エコカーの切り札として、家庭でも充電できるタイプのプラグインEVが脚光を浴びています。明日から始まる東京モーターショーでも注目はEVのようです。
環境汚染のひどい中国は、ガソリンを使わない電気自動車への切り替えを目指すと宣言し、そのことで世界の注目を集めています。販売台数が世界一多い中国ですから、世界の自動車メーカーが右へナラエせざるを得ません。日本のメーカー、アメリカのメーカー、欧州のメーカーも巨大市場中国の動きを追うことになります。年間販売台数は中国2,800万台、アメリカ1,800万台、日本500万台で、中国が世界の3分の1を売っていますので、「中国中国と草木もなびく」状態です。ちなみに日経オンラインにあったEV車の販売に関するニュースを引用します。
「IEA国際エネルギー機関がEVの国際的な普及団体などと組み、世界のEVとプラグインハイブリッド車(PHV)の台数を集計した。16年の累計台数は前年比6割増えて過去最高を更新。世界の中でも中国は65万台と倍増し、米国の56万台を追い抜いた。中国の世界シェアは前年の25%から32%に上昇した。」
EVは電気モーターのみ、プラグインハイブリッド車とは、エンジンとモーターの両方の動力で動くのは普通のハイブリッドと同じですが、電池への充電はプラグをコンセントに差し込むだけでもできるというタイプの車です。普通のハイブリッド車の充電は、エンジンの動力やブレーキを利用します。
その中国が電気モーターだけのEV化に本格的に舵を切るというニュースが流れました。ブルームバーグの9月10日記事を引用します。
「中国政府は、化石燃料車の販売終了時期について期限を設ける方針だ。自動車メーカーに電気自動車(EV)開発の取り組みを加速させるよう促すことが狙い。工業情報省の辛国斌次官は9日、天津の自動車フォーラムで、化石燃料車の生産・販売の終了に向けたスケジュールの作成に政府が他の規制当局と取り組んでいることを明らかにした。これが環境や中国自動車産業の成長に大きな影響を与えるとの見方を示した。」
それに先立ちフランスではマクロン大統領が2040年にガソリン車とディーゼル車の販売を禁止すると宣言し、イギリスもそれに続きました。世界はEV化へ大きく舵を切っています。
EVのもう一つの注目点は、ガソリン車に比べて技術的に簡素なため、既存の世界的大メーカーの存立基盤を揺るがす存在になりうるという点です。エンジンに代わってモーターが駆動を担うと、自動車そのものが電子部品の集合体になり、相当な低価格化が進行する可能性があります。部品のモジュールを調達して簡単に組み立てられるようになるのです。
具体的には部品点数ではガソリン車の3万点が2万点程度に、つまり3分の1も削減できるという事が挙げられています。この影響は完成車メーカーだけでなく、自動車産業を支えている巨大なピラミッドを形成している部品メーカーにも言えることで、完成車メーカーはEVシフトで生き残る可能性があったとしても、エンジン回りを作っている部品メーカーの多くは行き場を失う可能性すらあります。EVはエンジン回りとそれに続く駆動部品が圧倒的に少ないためです。
自動車産業はこれまで大メーカーの寡占化が進み、今後もさらなる寡占化が進むとみられていましたが、EVへの傾斜によって全くわからなくなりました。アメリカではデトロイトからシリコンバレーへと自動車会社の拠点が移動するのではないかと言われるほどです。
シリコンバレーの自動車メーカーの代表格であるテスラモーターは、台湾を中心とする海外からモーターをはじめとする電子部品を調達し、組み立てだけを行っているメーカーです。ちなみにテスラとは人の名前ですが、発明の巨人トーマス・エジソンの直流電気の供給に対抗し、交流電気の供給法を開発。世界の交流電気普及の基礎を作った人です。巨大自動車メーカーに挑むイーロン・マスクらしいネーミングです。
では実際にEVはCO2の排出をどの程度削減できるのでしょうか。というのは電気自動車とは言え、充電するには電力が必要で、火力発電やLNGの発電に頼る充電ではCO2を排出してしまうからです。その計算をきちんとしている資料は見当たらないので、マツダのディーゼルエンジン開発者人見氏の次の言葉を、ダイヤモンドオンラインから引用します。マツダはディーゼルエンジンを進化させれば、EVに匹敵するCO2の削減を実現できると頑張っているメーカーです。
「人見氏は、それだけに「地球の課題認識」としてエンジン車の実用燃費改善ターゲットをEVに置き、『SKYACTIVエンジン車で実用燃費を10%程度改善すれば、平均的発電方法で共有された電気を使うEVにCO2で追いつく。火力発電で最もCO2発生量の少ないLNG発電で供給された電力で動くEVにも、30%改善で追いつく』と、最近のEV転換の過熱化に対してWELL-TO-WHEEL(燃料採掘から車両走行まで)の観点から「EVはまやかしで、要らない」とまで言い切る。」
井戸から車輪までの総エネルギーを換算すると、たとえEVでも10-30%のセーブにすぎないと言っているのです。
先週のブログで私は国際陶磁器フェスティバルの行われている岐阜までドライブしたと申し上げました。理由はドアツードアの移動時間が新幹線とレンタカーでもさほど変わらず、交通費はなんと二人で5万8千円が1万8千円と4万円もセーブできるからです。つまり差額で宿泊代が出てしまうのです。
実際の交通費ですが、高速代が往復で1万6千円。ガソリン代は、走行距離はちょうど700kmでしたが、リッター当たり28km走ったため、25リッター。うちの近くのスタンドで125円でしたからたったの3,125円。実際には見込みを下回る1万5千円程度で済んでしまいました。
リッターあたり28kmって、ホント?
と思われるかもしれませんが、もちろんホントです。うちの車はホンダのシャトルというワゴン型ハイブリッド車で、1,500CCです。
であれば、燃費代のセーブは3割どころではありません。四輪駆動だった前の車に比べると、半値・八掛け・2割引き。なんと7割減という驚異のセーブです。
何故一気にEVにしなかったかって?
充電設備のありかをいちいち気にしなくてはならないEVは、運転していてもきがきじゃないのでドライブはとても無理だからです。
EVが本当にCO2の削減に役立つのは、化石燃料を使わない自然エネルギーによる発電が大半を占めるようになってからでしょう。
以上、林の勝手な「EVの未来」についてでした。