くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「七つの海を照らす星」七河迦南

2014-03-23 19:01:27 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 東京創元社らしい連作短編でした。七河迦南「七つの海を照らす星」。これがデビュー作だそうです。鮎川哲也賞。
 七海という町の児童養護施設で働く「私」(北沢春菜)。中堅といわれる二年めの職員です。(ちなみに、一年めは新人、三年めはベテラン、四年めは退職、というんだそうです……)
 「チャーシューの月」「世界地図の下書き」と、児童養護施設の物語を読んできましたが、この学園の子どもたちが抱えている現実は重い。今回は、七人の少女たちの問題を、「学園七不思議」になぞらえて描かれた作品です。日常の謎系のミステリー。でも、根底には児童虐待の苦悩が色濃く横たわります。

 印象に残っているのは、「滅びの指輪」。戸籍がない少女だった優姫が、「指輪物語」について語る場面です。
「あの指輪は『滅びの指輪』。トールキン自身は否定しているけど、核兵器の象徴とも言われたんだよ。使わずに終わるのがポイントじゃない」
 なるほどー。「指輪物語」読んでいませんが、そういう解釈があるのはおもしろい。
 いやいや、この作品自体も隠された秘密にはっとさせられます。優姫が抱えている苦しみ、そして、「みすず」自身はどう考えているのかも。

 「夏期転住」も心に残ります。卒園した俊樹の初恋の子、直。山荘から消えた彼女はどこへ行ったのか……。
 語り手の春菜には親しい友人佳音がいて、学園のことをいろいろと話します。それから、児童相談所の海王さん。この方が探偵役ですね。
 続編も抜かりなく借りてあります。なんだかどんでん返しがあるという話なので、どきどきしながら読むつもりです。