今シーズン最初のスキーで、群馬県の丸沼高原スキー場に行ってきました。ここはゴンドラのふもとでも1,400mあり、終点は2,000mちょうど。とても高度が高いので、シーズン初めでも逆に終わりでも雪質はバッチリです。2,000mからの景色は素晴らしく、遠くに谷川岳、浅間山、すぐ近くに武尊岳(ほたか)が望め、それも展望台にある「天空の足湯」につかりながら眺められるのです。春になり雪が解けてから日光白根山に登る人たちはこのゴンドラの終点から登り始めます。
スキー場で驚いたことがありました。それは海外からのスキー客が一人もいなかったことです。私が毎年行く八方尾根、野沢温泉、ニセコはいずれも日本人と同じくらい海外からのスキーヤーが大勢いて、特にニセコは私がオーストラリアの植民地だと冗談で言うくらい、英語が公用語化し不動産を買いまくり、数億円もする超高級マンションがどんどん建設されているほどです。なのに東京からさほど遠くない群馬には誰一人いないのです。
SNSで評判になっていない?それは根本原因ではなく、結果だと思います。私の推定した理由は3点、
1.スキー場にゲレンデ外滑走できる場所がない
八方、野沢、ニセコはゲレンデ外の新雪をすべることができます。
2.レストラン・バーなどナイトライフを楽しめる街がない
八方、野沢、ニセコはいずれもスキー場から徒歩圏内にレストラン・バーやクラブがあります。
3.地元にプロモーションをする気力がない
1、2はロケーション問題があって改善の余地が少ないのですが、3はやる気の問題です。
一昨日のNHKで大分県の杵築市(きつき)に海外旅行客が大勢訪れているというニュースが流れていました。大分には別府や湯布院など日本でも指折りの温泉観光地があるのですが、みなさんもあまりご存じないと思われる杵築市は独自のやり方でプロモーションをしているというのです。市内にある江戸時代の城下町・武家屋敷の街並みを、着物を着て歩くのがうけているそうです。そのため着物のレンタル屋さんをオープンし、城をバックに写真を撮ってSNSにアップする。プロモーションの専門家も招き、アドバイスを受け成功したのだそうです。
では群馬の丸沼高原はどうすべきか。ヒントは山頂で偶然出会い、我々の写真を撮ってくれた81歳のスキーヤーにありました。彼は相模大野に住み、なんと毎週ここにきているとのこと。新宿からスキーバスに乗り日帰りなのですが、往復のバス代とリフト代込みで5,400円しかしないので、毎週来れるそうです。だったら東京からの日帰り雪見温泉ツアー、スキー体験のオプション付きも5,400円ポッキリで可能なはず。雪山にゴンドラで登れば2,000mの展望台の足湯から大パノラマを望めます。インスタ映え間違いなし。アジアからの旅行客に雪見ツアーはとてもうけています。長野県の八方尾根や野沢温泉スキー場でも、スキー客に交じってゴンドラに乗る観光客が大勢います。彼らは雪に触れ、雪山をバックに写真を撮って満足しています。ならば長野まで行かなくとも、群馬で十分に可能なはずです。
その上、海外からの旅行者が好む温泉がたくさんあります。我々もスキーの帰りには日帰り温泉によることが多いのですが、ここには大きな露天風呂をもつ白根温泉薬師の湯というのがあって、男女それぞれお風呂屋さんの湯舟よりはるかに大きな露天風呂が2つづつあって、とてもリラックスできます。ガンバレ、群馬県片品村!
さて、年初の恒例となりましたが、イアン・ブレマー氏率いるユーラシアグループが今年の「世界の10大リスク」を発表しましたのでチェックしておきましょう。概要と項目を8日の朝日新聞のオンライン・ニュースから引用します。
引用
ユーラシアグループが2019年の「世界の10大リスク」を発表した。米国で民主主義が揺らいでいることや、欧州でのポピュリズム(大衆迎合)政治の広がり、同盟関係の弱体化など世界中の地政学的事象のほとんどが「悪い方向に向かっている」と指摘。この状況を「悪い種(予兆)」と名付けて1位に挙げた。2位は対立が深まる「米中関係」とした。
同社は米国際政治学者のイアン・ブレマー氏が社長を務め、毎年初めに、その年の世界政治や経済に深刻な影響を及ぼしそうな事象を予測している。
19年は国際経済が好調で「比較的いい年になる」と分析。一方、ただちに起こる可能性は低いものの、深刻な危機に発展しかねないリスクは、1998年の同社立ち上げ以来で最悪の水準に達しているとした。ブレマー氏は発表会見で「大規模テロや金融危機などの危機に各国が結束する状況ではなくなった」と話した。
1位の「悪い種」の一つに挙げた同盟関係の弱体化については、「アジアでは米欧ほど影響はなく、日米同盟は強固」と指摘。その上で「韓国における米軍のプレゼンス縮小を望むといったトランプ米大統領の同盟への懐疑的な姿勢が、中国やロシアなどを利する」とした。
2位の「米中関係」については「たとえ通商摩擦を解決しても、相互信頼は崩れた」「構造的な競争関係は技術、経済、安全保障分野に広がった」と分析。「双方とも武力衝突は望まなくても、南シナ海などでの偶発的事件が全面的な外交危機になる可能性は高まっている」と予測した。
2019年 世界の10大リスク
(米コンサル会社ユーラシアグループの報告書から)
1 ★悪い種 米欧政治の混迷、同盟関係の弱体化など
2 ★米国と中国 技術、経済、安全保障をめぐる摩擦が激化
3 サイバー攻撃 抑止力が利かない問題も露呈へ
4 欧州のポピュリズ 欧州連合の弱体化も
5 ★米国の内政 トランプ大統領不正追及で混乱
6 技術革新、冬の時代 安保上の懸念などで国際協力が停滞
7 ★国際協調に背を向ける指導者たち トルコ、ブラジルなど
8 メキシコ 左派の新政権の経済政策に懸念
9 ウクライナ ロシアとの外交・軍事的な緊張
10 ナイジェリア 大統領選挙(2月)の結果次第で混乱も
引用終わり
★は私が勝手にトランプ関連として付けた印で、要注意と思っているものです。私は昨年の10大リスクにトランプ関連がほとんどなかったことを「おかしい」と指摘しました。そして実際は昨年も毎日のように世界はトランプに振り回され、年末年始もアメリカ政府の閉鎖やシリア問題などトランプに振り回されていいます。そのためか今年はブレマー氏の掲げた10のうち4つがトランプ関連リスクになっています。項目7にはアメリカが表題にありませんが、「国際協調に背を向ける指導者たち」の親分格は間違いなくトランプなので★を付けてあげました。
去年との違いを見るために下記に去年のリスクを掲げます。私がつけた★は一つでそれもイラン関係だけでした。今年との違いが際立ちます。
1位 「真空」を愛する中国
2位 偶発的なアクシデント
3位 テクノロジー分野での世界的「冷戦」
4位 メキシコ
5位 ★アメリカ・イランの関係
6位 組織・機関の衰退
7位 保護主義2.0
8位 イギリス
9位 南部アジアにおけるアイデンティティ政治
10位 アフリカの安全保障
以上が今年と去年のブレマー氏の10大リスクの比較ですがトランプリスクのオンパレードで、私はむしろ安心しました(笑)。
昨年末には世界の株式市場に激震が走りました。原因は1.世界景気のスローダウン見通し、2.米中関係悪化、3.FRBによる引き締めと言われていて、私もその見方に賛成です。安倍政権同様、トランプ政権も株式市場の動向が政権の人気を左右する構造のため、相場の下落とともに特にトランプは無茶をしかねません。アメリカ政府機関の一部閉鎖は22日間に及び、80万人の公務員が休職あるいは無給で勤務という異常事態が継続しています。民主党とトランプのチキンレースは果たしてクラッシュに至るのか見ものです。
ブレマー氏のリスクアセスメントは地政学上のリスクに限定されているため、経済や金融市場のリスクはあげられていません。しかし今年は地政学上の10大リスクに加えて、経済的リスクにも十分に注意が必要だと思います。