くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「宇宙人のしゅくだい」小松左京

2010-08-09 05:21:00 | YA・児童書
小松左京の切れ味鋭いショートショートが好きなので、児童書コーナーから借りてきたのがこれ。「宇宙人のしゅくだい」(講談社青い鳥文庫)。
でも、なんだかいつもと違う、といいましょうか。一言でいうと、子供だましっぽい作品が多くて残念です。
収録されている「空をとんでいたもの」によると、どうやら朝日新聞日曜版に「新しい童話」という連載をしていたもののようです。作者と思われる「わたし」が、タツオとヨシコの兄妹に夕暮れの空を飛んでいた「誰か」は、サンタクロースか宇宙人かと質問されるのです。「わたし」は錯覚だろうと考えるのですが、二人はその「誰か」を連れて戻ってきたらしい……、という物語。
ヨシコという子は、表題作「宇宙人のしゅくだい」にも登場し、地球を滅ぼしにきた宇宙人を説得します。「アリとチョウチョウとカタツムリ」では、アリの知能を認めてカタツムリを荷物運びに使ったり、チョウチョウに乗って空を飛ぶ方法を教えたりします。「六本足の子イヌ」で、捨て犬を見るとかわいそうで連れてこずにはいられない女の子もヨシコです。(ただし、この話のお兄ちゃんは「ケンイチ」です)
さらには、「にげていった子」には「たっちゃんと妹のヨッコ」が出てくるのです。
しかも、これらの作品には、必ず「お父さん」が登場するのも気になります。小松氏の実生活に仮託しているのでしょうか。
印象に残る作品を三つあげると、①「にげていった子」、②「赤い車」③「ロボット地蔵」です。戦争の爪痕を残したまま家にやってきた少年。傷口を手当して、ケーキを食べているうちに零戦に反応。防空頭巾を残していなくなります。そこに書いてあった名前は、戦時中にいなくなった母の弟のものでした……。
戦後何年も経っていても、少年のままさまよい続ける魂が不憫でなりません。頭巾を落としたことで、さらに戦火をくぐり抜けにくくなるのでは。
②については、赤い車の仕草がかわいらしいのと、たしかに将来的にAIBOと車が合体したような商品が出現しそうだな、というのに一票。③は、ロボットのやさしさが地蔵として昇華していくのが、自然な感じでいいです。
今度は大人向けを読むつもりですが、はたしてヨシコちゃんの登場はあるのでしょうか。とりあえず、解説で取り上げられていた「お召し列車」を読んでみたいですね。

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