くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「大人にしてあげた小さなお話」岸田今日子

2014-09-12 21:10:55 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 えっ、岸田今日子で「ミステリ・サスペンス・ホラー」!?
 とお思いでしょうか。いやはや、怖いですよ、岸田今日子。さすがは岸田國士の娘。実はわたし、姉の衿子さんとの共著「山小屋物語」も読んでいるのですが、三島由紀夫と乗馬をしたり、谷川俊太郎との交流が描かれたり(対談も収録されています。衿子さんとの離婚後?)。
 ですから、後半に「父の残した山小屋」を舞台にした話なんかがあって、非常に興味深かったのです。
 モチーフは「七匹の子ヤギ」。目前で兄弟たちを殺された末っ子ヤギが、長じて狼と暮らすようになる。「わたし」は夏の間、山小屋を訪れて山羊を飼いますが、この山羊を預かっている「つうさん」のところの種山羊がそれだというんです。
 つうさんは、その山羊と一緒にいた狼を撃ち、その皮をはいだ。山羊はどうして狼といるのを選んだのか。つうさんは、山羊にとって、敵なのか味方なのか。
 そんな疑問でぽおんと放り出されるような掌編です。
 「セニスィエンタの家」も怖い。「わたし」が撮影で訪れたスペインの村。人々は年寄りばかりで黒い服を着ていて、目や足が悪い人ばかり。人から聞いた「セニスィエンタの家」を見学しますが、暗い家の壁に描かれるのは「シンデレラ」によく似た物語でした。
 しかし。
 彼女をじっと見つめるのは、実の父親。魔法使いではなく、ドレスや靴、馬車を用意したのは。そして、その代償は……。
 おぞましく、官能的な小話でした。いやいやいや、でもっ、怖いですよ……。
 岸田さんオリジナルの話では、足音だけを残して別の女のもとへ行く話が怖い。「病院には必ず行けよ」の意味を知るために読み直してしまいました。
 「約束」も怖い。食道癌で死んだ男から、クリスマスに銀の燭台が届きます。それで食事をするのが、彼女の、夢でした。
 でも、ユーモラスな話もありますよ。「ミッシェル」とか。妻がマンションでイルカを飼い始める話です。あとは、ドラキュラを描いた作品も。岡田真澄とか杉浦直樹とか名前も出てきます。
 「みにくいアヒルの子」は、アヒルの子がずーっとみにくいままなのかといのが、個人的におもしろかった。