くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「八月の光」「光のうつしえ」

2014-09-15 06:04:16 | YA・児童書
 朽木祥の原爆ものを二冊。「八月の光」(偕成社)と「光のうつしえ」(講談社)です。
 今、中学生におすすめする本を聞かれたら、迷わずにこれを紹介します。わたしは、中学一年生の夏に何か平和に関する本を読んでくるように話すのですが、今年は教科書の「碑」をそのまま読んだとか、わたしが紹介した「生ましめんかな」で書いてきた子が例年よりも多くて、複雑ではありました。
 それに付加しての一冊を、探してほしいからなのですが。(もちろん、きちんと課題に向き合った子も大勢います)
 その中で、クラスのAちゃんが読んできたのが「八月の光」なのです。
 わたしも読んでみるよ、といって、手に取ったのですが、ああ、「碑」と平行して読むならこの本は最適でした。図書室に入れなければ。
 この夏、義両親が広島を訪れて、原爆忌直前の平和公園を歩いたのです。実際に目の前にすると、映像ではわからなかった強い衝撃が伝わってきたと話していました。
 「光のうつしえ」は、投下から二十五年がたったときが舞台。中学生の希未は灯籠流しの夜に見知らぬ女性から声をかけられます。
 母が流す、誰の名も書き入れられない灯籠。
 また、お墓参りでは美術の先生が、亡くなった婚約者の墓を訪ねる姿も見かけます。彼は、最後に会った日に冷たい言葉を投げてしまったことを後悔している。
 もう二度と会えないとは、思っていなかったから。
 その後悔が、非常に胸を締め付けるのです。先生は、彼女の情報を探して市内を歩きますが、見つかったのは自分が贈った櫛だけでした。
 希未たち美術部員は、戦争について身近な人に話を聞き、それを絵にして発表することにします。
 一人ひとりに、悲しみの物語がある。そう感じさせられる作品でした。