは苦手」と告白した大阪ナオミ選手への風向きが180度変わりましたね。「会見はプレーの一部だ」と主張していたジョコビッチも「サポートする」と正反対のコメントを出し、錦織も「僕もメンタルの先生にサポートを受けています」と発言。テニスプレーヤーだけでなくボルトなど世界の一流プレーヤーが全員大阪ナオミ選手のサポートに回りました。テニスの4大大会の主催者側も、ただ罰金を課す側から「大阪ナオミ選手を可能な限りサポートし支援する」と姿勢を全面転換。
彼女の勇気ある行動が、一転称賛の嵐を巻き起こし、スポーツ界とマスコミの関係はきっとこれで大きく変わるに違いないと期待します。 ・・・して、IMGは何をサポートしていたのか? の疑問は晴れません。
今回はオリンピックとコロナに関してです。最近の国民へのアンケート調査では6割程度の日本人が「開催すべきでない」と考えているとの結果が公表されていますが、政府はやる気満々。一方コロナ分科会の尾身会長は「コロナ禍での開催は普通ではない」という発言から「緊急事態宣言の中でのオリンピックなんていうことを、絶対に避けるということ。」と言葉を強めて反対の意思を表しています。
そもそもオリンピックの意義はどこにあるのか、というような形而学上の問題はさておき、ここでは私なりのやり方で、安全面からの考察を試みます。
オーストラリアの女子ソフトボールチームが来日しました。群馬県太田市でキャンプを張り、試合に臨みます。オーストラリアという国は、感染対策や外来種の防御に世界で最も厳しい国の一つです。私は90年代から00年代に、友人たちとたびたびオーストラリアでゴルフツアーをしました。ゴルフクラブやスパイクはもちろん自分のものを持ち込むのですが、到着空港での防疫上のチェックは非常に厳しく、クラブはきれいに洗ってあるかチェックされ、スパイクに及んでは、検疫所において消毒液で洗われます。単に泥や植物の種の有無だけでなく、目に見えない細菌などまで洗い流すのです。
コロナ対策においてもオーストラリアは非常に厳しい防疫体制を取っていましたが、選手団の日本への到着は先頭を切って行われました。この意味するところは、受け入れ国である日本の対策と自分たちの対策を完璧に行えば、感染リスクは極小化できるということだと思います。
オリンピック開催に当たってのコロナ感染対策は、いわゆる「バブル方式」が取り入れられています。選手や関係者の行動範囲をいわば透明で大きな風船で仕切り隔離すると言うやり方で、世界では様々な場面でかなり取り入れられていて、オーストラリア選手団もバブルの中に閉じ込められています。
従って日本人と接触のない選手の日本での感染は、ほぼ封じ込められている解釈できます。しかも選手や関係者は全員がすでにワクチン接種を済ませ、PCR検査も出国前、入国後、今後も何度も行います。ワクチンの有効度は99%以上と報告されていますので、私は彼女たちとの握手やハグは全く問題ないと思っています。接種していない私の方が嫌われるでしょうが(笑)。
こうした安全対策がされているという情報をしっかりと知らせたうえでアンケート調査を実施したら、結果はどうなるでしょう。それでも感情論から安全じゃないので反対だ、という人は少なからずいるでしょうが、私は結果がだいぶ変化する可能性はあると思います。
尾身会長は開催中の人流が多くなることを懸念しています。しかし外国からの観客はなし、もしかすると日本人も観戦はできないとなると、人流がさほど大きくなるとは思えないのです。組織委員会の見積もりではオリパラ双方で選手団1.5万人、関係者9万人以下という数字を出しています。しかもそれらは防疫対策を万全にした人たちで、一度に全員が来るわけでもありません。
それに対して通常時の東京の1日の通勤者数は、都内から都内は750万人、近隣3県からの通勤は290万人、合計1千万人強。最近はリモートワークが増えたとはいえ、決定的な変化とまでは言えません。選手や関係者はこの通勤人数に対する比率で言うとわずか1%で、しかも隔離されたバブル内に安全な人達がいるだけです。ワクチン接種の進んでいない東京では、普段の通勤のリスクの方が100倍も大きいのです。
こうして冷静に数字で比較すると、「危険だからやめろ」というのは、相当程度は感情論だということがわかります。尾身さんの言う「人流の増加がリスクを増大させる」という主張は、数字ヲタクの私から見ると「根拠の薄い主張だ」となるのです。
オーストラリア選手団の周辺で今後何が起こるのか、しっかりと注視していきましょう。火中の栗を拾う開拓団のリスクを取った彼女らは、東京五輪の救世主になるかもしれません。
女子ソフトボール選手たち、私には大阪ナオミ選手の勇気と重なって見えるのです。