くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「甲子園だけが高校野球ではない」岩崎夏海監修

2010-08-10 04:57:24 | エッセイ・ルポルタージュ
これは、高校野球をテーマにした弁論文集ではないか、と。
「少年の主張」で、こういう話をする人がいるような気がしませんか。まあ、今どき部活テーマの弁論は主流ではないかもしれませんが。
岩崎夏海監修「甲子園だけが高校野球ではない」(廣済堂出版)。野球部の子たちが読むのにいいような気がして買ってみました。「野村の流儀」(ぴあ)とか結構読まれているので、こういうところからちょっとずつ読書に引っ張り込もうと目論んでいる訳です。
甲子園。やっぱり野球少年には憧れの場所なのでしょうね。高校野球を続ける少年たちの、スポットライトが当たらない部分、とでも言いましょうか。例えば、父親がリストラにあっていた、信頼していた顧問の先生が転勤していった学校と対戦することになった、部員不足で部活ができない状況に陥った、肩を壊してもうピッチングができない。
彼らの人生を、掬いあげたのが本書だと思います。
わたしが素敵だなと感じたのは、マネージャーが会場アナウンスに憧れて頑張るという話題です。アナウンス役は東東京と西東京の持ち回りになっていて、彼女に機会はないはずだった。でも、監督が挨拶をきちんとしてほしい、ちょっとした気配りが大切だというので、試合のたびに心がけていたら、チャンスがまわってきたのです。枠内高に適任がいなかったため、監督が彼女を推薦し、周囲の人々も「あの子なら」と認めてくれた。
わたしが審査員なら、間違いなく最優秀賞を出します。
ただ、この本の審査員(?)は岩崎氏なので、どうもそれほどでないというか。どうしても部員にスポットが当たるのはしかたないですけどね。
学校生活を送っていると、野球に限らず様々な場面でよく耳にする話題でもあります。新人大会に参加するのに部員がぎりぎりとかインフルエンザで出場停止とか。
あ、インフルエンザに関する項目もありましたね。「キャプテンとインフルエンザ」。副キャプテンを含む六人が、新型インフルエンザの濃厚接触者として出場できなくなった。でも、試合終了後、一軒一軒訪ねていって、最後に三年生みんなで試合をしたいと、紅白戦をすることになる。
あの、これおかしいです。
新型インフルエンザ、去年の夏に「濃厚接触者」だったら、こんなに軽い扱いの訳がない。地区大会時期なら、大ごとになっていたはず。九州の話だそうですが、むこうではこんなに鷹揚だったのですか。発症者じゃないからでしょうか。
でも、この時期、この六人の身近に発病した人がいたわけです。学校関係者? それだとほかのメンバーで大会に出ているはずがありません。中総体の全国大会で、部員に新型インフルエンザ罹患者が出た学校、出場辞退というニュースをかなり新聞で読んだのですが。夏休み直前くらいだと、学区内に一人でも罹患したら休校処置を、と騒いでいた時期じゃないでしょうか。幸いにも現在事態は終息してはいますが、秋になっても深刻な状況は変わりなかったと記憶しています。なにしろ新人大会辞退、合唱コンクール中止になりましたから。恨みは深いです(笑)。
これから推測するに、登場するエピソードの百パーセントが「実話」ではないと思います。インフルエンザで出場が叶わなかったのは、例えばほかの大会だったとか、脚色があるのでは。
そう考えると、幼なじみの彼とキャッチボールができる、と喜ぶ女の子のエピソードなんて、いかにも作った感満載なんですが。普通こういう子がこういう話を見ず知らずの記者に話さないでしょう。弁論でもありえない。小説としては物足りないし。
全部が作りごととは思いませんが、かなり意図的に構成されているとは思います。
監修を岩崎氏にするのも、売らんかな的発想ですよね。語り口がやっぱり秋元康的で、わたしとしては苦手です。でも、野球少年たちが読むには手頃だと感じました。

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