河童メソッド。極度の美化は滅亡をまねく。心にばい菌を。

PC版に一覧等リンクあり。
OCNから2014/12引越。タイトルや本文が途中で切れているものがあります。

2221- 岡田博美 ピアノ・リサイタル、2016.11.12

2016-11-12 23:32:00 | リサイタル

2016年11月12日(土) 7:00pm 小ホール、東京文化会館

三善晃 アン・ヴェール  5′
ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第30番ホ長調op.109 4+2′12′
矢代秋雄 ピアノ・ソナタ(1960) 3′2′8′

Int

ドビュッシー 12のエチュード  22′22′

(encore)  
三善晃  海の日記帳より サンゴの唄 2′
ベートーヴェン エリーゼのために  3′
矢代秋雄 夢の舟  2′

ピアノ、岡田博美


岡田さんを聴くのは、2012年9月3日の、
ベリオ 協奏曲第2番エコーイング・カーヴ
以来かと思う。
今日のプログラムは、矢代秋雄 没後40年と銘打っている。
4プロ中、矢代作品はひとつであとは関連もの。岡田さんのCD群をみているとそれとも重なるので、お得意もの、しゃれたプログラミングと思います。

音符が一つずつ立っているようなおもむきでソリッド、聴く方としてはソノリティの良さを感じるとともに極めてクリアな肌触り。後半のドビュッシーではそれがステンドグラスのように模様を描きながら流れる。一個のインストゥルメントとは思えないような多彩な響きと腕前に感動しました。見た目のストイックさ、というよりもあっさりさ、などというのは失礼ながら、そのようなものとはまるでアナザーワールドの快感。ノミナルごときな物差しが脳みそからワイプアウトされていくような世界を垣間見ました。

ベートーヴェンの30番31番32番の世界。30番は少しハンマーな世界の余韻が染み出ているような気もする。なにか途中から始まったかのような31番。この30番というのは必要なものは自然と、あるべきところにあるものだなあという感じ。まだ、形を追うのかなどと脳裏をかすめたりするのだが、まぁ、このベートーヴェン、ベトソナ・ワールドに底はありませんな。
第3楽章の深みを魅せつけてくれた岡田さんの演奏、色々とシンクロしていました。良かったです。
今日の冠リサイタル、矢代さんのピアノ・ソナタはベトソナ30にインスパイアされたものということのようですけれど、なんだか全然違う感じ。フォルムのインスピレーションだったのかしら。各主題をどのような策で作っていくかというあたりの触発なのかもしれませんね。
でも、よく聴くと、響きが少し似ているような気がしないでもない。ちょっと横道的に思い出したのが、リンドベルイのピアノコンチェルト2番、あれって一旦つかんでしまえば、最初から最後までモロ、あの曲とわかるのだが、そのようなねらいのある曲なのだろうか。矢代さんはずいぶんと若くして亡くなってしまいましたね。いまさらながら思います。

頭に朋友だったのかどうか詳しいところはしらねど、三善さんの作。
ベトソナ30、矢代、そして3曲目にアン・ヴェールを置いたらすごく理解がすすむだろうなあ、などと素人が聴くアトモスフィアはその程度。なれど、この3作曲家、岡田さんのピアノでもっと聴きたくなりましたね。なにか心を駆り立てるものがある。


アンコール3つ。プログラム前半の3作曲家の品を、プログラムと同じ順番で。
そしてこれら3佳作、それぞれの本プロの作品とはまるで真逆なナイーヴでメロウ、メルヘンチックな響きも大いに感じさせてくれる。
こんなことは計算ではなくて、ナチュラルな岡田マジックなのでしょうね。プログラム・ビルディングはこのようにして作っていくものだという話なのだろう。予期せぬ予定調和。
いいリサイタルでした。ありがとうございました。
おわり