アベノミクスが一周年を迎えました。今後何回かに分けて、これまでの歩みを私なりに振り返ってみたいと思います。みなさまが今後の見通しを考える上でヒントとしていただければ幸いです。
昨年の11月13日に党首会談の席上で野田前総理の解散宣言のあった日を起点にした「アベチャン指数」をこれまで折に触れて見てきました。アベチャン指数とは私が勝手に名付けた、株価の変動と円ドルレートの変動を並行して見ているものです。アベノミクスに対する市場の通信簿とも言える指数です。
では1年間の指数の推移をレビューしましょう。( )内%が昨年11月13日対比です。
日銀総裁に バーナンキ
解散宣言 黒田氏就任 緩和縮小発言 安値 1年終了
11月13日 4月3日 5月22日 6月13日 11月12日
日経平均 8,661円 12,362(43%) 15,627円(80%) 12,445円(44%) 14,588(68%)
円レート 79円 92円(16%) 103円(30%) 95円(19%) 99円(25%)
株価は昨年の解散宣言以来上昇を続け、黒田氏が日銀総裁に就任してからさらに速度を速め、5月22日のFRBバーナンキ議長の緩和縮小発言の寸前に高値の15,600円台、80%高をつけました。
そこをピークに6月13日にはちょうど黒田効果を打ち消す12,000円台のレベルまで下落しました。その後は上下を繰り返し低迷していましたが、FRBの緩和基調の継続が確認された以降は、下値不安が薄れて徐々に回復し、今週になり再び明るさを取り戻しているように思えます。
円ドルレートも昨年11月以来株価とカップリングの様相を呈し、株価と同時の5月22日に103円、昨年対比30%高のピークを付けました。その後も株価の動きとカップリングは続いていて、現在のレベルは100円程度になっています。
ではこうした株高と円安は誰が作っているのかをみておきます。
統計がつかめるのは、株式相場は東証が発表する投資家別売買動向、為替相場はシカゴIMM通貨先物ポジションくらいです。それらによりますと、株は昨年以来続いている外人買いは依然として継続しており、夏場までの10兆円レベルの買い越しが9月以降はさらに増加し、現状では12.7兆円まで膨らんでいます。
それに対して売り越しているのはもちろん日本人ですが、売り越しは個人が約半分の6兆円、年金と保険が6兆円程度です。
こうして見てくると、この1年を通して株式市場でのアベノミクスに対する好評価は外人によるところが大きいと言えます。
一方の為替ですが、実需の統計がないためはっきりしたことは不明ですが、プロの参加するシカゴ先物のポジションだけを見るなら、円売りが1兆円弱のポジションを作っています。ということは、将来はそのポジションを解消(清算)する必要から、円の買い戻しの可能性があるということです。しかしこのことだけでは株価と為替のカップリングを説明したことにはなりません。
つづく