例によって歯医者で女性誌を読んでいたら、この本が紹介されていました。高殿円「上流階級 富久丸百貨店外商部」(光文社)。
高殿さんの「トッカン」を、一話だけ読んでほうっておいたわたしでしたが、こちらはとても楽しく読みました。
お仕事小説としてデパートの外商を取り上げようとしたら、どこも取材に応じてくれない! と高殿さんが語ってらして、どんな作品に仕上がっているのか興味津々。主人公鮫島静緒のバイタリティに頷かされ、葉鳥さんのサービスに感嘆しました。
もともとは近所のパティスリーで仕事をしていた静緒。店主の雨傘君斗と強い友情で結ばれており、なんとか彼のケーキをみんなに食べてほしいと奮闘するうちに、富久丸百貨店の紅蔵と葉鳥がやってきます。
そのうちに独創的なアイデアで社長賞をとったり、社内の有望株の男性と結婚したりと、一見順風満帆な人生を送ってきたかのような静緒ですが、妊娠中に浮気されて流産。そのうえの離婚。社内での噂話の的になることも。
現在は葉鳥さんが急に退職すると言い出し、その顧客を引き継ぐための仕事にてんてこ舞いしています。なにしろ、月のノルマが一千五百万ですからね! ブランド品の時計や食器を持ってお得意さまをまわるのです。
新規開拓もしなければならない。いつも厳しいことを言うお客様もいる。新しい企画をすれば系列会社にないものは駄目だと言われる。
静緒のライバルは、色男でお坊ちゃんの桝家。自分自身もお得意さまの子息で、ばんばんノルマをこなしてしまいます。彼に嫌みな態度をとられて怒り心頭の静緒でしたが、葉鳥さんの計らいでものすごい上流住宅地に部屋を貸してもらうことになります。しかし、なぜか桝家と同居するはめに……。
こうやって書くと、なんだか静緒と桝家の間にラブでも起こりそうな予感がしますが、さにあらず。桝家は片思いの相手もいるゲイなのでした。
こんな感じで、様々なエピソードが重ねられていきます。教師をしていた珠理の話が意外な着地点で驚きました。校門前でタバコを吸っていたジーパンにパーカーの男が、吸い殻を落としていったから拾わせたって、なかなかすごいですよ? 計算すると、当時珠理は二十五歳、御子柴は四十代かと思うんですが……。
しかし、プレミアムですよね、上流階級。自分のチープな生活からみると、夢の世界です。というより、近所に百貨店ないですし。
以前、宮城の人はジャスコやヨーカ堂をデパートだと思っているという笑い話がありましたが、まあ、そういう感じの庶民生活ですよね。
百貨店に勤める人は、自らも宝石箱の一員として輝く必要がある。服装もそれなりのものを着ていくという話題も、衝撃でした。デパートに就職した友人の顔を思い浮かべてみたり。
ところで、静緒がくる前評判と名前から男だと思っていたという桝家の台詞には笑っちゃいました。
「教養とは、振る舞いです。手間暇をかけた身なりと、正しい日本語と、落ち着き」
葉鳥さんの言葉です。サービスとは、「値札のつかない人間の価値」それを作り上げるのは経験であると語る彼に、わたしも尊敬の念を感じてしまいます。
途中、「マイ・フェアレディ」になぞらえている部分があり、映画ではイライザとビギンズ教授は結婚すると書いてありましたが、女性として自立していくのは原作でしたっけ?
お得意さまからの無理難題を、悩みながらもクリアしていく静緒。颯爽としていて素敵です。ちょくちょく出てくるスイーツの話題も、魅力的です。わたしも生クリームたっぷりのクロワッサン食べたいよ。
それにしても、疑問点がひとつあるのですが、341ページ二行目の「私」は? もともと一人称の小説だったということですか? 直し忘れ?
高殿さんの「トッカン」を、一話だけ読んでほうっておいたわたしでしたが、こちらはとても楽しく読みました。
お仕事小説としてデパートの外商を取り上げようとしたら、どこも取材に応じてくれない! と高殿さんが語ってらして、どんな作品に仕上がっているのか興味津々。主人公鮫島静緒のバイタリティに頷かされ、葉鳥さんのサービスに感嘆しました。
もともとは近所のパティスリーで仕事をしていた静緒。店主の雨傘君斗と強い友情で結ばれており、なんとか彼のケーキをみんなに食べてほしいと奮闘するうちに、富久丸百貨店の紅蔵と葉鳥がやってきます。
そのうちに独創的なアイデアで社長賞をとったり、社内の有望株の男性と結婚したりと、一見順風満帆な人生を送ってきたかのような静緒ですが、妊娠中に浮気されて流産。そのうえの離婚。社内での噂話の的になることも。
現在は葉鳥さんが急に退職すると言い出し、その顧客を引き継ぐための仕事にてんてこ舞いしています。なにしろ、月のノルマが一千五百万ですからね! ブランド品の時計や食器を持ってお得意さまをまわるのです。
新規開拓もしなければならない。いつも厳しいことを言うお客様もいる。新しい企画をすれば系列会社にないものは駄目だと言われる。
静緒のライバルは、色男でお坊ちゃんの桝家。自分自身もお得意さまの子息で、ばんばんノルマをこなしてしまいます。彼に嫌みな態度をとられて怒り心頭の静緒でしたが、葉鳥さんの計らいでものすごい上流住宅地に部屋を貸してもらうことになります。しかし、なぜか桝家と同居するはめに……。
こうやって書くと、なんだか静緒と桝家の間にラブでも起こりそうな予感がしますが、さにあらず。桝家は片思いの相手もいるゲイなのでした。
こんな感じで、様々なエピソードが重ねられていきます。教師をしていた珠理の話が意外な着地点で驚きました。校門前でタバコを吸っていたジーパンにパーカーの男が、吸い殻を落としていったから拾わせたって、なかなかすごいですよ? 計算すると、当時珠理は二十五歳、御子柴は四十代かと思うんですが……。
しかし、プレミアムですよね、上流階級。自分のチープな生活からみると、夢の世界です。というより、近所に百貨店ないですし。
以前、宮城の人はジャスコやヨーカ堂をデパートだと思っているという笑い話がありましたが、まあ、そういう感じの庶民生活ですよね。
百貨店に勤める人は、自らも宝石箱の一員として輝く必要がある。服装もそれなりのものを着ていくという話題も、衝撃でした。デパートに就職した友人の顔を思い浮かべてみたり。
ところで、静緒がくる前評判と名前から男だと思っていたという桝家の台詞には笑っちゃいました。
「教養とは、振る舞いです。手間暇をかけた身なりと、正しい日本語と、落ち着き」
葉鳥さんの言葉です。サービスとは、「値札のつかない人間の価値」それを作り上げるのは経験であると語る彼に、わたしも尊敬の念を感じてしまいます。
途中、「マイ・フェアレディ」になぞらえている部分があり、映画ではイライザとビギンズ教授は結婚すると書いてありましたが、女性として自立していくのは原作でしたっけ?
お得意さまからの無理難題を、悩みながらもクリアしていく静緒。颯爽としていて素敵です。ちょくちょく出てくるスイーツの話題も、魅力的です。わたしも生クリームたっぷりのクロワッサン食べたいよ。
それにしても、疑問点がひとつあるのですが、341ページ二行目の「私」は? もともと一人称の小説だったということですか? 直し忘れ?