くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「あたたかい水の出るところ」木地雅映子

2014-09-14 11:07:16 | YA・児童書
 温泉、ということなんですけどね、極端に言えば。
 でも、木地雅映子ですから。しかも、光文社(最近、いいですよね! 注目しています)。
 学校帰りは銭湯に行き、心ゆくまでおふろを堪能する高校生柚子。ある日、銭湯仲間の平松さんと外に出たら、この場には合わないゴツいバイクが停まっております。 
 バイクの主は福一といって、どうも医大生らしい。柚子のお風呂バスケットを見て、アレッポの石鹸を見抜きます。(柚子も、彼がブラットワンギのココナッツシャンプーバーを使っていることを嗅ぎ当てますが……)
 いろいろあるんですが、物語の下敷きは「シンデレラ」です。しかも、機能不全家族。おばあちゃんはちょっと記憶障害があって施設へ。両親の仲は悪く、姉は短大で合コンばかり。妹は成績がよくて期待されていますが、どうも学校生活はうまくいっていないらしい。なにしろ、柚子を階段から突き落そうとして失敗したこともありますから。
 柚子は家族がだれもやらない家事を、ひとりでこなしていきます。家族の歪みが柚子の上にのしかかっている感じ。
 「家事とは、放っておけば崩壊してしまう秩序を、ゼロの状態まで戻すこと」と考える柚子に、非常な健気さを感じました。  
 「マイナークラブハウス」と共通する部分はありますが、あちらよりも大人びたと思います。主人公よりも、母親の大人になりきれない行動が心配ですね。
 わたしもこの温泉宿に行ってみたいです。