くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「キャベツ炒めに捧ぐ」井上荒野

2014-09-03 21:33:33 | 文芸・エンターテイメント
 とにかくおいしそうなんですよ、と聞いたので読んでみました。
 井上荒野「キャベツ炒めに捧ぐ」(角川春樹事務所)。
 惣菜屋の「ここ屋」で働く江子、麻津子、郁子。この三人はだいたい六十歳。「来る、待つ、行く」という言葉と名前の語呂が合うということで、郁子の採用が決定したんだそうです。
 郁子は半年前に夫を亡くしたばかり。江子は、共同経営者だった女性と再婚したいという夫と八年前に別れ、麻津子はまだ独身です。
 わたしが最も気になったのは江子。別れてからも元の夫白山に連絡するのを止められません。ときに無邪気な様子で二人の家を訪ねてしまう。
 いつもはきゃはははと声をたてて笑うような彼女の、どうしようもない葛藤を感じます。
 白山が作るひろうすが食べたいなあ!
 お惣菜屋さんとあって、ちょこちょこと登場するおかずがおいしそうなんです。茸の混ぜごはんはこんな描写。
「シメジと椎茸とエリンギと牛コマ少しを炒めて醤油と味醂で味付けして、バターをひとかけら加えて、炊きたてのご飯に混ぜる。青ネギの小口切りも最後に散らす。炊き込みごはんよりもボリュームがあって、チャーハンよりはあっさりしている。」
 茄子の揚げ煮、茸入り肉じゃが、秋鮭の南蛮漬け、蒸し鶏と小松菜の梅ソース、豚モモとじゃがいもの唐揚げパセリソース、白菜とリンゴとチーズと胡桃のサラダ、さつまいもとソーセージのカレーサラダ、ひじき煮、コロッケ、浅漬け。
 さつまいもと烏賊の炒め煮、ロール白菜、新じゃがと粗挽きソーセージのニンニク炒め、水菜と烏賊のサラダ、牛すじ大根、カキフライ、じゃこ入り大根菜めし。
 麻津子は、恋人だった幼なじみと別れてからは親密な相手もできず、いろいろと悩んでいました。でも、じっくり聞いてみたいような気もします。