2016年10月29日(土) 2:00pm サントリー
ベートーヴェン 交響曲第4番変ロ長調 10′10′6′7′
Int
シューマン 交響曲第4番ニ短調(1851 revised ver.) 10+5+5+7′
ハルトムート・ヘンヒェン 指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団
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下ごしらえと下味がかなりよくわかるもので、先週のマリア様の名演から日にちがあったせいかどうか、きっちりと仕込んできた聴き応え十分の演奏でした。それに、せっかく手間ひまかけておいしく出来上がった料理に、生卵をぶちかましてすべて同じ味にしてしまうようなひどいものが世間ではよくありますけれど、そのようなぶちかましもなくて、見た目も中身も美しいもの。彫琢された解釈と演奏はヘンヒェン、前回来日時のモーツァルトを思い出させる素晴らしい演奏となりました。
前半のベートーヴェンは楽章を追うごとに活魚のような生きの良さになっていきましたね。埃っぽいアンサンブルが時として多いオーケストラですが、この日は水を得た魚、その水のようなウェットでありながらみずみずしいという、わりと離れ業的な変わりようにびっくり、感服。
私の席からはオーケストラの奥行き感が毎度よくわかるのですけれども、いつにもましてストリングの粒たちの良さと滑らかなシンコペーションが際立っていて、そして奥からは湧水のように鳴るブラスセクションが弦を壊さず品の良い響きとなって、コントロール、整理された音響が生理的快感みたいなものを強く感じさせるに至る、本格的な演奏でしたね。上岡さんになってから響きの思い起こしがこのオケに出てきたのかもしれませんですね。そのような良い作用も少し感じられました。
後半のシューマンは、前半プロで響いた本格的な鳴りのブラスが一筋の光のようで、柔らかい稲妻みたいな表現は、特にフィナーレ楽章への長いアタッカからのブリッジでは、ちょっとクラクラするようなサウンド、ピアニシモからフォルテへの自然な息吹のようなものを感じさせてくれました。このやにっこいニ短調が生き生きしている。
この版のせいかどうかはわかりませんが、弦の曇り空は晴れ、ブラスは節度ある輝きとハーモニー、シューマンライクなあたりを一歩踏み越えたような演奏だった。ヘンヒェン会心の棒。
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という具合で演奏自体は大変に充実したものでした、が、
演奏会としては短すぎる。終わったのが3時半。彫琢にはこの2曲が限界だったのかとうがった見方をされかねない。昨今2時間半ロングの演奏会が頻繁にある中、これでは企画面での倒れ。前半頭にコリオラン、後半頭にマンフレッド、休憩は15分、これでお願いしますよ。
おわり