2016年11月10日(木) 5:00-9:10pm 神奈川県民ホール
NBS&日経 プレゼンツ
モーツァルト 作曲
ジャン=ピエール・ポネル プロダクション
ウォルフガンク・シリー リヴァイヴァル・プロダクション
フィガロの結婚
キャスト(in order of appearance)
1.フィガロ、アレッサンドロ・ルオンゴ(Br)
2.スザンナ、ローザ・フェオーラ(S)
3-1.バルトロ、カルロ・レポーレ(Bs)
3-2.マルチェリーナ、マーガレット・プラマー(Ms)
4.ケルビーノ、マルガリータ・グリシュコヴァ(Ms)
5.アルマヴィーヴァ伯爵、イルデブランド・ダルカンジェロ(BsBr)
6.バジリオ、マッテオ・ファルシェール(T)
7.伯爵夫人、エレオノーラ・ブラット(S)
8.村娘、カリン・ヴィーザー
9.バルバリーナ、イレナ・トンカ(S)
10. クルツィオ、カルロス・オスナ(T)
11.アントニオ、イーゴリ・オニシュチェンコ(Br)
リッカルド・ムーティ 指揮
ウィーン国立歌劇場管弦楽団
ウィーン国立歌劇場合唱団
(duration)
序曲 4′
ActⅠ 43′
Pause 3′
ActⅡ 50′
int
ActⅢ 42′
Pause 5′
ActⅣ 43′
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楽しさ極めつくし、ビューティフルで格調高く、極上モルトの上澄みを口に浸す贅沢気分。最高に楽しめた。モーツァルト最高。フィガロ最高。
ウィーン国立歌劇場来日3つ目の出し物。昨晩のワルキューレのひどいレヴェルのオーケストラとはうって変わって、目から鱗が100枚ほどはがれ落ちる鮮やかさ、絶好調ウィーン・フィルみたいになってしまった。
昨日今日と連日の公演は場所も変えてあるし、ムーティがここでじっくり仕込んだのだろう。どう聴いてもこちらが本体。ワルキューレのほうは別動2軍ではないだろうか。思うに10月25日からのアリアドネ、そして今日からのフィガロ、こちらが本体のオーケストラで、ワルキューレは舞台オケというのが主力のような気がする。オケ規模が違うとは言え、腕前が明らかに異なる。指揮者のレヴェルも同様な気がする。
ピットの指揮者と舞台が丸見えの席で両方ともよく見える。ムーティのコントロールは素晴らしく、オケメン全員に染み渡っている。出入りのときはメンバーによく話し込んでいて、これが結構長いのだが、もはや神様が動きしゃべっている感じ。
さっと切り上げる例のアクションも見事にきまっている。小さめの動きから引き締まった音楽があふれ出ている。オーソリティーの凄まじさをまじまじと見せつけられた。
神様オーソリティーであればこその引き寄せられた豪華キャストなんでしょうね。みなさんの歌唱には唖然。そして動きがいい。もたもたする人はいない。機敏な動きで連携が良く取れていて、観ていて気持ちがいい。若いときのムーティを見ているようだ。
ムーティ会心の棒、ご本人も満足そう。カーテンコールも盛り上がりました。
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ポネルの演出は今でも際立っていると思います。キャストの凄さもあるし、カップリングがまず明確でそのフレーム感覚がよく理解できる動き、配置、これにうまく歌がのってくる。
伯爵&伯爵夫人、
フィガロ&スザンナ、
バルトロ&マルチェリーナ、
ケルビーノ&バルバリーナ、
見事にそろったキャストで全員聴きごたえ満点。
伯爵のダルカンジェロは強面で歌も同じ。それがまたあるシチュエーションではダダコネ地団太踏んだりのアクションなどあったりして、落差が大きすぎて自然に笑いが出る、楽しめる。
声がデカいのは今回の来日の方々全員そうですけれども、ダルカンジェロも迫力ありますね。下から上までバシッときまったバスバリトン。太ってなくて動きもさっぱりしていて最高の歌い手。そういえば今日のキャスト、太めの人は誰もいない。
ダルカンジェロに対等に歌える夫人はブラット。こういってはなんですが、もはや横綱相撲を聴いている様相を呈してきました。2幕頭の独唱、極めて美しいもの、ホールに淀みなく響き渡る声は圧巻です。素晴らしすぎるお二方の歌唱。最後はきっと仲良くなるだろうとストーリーを追わずともわかる。
フィガロとスザンナ、機敏な動きと歌。適役。
フィガロはこのキャスト達の中ではもうちょっとだけ声が出るといいなと贅沢なことを言いたくなるところもありますが、あれだけ動いて歌うのだから大変だろうとは思います。歌は安定していますね。
スザンナのフェオーラ、この演出のせいかどうか、慎ましやかなところは無くて、むしろ舞台を引っ張っていっている。フィガロや伯爵夫妻の具合から見て、もう、スザンナが主役ではないのかといったところもありますね。全くやわでないスザンナ。これが歌もすごい。少し厚めのソプラノに感じるのは馬力のせいかもしれません。プリターニのエルヴィーラも歌ったことがあるようで、こちらは歌声を浴びるだけで満足。
バルトロとマルチェリーナ。
いつもみるフィガロではだいたいこの二人、太めのキャラクター要素の濃いものなんだが、マルチェリーナのプラマーはむしろキュートな気品が漂うものでそれを衣装で少し隠しているのではないかと思えるぐらい、この演出には必要なんですよね。こういったところが大事。プラマーはジャズシンガーのトレーニングも受けているとある。終幕のアリア、きまってました。
ケルビーノとバルバリーナは動きがポイント、小さな動きがタイミングよく、よく目立つ。味付けとしては最高ですね。ケルビーノのグリシュコヴァ、1987年生まれとある。まあよく動ける。適役ですね。スザンナ主役みたいなシーンでは言うことをきくおりこうさん、素直だったり、また純粋無垢おてんばだったりと、いろいろなキャラクターを出してくれて大いに楽しめた。もちろん歌も抜群。回りの連中と張り合っています。もう、ゴロゴロ実力者がそこかしこに転がっている雰囲気。
ということで、1幕から終幕の次々と繰り広げられるアリアの山まで盛りだくさん。全部完ぺきにきまっていました。気品のあるみなさんの歌い口にはほれぼれ。エンジョイしました。
あと、合唱はソリッドに引き締まっていて、筋肉質と言ってもいいほど。ムーティ感覚ですね。
この一日物語あっというまの出来事。
ムーティの統率力には恐れ入る。脱帽です。レヴェル違いますね。
ああ、楽しかった。
おわり