くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「刑事のまなざし」薬丸岳

2014-03-09 11:12:38 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 ひさしぶりに薬丸さんの本を読もうと思ったら、ドラマ化の影響でずっと貸出中でした。「刑事のまなざし」(講談社)。短編連作です。わたしがテレビでちらっと見た回は、この作品には収録されていませんでした。
 もともとは教師を志望していた夏目は、あるきっかけで法務技官になります。少年たちの更生を願う彼でしたが、娘がハンマーで殴られて植物状態になったことをきっかけに刑事に。
 娘の事件の犯人を探しているのではないか。ホームレスになりながらも子どもの復讐をしようと考える老人の話(「ハートレス」)からそんな感じを与えますよね。
 夏目さんは穏やかな人柄なのですが、実は高校時代ボクシング部だったり、八戸付近の出身で「ひっつみ」を作ってくれたり、うさぎのマスコットを入手するためにクレーンゲームをしたりもします。まあ、全部捜査に関わってきますけどね。
 毎日一本ずつ連続ドラマのように読んできたんですが、後半は一気に読みました。「刑事のまなざし」の恭子、印象的です。芯に秘めた激しさといいますか。目的のために手段を選ばないといいますか。
 恭子の妹は、夏目の娘の事件と同じ通り魔に殺害されたのです。彼女は中学時代、札付きだった聖治と結婚していて、彼をつれて同級会に出席。そこにはほぼ引きこもりになっているらしい太田も来ていて……。
 大筋の展開は想像できるのですが、彼らの思いが感じられて、これから先にはつらいこともあるだろうと思いながらもほのぼのとした明るさがあります。
 「黒い履歴」や「プライド」もいいと思います。帯には「薬丸岳だからこそ書けるミステリー」とありますが、納得しました。