くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「ことり屋おけい探鳥双紙」梶よう子

2014-09-07 19:29:22 | 時代小説
 テーマの源泉は「青い鳥」でしょうか。
 梶よう子「ことり屋おけい探鳥双紙」(朝日新聞出版)。
 ことり屋というのは、おけいの夫羽吉が始めた店。三年前、青鷺を捕らえるために旅に出て、消息を絶ちました。おけいはその留守を守っているのです。
 羽吉の声色で毎日呼びかけてくる九官鳥の月丸。カナリアが好きでよく店を訪ねてくれる曲亭馬琴。隣の鳥籠屋や、近所の古着屋。そして、ふとしたことで知り合った同心の永瀬八重蔵。
 雑穀屋の二人の息子のことを描いた「まよいどり」が好きです。
 弟をかばって積み荷の下敷きになり、歩くことができなくなった与志郎。その遺体が大川で見つかります。
 与志郎と弟とは母親が異なり、店を継ぐのは弟の方がいいのではという話も出ていたとか。その弟は商用でしばらく戻らない。
 おけいは、与志郎が飼っていた鳩がいないことが気にかかりますが……。
 与志郎はある娘と鳩を介してやりとりをしていたのです。
 やりきれないものが残りますが、美しい物語でした。
 

「人生相談。」真梨幸子

2014-09-06 20:16:32 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 人生相談が大好きなわたし。この本も発売から気になっておりました。
 真梨幸子「人生相談。」(講談社)。構成が巧みで、非常におもしろい。苗字とか名前とかペンネームとかが混在して、ラストに向かって収斂していくのが魅力的でした。
 太平洋新聞の連載、「よろず相談室」。読者からの様々な相談が寄せられます。
 はじめに登場するのは、いつの間にか自宅に同居するようになった家族が、居候の分を越えていることに苛立つ女子高生から。続いて職場の苦手なお客さんのこと。騒音トラブル、セクハラ、大金を拾った、などなど。西城秀樹が好きでたまらないなんてのもある。
 その人生相談から派生する短編がどんどんつながって長編になります。
 この方、「イヤミスの女王」として有名ですが、この細やかで大胆な手法! 小説講座がそんなに絡んでくるのは驚きましたが。
 メジャー小説家武蔵野寛治をめぐるあれこれが好みでした。

「アイスマン」

2014-09-05 20:35:27 | 歴史・地理・伝記
 何度かトライしても、なかなか読み終わらない本というのが時々あります。わたしにとって、「アイスマン」がそれ。
 今日返却したので詳細を忘れてしまいましたが。
 五千年前の死体が雪山で見つかった事実を追ったノンフィクションです。興味あったものの、借りるたびに読まないまま。
 ところが、このアイスマンが発見されたのは、9月19日、息子の誕生日だというではありませんか。
 いや、ほかにも正岡子規の忌日とか苗字の日とかあるんですけど、これは読んでみようと思いました。
 アイスマンの近くには、銅製の斧や防寒のケープなども残っており、その年代や文化的な背景を推測していくと、五千年前に羊を飼っていた男性なのではないかということになります。家族からは少し離れていたらしい。
 研究のためにアイスマンは冷凍と解凍を繰り返されているのだとか。
 東大や東北大学の研究グループの写真があったので、執筆者は日本人だと思っていましたが、翻訳でした……。

 それから、八割くらい読んで返してしまいましたが、宮下奈都の「はじめからその話をすればよかった」。宮下さん自身の作品解説や読んだ本、映画の感想。掌編小説もあります。
 福井から大雪山に引っ越したんですって! 
 子どもさんの年齢を考えると、末のお嬢さんはうちの娘と同じ年のようです。
 ブルーハーツの話題とか、合唱の「cosmos」とかも、親近感があります。同じ世代を生きている感じ。(宮下さんの方が年上ですが)
 アーチェリーの山本さんのことも、印象に残ります。
 で、記憶していた好きな映画を見直したら、自分が感激したはずの場面がなかった、というエピソードが、わたしとしては気になります。他の作品と混同したのか、宮下さんがいつの間にか細部を補ってしまったのか。
 「窓のむこうのガーシュイン」も読んでみます。


 ちょこちょこ読んではいるんですが、感想をまとめる時間が取れないというか。仕事のストレスで疲れているというか。
 最近は「月刊少女野崎くん」をエンドレスで読んでます。
 千代と鹿島が好き。野崎くんも、ファンです!

「キャベツ炒めに捧ぐ」井上荒野

2014-09-03 21:33:33 | 文芸・エンターテイメント
 とにかくおいしそうなんですよ、と聞いたので読んでみました。
 井上荒野「キャベツ炒めに捧ぐ」(角川春樹事務所)。
 惣菜屋の「ここ屋」で働く江子、麻津子、郁子。この三人はだいたい六十歳。「来る、待つ、行く」という言葉と名前の語呂が合うということで、郁子の採用が決定したんだそうです。
 郁子は半年前に夫を亡くしたばかり。江子は、共同経営者だった女性と再婚したいという夫と八年前に別れ、麻津子はまだ独身です。
 わたしが最も気になったのは江子。別れてからも元の夫白山に連絡するのを止められません。ときに無邪気な様子で二人の家を訪ねてしまう。
 いつもはきゃはははと声をたてて笑うような彼女の、どうしようもない葛藤を感じます。
 白山が作るひろうすが食べたいなあ!
 お惣菜屋さんとあって、ちょこちょこと登場するおかずがおいしそうなんです。茸の混ぜごはんはこんな描写。
「シメジと椎茸とエリンギと牛コマ少しを炒めて醤油と味醂で味付けして、バターをひとかけら加えて、炊きたてのご飯に混ぜる。青ネギの小口切りも最後に散らす。炊き込みごはんよりもボリュームがあって、チャーハンよりはあっさりしている。」
 茄子の揚げ煮、茸入り肉じゃが、秋鮭の南蛮漬け、蒸し鶏と小松菜の梅ソース、豚モモとじゃがいもの唐揚げパセリソース、白菜とリンゴとチーズと胡桃のサラダ、さつまいもとソーセージのカレーサラダ、ひじき煮、コロッケ、浅漬け。
 さつまいもと烏賊の炒め煮、ロール白菜、新じゃがと粗挽きソーセージのニンニク炒め、水菜と烏賊のサラダ、牛すじ大根、カキフライ、じゃこ入り大根菜めし。
 麻津子は、恋人だった幼なじみと別れてからは親密な相手もできず、いろいろと悩んでいました。でも、じっくり聞いてみたいような気もします。

「ほんの一行」和田誠

2014-09-02 05:06:22 | 総記・図書館学
 図書館で借りようと思ったら、検索機で貸出可だったのに、本は、ありませんでした……。
 一週間後、二週間後と通って、やっと発見。和田誠「ほんの一行」(七つ森書館)。
 わたし、和田さんの文章が好きなんですよ。特に、本を語るのが。だから、この本はストライクゾーンの中心です。
 和田さんが装丁した本の中から、印象的な一行を取り出して、著者とのあれこれを語る。基本的に一人一冊(例外もあります)ですから、和田さん版百人一首(冊?)ですよね。
 結構古い本も多いので、これから読んでみようとすると、難しいかもしれません。例えば、浅倉久志「ぼくがカンガルーに出会ったころ」(国書刊行会)は2006年、山田太一、斉藤正夫、田中康義、吉田剛、渡辺浩編著「人は大切なことも忘れてしまうから 松竹大船撮影所物語」(マガジンハウス)は1995年、遠藤周作編「話し上手聞き上手」(新潮社)は1986年。
 いちばん古いのは「どくとるマンボウ昆虫記」(中央公論社)1963年。新しいのは2011年草森紳一「記憶のちぎれ雲」(本の雑誌社)です。
 で、読んでみたいのは、石橋喬司「IFの世界」(講談社文庫)! わたしはあんまりSF読まないんですが、寺山修司との関わりを紹介するなど、和田さんの語りがおもしろくて。
 あとは、サモアの酋長ツイアビがヨーロッパについて語る「パパラギ」(立風書房)も読みたいですね。1981年刊とのこと。
 わたしが中学生のころ、これ読書感想文コンクールの課題図書だったような。
 ソフトバンクから文庫で出ているようです。探してみようかな!

「ドードーを知っていますか」ピーター・メイル

2014-09-01 08:37:03 | 自然科学
 ベネッセ、この本、再販してくれないかなあ。今のわたしには持っていたいジャンルなんだけど。
 ピーター・メイル、ポール・ライス 文/訳 斉藤健一。絵はショーン・ライス。「ドードーを知っていますか」。
 失われた動物たちの姿が、独創的な絵とともに、紹介されています。
 取り上げられているのは、ドードー、ミイロコンゴウ、クアッガ、オオウミガラス、バライロガモ、ハワイオーオー、スカラーカイギュウとメガネウ、ブローボック、クリスマスジネズミ、リョコウバト、オーロックス、ホオダレムクドリ、グアダルーペカラカラとアカハシボソキツツキ、フクロオオカミ。
 印象に残るのは、ハワイオーオーの羽根を使ったケープが大流行して、かの鳥の絶滅を招いたというところ。現存するケープには、かなり高い価値がついているそうです。
 ミイロコンゴウは、決しておいしい肉ではないのに絶滅したというのも、結構ショックですよね。これまでも、人間の濫獲によって絶滅した動物たちの話を読んではきたのですが、なんというか……生活に必要とはいえないことでも、レジャーや虚栄心のために殺戮したり濫獲したりするのは、どうなのかと。無尽蔵にあるわけではないことには、思いいたらなかったのでしょうか。
 オスとメスの嘴の形が異なっていて、つがいで虫をとるホオダレムクドリ。動物園で飼われていた最後の一匹が死んでから四年後に、やっと政府による保護が決まったフクロオオカミ。
 それから、アメリカの空を埋め尽くすほどいるといわれながら、絶滅したリョコウバト。マーサと呼ばれた最後のハトが死んだのは、1914年の今日、9月1日だそうです。