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投資は米国債が一番シリーズ、 その3.為替レート150円でも米国債金利5%は買いか?

2023年10月22日 | 投資は米国債が一番

 10月20日のNY市場では米国債10年物金利が一時5%に乗せ、終値でも4.9%となっています。それにつられてドル円も一時150円に乗せ、終値は149.90程度まで買われています。では、この水準で10年物米国債は買えるか否かを簡単にシミュレーションしてみましょう。

 

 単純化のためにきりのいい数字を使います。「金利5%の米国債はドル円150円でも買いか」について投資した場合のブレークイーブン為替レートを計算します。この計算ですが、利付債を計算することはできません。なぜなら半年ごとにドル金利をもらう為替レートを半年ごとにすべて予想し、最後の償還時のドル円レートを計算することはとても不可能だからです。それにたいし、途中で金利をもらわずにその分を含めて償還時に一度にもらうのであれば、ブレークイーブンの計算が可能です。

 

 利回り5%で1,000ドル分の10年物ゼロクーポン債(ストリップス債)をドル円レート150円で買うと想定します。必要金額は

 

1,000ドル X 150円 = 150,000円

 

5%で10年複利運用しますと、1,000ドルが1,500ドルではなく1,630ドルほどになります。その計算はネットで複利計算サイトを見つけると簡単にできます。それを買ったときに150,000円支払っていますので、

 150,000円 ÷ 1,630ドル = 約92円

これがブレークイーブンのドル円レートです。

 

検算します。

償還額1,630ドル X ドル円92円 = 約15万円

ドル円レートが92円になっても元手の15万円は返ってくる勘定です。

 

 はたして92円まで、あるいはそれ以下にドル円が低下するか。日本の経済財政事情から将来にわたり円金利は上げることが極めて難しいと想定されます。利上げをしたら財政破綻が待っているからです。その上貿易赤字は改善が見込めません。

 貿易だけでなく資本の動きでも最近は米国債に買いが集まり、先日の投稿で書いたように株の投資家は日本株を売り、アメリカ株買いに集中している状況を考えると92円は非常に考えづらいレートです。いや、はっきり言って「100円を切る円高にはなりっこない」と私は思っています。

 さらにいま国会の話題は「やってはいけない減税」論議に集中しています。自民党は税収額が史上最高になったからそれを国民に「還元する」という愚かなことを言っています。しかし財政収支そもそも赤字で累積赤字も最高額を毎年更新している中で、減税などありえない。EUに属していたら即刻破門です。

 政府のやり方は、赤字は日銀が背負っていくから目をつぶっていて大丈夫。選挙に勝つための減税に議論を集中させ国民の目をごまかす。なんという姑息かつ無責任な政権でしょう。

 

 それをやり続ければいつかは大破綻、あるいは先日私が投稿したように「衰弱死」が待っています。その時にドル円レートはいったいどこまで安くなるのでしょう。考えるだけでも恐ろしい。

 

 まあ、そんなことが起らずとも、しっかりと金利の稼げるドルにしておくに越したことはない、それが結論です。

コメント (9)
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